アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
④にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
④
-
午後7時10分。
昨日より早いが、やはり周りには2人しか残らない。だが、今日の分の仕事は全て終わしていた。
社内のパソコンは全て電源が落ちており、電気は必要最低限に抑えられている。明かりはその電気と、窓の外からの光しか無かった。
暗い。
「………」
「…………」
しかし、退社時間はとっくに過ぎているのに、一ノ瀬くんは用事すら言ってくれない。どうやら仕事とは別に用があるようだ。
どうしたらいいのかも分からず、俺はじっと椅子に座っている。対し、一ノ瀬くんも椅子に座りながらスマホをいじっていた。
無表情なのが、余計に取っ付き難い。
「……わっ…」
すると、突然鳴り響くLINEの通知音。
内容を見て驚いた。
『俺の家に来てください。』
「え……?」
俺はスマホを持ったまま、しばらく硬直する。まるで、時間が止まったような感覚に陥る。
俺の家に来ください?
とりあえず理解に遅れた。
用事ってそういうことなの?
家に来てくださいって、一ノ瀬くんの家、だろうな。彼は一人暮らしなのだろうか。
家に入れるような用事とは何か。
クエスチョンマークばかりが浮かぶ。
出会ってまだ2日目の上司をなに用で自宅に招き入れようとしているのか。それこそ悪い予感しかしない。
様々な憶測。過去の出来事が鮮明にフラッシュバックする。
一ノ瀬くんは男だから。
男は全て同じで。
男は皆、酷い生き物。
男は──
「…っ」
いや、違う。
一ノ瀬くんを否定するような理由は無い。家に来てくださいなんてことに、特別な理由なんて無い。
大丈夫。何もされない。一ノ瀬くんは良い人だから。
そう、何度も自分に言い聞かせた。
「ふぅ……」
俺は何と返そうか迷い、ゆっくりとスマホの画面に指を伸ばす。
『一ノ瀬くんの家でないと駄目なのでしょうか。社内で用事を済ませることはできませんか?』
何度か打ち間違えながらも、一ノ瀬くんに送信した。
「は、ぁ……」
変に手が震える。呼吸が可怪しくなっていく。
気がした。
一ノ瀬くんが俺の様子を窺っていたこと、俺は全く気付かない。
『できれば来てください。話があります。』
「ぅ……」
どうして?話だけなら社内でもできる。なら家に行く理由って何?
不安。恐怖。そればかりが脳内を支配するが、何とか不安定な精神を安定させようと努める。
大丈夫だ。一ノ瀬くんを信じよう。
もし何かあっても俺の方が年上だし、力では負けないはず。いざとなったら逃げればいい。
一ノ瀬くんに限って、何かをしでかすことはないだろうから。
行ける。
『分かりました。』
俺は、決死の覚悟で送った。
「では、行きましょう」
「っ……」
画面上じゃない、一ノ瀬くんの言葉。
俺はとりあえず深呼吸をし、社内を出る一ノ瀬くんの後を追った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 331