アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
忘却にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
忘却
-
忘れたい。
忘れたい。
全てを忘れて、またどこかに行ってしまおうか。
俺の宿命がなんだとか、Ωの宿命がなんだとか、そんなものは何も関係なくて、ただ、自分の未来になんの興味も無いのがつまるところ、今の俺の心境だ。
この人は、俺が「渓史さん」と呼べる幸せを知らない。
だけど、この幸せから逃げたのは俺だ。
この人を責める権利は持ってなかった。
「…谷原さんは、俺が桜庭さんと一緒にいた方がいいって…思いますか?」
「…まぁ、そうだな。誰かおまえを支えてくれる人がいれば安心するし。」
「そうですか…」
希望があったって、俺は渓史さんとは一緒になれないけど、でも、希望がないのなら俺は桜庭さんとの道を考えた方がいいのかな。
でも、それって凄く失礼じゃないか。
割り切った番の関係ならまだいい。けど、結婚は違うだろ。俺がΩだから、渓史さんを幸せに出来ないから離れるって言ってるのに、桜庭さんならいいって桜庭さんなら不幸にしてもいいって事にならないか?
そこまで桜庭さんに恨みなんてない。
あの人の強引な態度に戸惑う事はあるけど、恨んではいない。空の事を見てくれた時は正直感謝している。る
恨みを買うほどの事はされてない。
「空君にはやっぱり父親が必要だとも思うしな。」
「…はい」
そう、そんな単純に必要か不必要かでこの問題が解決するのなら、こんな簡単な事はない。
何が問題なのか。
それは多分俺の心にある。
「…ねぇ、谷原さん」
「うん?」
俺たちの間にある、この気まずい空気の正体ってなんなんだろう。
「谷原さんは、今日、それを言う為に来たんですか?」
言葉の節々に俺の気持ちが乗っかっているようだ。
あなたに結婚相手を押し付けられるなんて大きなお世話だ。
谷原渓史のバカヤロウ。
俺が悪いって分かってるけど、心の中でくらい文句を言いたい。
バカ。バーカ。
あんたを今も愛してる俺は、
もっとバカ。
やっぱり、忘れられないよ。
バカばっかりだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
94 / 201