アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
夏合宿の三年生達にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
夏合宿の三年生達
-
語り:陸上部三年 田沼健太
夏合宿最後の夜。
さっき夕飯の時に、二年でババ抜きをやったって話しを岡田から聞いた。
三回勝負、最後に負けたやつがジュース。
まぁありきたりだな。
そんでありきたりに言い出しっぺの岡田が負けたらしい。
「秋月ハンパねぇんすよ…無愛想とかいう次元じゃなかったです…無表情もいいとこ…表情筋死んでるのかと思いました…その顔でじわじわ精神的に追い詰めてくるんですよ…蒸しパン王子なんて可愛いもんじゃない…氷の貴公子に逆戻りって感じでしたね…いや、あいつホントは氷みたいな人間なんかじゃないんですけどね…笑うと可愛いし…だからこそ二回言いますけど、マジで表情筋死んでるのかと思いました…怖かったです…」
岡田がまるでテレビの取材にでも答える風に、そんな事を言ってた。
モザイク処理された岡田がマイク向けられて、機械的なあの独特の声に変換されてるイメージが湧いたりなんかして…
まぁなんとなく無表情で追い詰めてくる秋月ってのが想像出来たりなんかして…
ぶるっと震えちゃったりなんかして…
だって絶対怖いだろ…
夕飯が終わると学年毎に風呂に入る。
上下関係がゆるっゆるな陸上部だけど、風呂は年功序列。
三年から入って、一年が最後に風呂掃除をする。
俺も一年の時風呂掃除したな、なんて思い出したりして。
このメンバーと風呂に入るのもこれで最後。
風呂って言ってもシャワールームと少人数が入れる浴槽がある狭い浴場だけ。
まぁうちの三年は六人だけだから全員入れるだろうけど、基本みんないつもシャワーで済ませる。
「緒方!風呂入ろうぜ!水泳勝負だ!」
「望むところだ井上!」
井上と緒方ってホントなんでこうなんだ…?
「待て待て…水泳ってなんだよ…泳げる広さじゃねぇだろ…つーか広くても泳ぐなよ…」
あ、山梨にツッコミ負けた。
「じゃあ息止め勝負!」
「息止め勝負ってなんだよ!風呂関係なくね?!」
「水の中で息止める勝負だ!」
井上の語彙の少なさ…
「よし!勝った方が………何する?井上決めて」
「え?緒方が決めて」
「いや、井上が」
「いや、緒方が」
「優柔不断か!大人しくジュースでも奢ってもらえよ!」
「分かってないな田沼よ…それじゃいつもと同じでつまんないだろ?よし緒方!肩もみでどうだ!」
「おう!いいぞ!」
「オヤジかよ!」
「田沼ツッコミお疲れ。先入るよ」
ツッコまずにはいられねぇんだよな…
「おー…俺も行く…」
「待て瀬川田沼!最後くらいみんなで風呂入ろうぜ!」
「バカなの井上…ごめん、バカだったね…」
「なんだよ瀬川!」
「小学生じゃないんだからさ…」
「いいじゃん!今日で最後だろ!最後にちゃんと裸の付き合いしようぜ!」
井上うるさい…
「はっ裸の付き合い?!」
「渡辺なんで食いついた?!」
なんか顔真っ赤だし…
「いや、なんか…ハレンチだな…と思ってな…」
「どこがだよ?!」
「バカばっか…俺はシャワーにするからね」
「まぁまぁ瀬川、最後くらい入ってやろうぜ」
山梨が乗り気?!
「山っち!大好き!」
「井上!まっぱで抱きつくんじゃねぇ!」
山梨すげぇキレーなエビ反り!
「えー…?どうしたの山梨…」
瀬川嫌そう…
まぁ狭いしな…
でも山梨がこんな事言い出すって事は、何か考えがあんだろーな…
「ちょっとみんなに提案があってな…」
あれっ?この山梨の笑顔…
なんか邪悪な感じじゃない…?
そんで結局六人で浴槽に入る事になったし…
なんだこれ…
「狭っ!」
「井上が言い出したんでしょ…で山梨、提案ってなに?」
「やろうぜ…ババ抜き…」
「え?なんで?ちょっと緒方!潜らないで!」
「秋月が追い詰められてるとこ、見てみたくねぇか?井上も潜るんじゃねぇよ!」
「おいっ!井上!触んな!」
「緒方、堅苦しい事言うなよ…よいではないかよいでは…」
「触んなっての!」
「よいではないかよいでは…」
「お前らなにやってんだよ!お湯跳ねるから暴れんな!」
ホントこいつらガキだな…
「岡田は中学から秋月と一緒だろ?その岡田があそこまで言うんだ…ぜひ追い詰めてみたい…」
山梨の笑顔が暗黒…
でも井上と緒方をスルー出来るそのスキル、羨ましいぜ…
「光介…もっと近う寄れ…」
「これ以上はお許しくだされ…」
「恥ずかしがる事はない…いつものようにそこでリンボーダンスをして見せてくんろ…」
「お願いでござる…許しておくんなまし章一夫人…」
「キャラ設定を聞いてもいいだろうか?!」
「田沼、落ち着け」
「いやいや!時代劇風かと思いきやリンボーダンスからの夫人だぞ!どこの国のいつの時代の夫人なんだよ!
性別すらも謎!
キャラ設定気になるだろ!
「てか緒方くんの光介くんえげつないな…これでそのうち秋月を泣かせるのか…」
井上!想像させんな!
鼻血出る!
「なに言ってんの?!秋月にそんな事しねぇし!てかまだ振り向いてもらってもねぇし!」
「振り向いてもらったらするだろ?」
「しっ……しねぇよ!!」
”間”があったぞ”間”が!
「秋月エロいだろうな…」
「えっ…うん…そりゃな……ちょっと待て井上!なに言わせんだよ!」
「田沼、井上がなに言ってるのか分かるか?」
「渡辺分かんねぇの?!」
渡辺って下ネタ通じないんだっけ?!
いやそもそも俺らって下ネタ自体、普段は全然話さないか…
でも普通これくらい分かるだろ…
渡辺キャラ迷子気味だよな…
「渡辺くんの朔夜くんも凄そうだな!見せて!そこに仁王立ちして!」
「ん?いいぞ」
意味分かってねぇからこその人の良さ発揮しちゃったよ!
「立ち上がるんじゃねぇぞ渡辺!」
山梨必死!
「浸かっててね渡辺!」
瀬川も必死!
「え?なんでだ?」
「いいから!渡辺は大人しくしてて!」
「山っち!今から緒方と息止め勝負するから審判して!」
「井上切り替え早っ!」
もう朔夜くんは諦めたのか!
「それと何秒潜ったか数えてて!」
もう井上完璧幼稚園児だな…
「はぁ?ったく何歳だよ…しゃーねーな…いくぞー。よーいスタート。いーち、にーい、で、秋月呼んでさ、やろうぜババ抜き」
そんな気しかしなかったけど、やっぱ山梨数える気ねぇな…
「まぁいいけど…」
「あ、そうだ。部長引き継ぎの話しを秋月にしてみようと思っててだな」
「部長引き継ぎか…」
渡辺からこんな話し聞くと、なんか寂しくなるな…
「ぷはぁっ!山っち!今何秒?」
「井上出てくるの早っ!」
「え?80秒」
嘘つけ山梨!まだ10秒くらいだろ!
「80?!俺すごくね?!もう一回潜るから、出てきたの緒方に内緒な!」
「はいはい。で、渡辺なんだっけ?」
井上納得しちゃったよ…
山梨の適当っぷりハンパじゃねぇし…
「ああ、次の部長に秋月をって思うんだ」
「ぷはぁっ!山梨!今何秒?!」
緒方も意外と早く出てきたな…
話し進まねぇ…
「え?150秒」
盛りすぎだろ山梨!
「マジで?!それって何分?!つーか井上まだ出てきてねぇのか!ちくしょう!」
「いいから、井上に黙っててやるから緒方もう一回潜れ」
「えっ?!ホントに?!山梨ありがとう!」
「あとでジュース奢れよ」
「おう!行ってくるな!」
緒方も納得しちゃったよ…
山梨さらっとカモりやがった…
「みんなはどう思う?」
渡辺淡々と話し戻しやがる…
こいつもスルースキル持ってんだな…
瀬川もあいつらスルーするしな…
あれ…?スルー出来ないの俺だけ…?
「秋月は俺についてこいってタイプではないよね。まぁ岡田もいいとは思うけど」
「そうだな…とりあえず秋月に話してみていいかもな。まぁチーム競技じゃねぇし、秋月がどんだけ高跳びに真剣なのかはみんな分かってるし、面倒見もいい。後輩も勝手についてくるだろ」
「ぷはぁっ!山っち!何秒?!」
「え?13秒」
山梨っ!しれっと嘘言い過ぎ!笑う!
「えっ?!減ってない?!」
「気の所為だ。緒方に黙っててやるからもう一回潜れ」
「山っち優しい!ありがとう!」
「あとでジュース奢れよ」
「まかせろ!行ってくる!」
井上アホだな…知ってるけど…
山梨はカモり過ぎだろ…
「まぁ秋月次第だけどな。そんな話しもしてみたいし、ババ抜きやるか」
「渡辺もそう言うなら仕方ないか…まぁ今日が最後の夜だし、楽しい方がいいよね」
「瀬川…泣かせるなよ…」
部長って何気に大変だもんな…ホントに渡辺には感謝しないと…
あ、泣けてきた…
「渡辺、泣くのまだ早いよ。明日例のリレーやらないといけないんだし…」
「うっ………そうだったな…」
そうだった…涙引っ込んだ…
「「ぷはぁっ!」」
「山梨!」
「山っち!」
「「何秒?!」」
「お、同時。おかげでゆっくり話し出来たな」
全然ゆっくり話し出来てねぇよな…
山梨こえー…
そんな訳で秋月を呼び出す事になった。
緒方は秋月に会うのが恥ずかしい、とか言い出したから、井上が張り切って廊下に出て行った。
どうせ井上にさっき言われたの引きずってるんだろうけど…
「おい!そこの秋月なるもの!」
「なんですか」
「やるぜっ!」
「はい?」
「返事はっ?!」
「はい?」
「よしっ!」
「はい?」
「はい、は一回っ!」
「なに言ってるんですか」
「風呂が終わったらここに来い!誰にも内緒で!お前一人で!受けて立つ!」
二人の会話は丸聞こえ。
これが今までで一番息の合った瞬間だったかもしれない。
なんてったって全員で同時に吹き出したからな…
「クっソテンポいい…」
腹痛てぇ…
「こんな会話笑うだろ…」
山梨悶絶…
「なに今の…秋月のいつものセリフが神がかって聞こえた…」
瀬川も悶絶…
「あの二人天才だな…」
渡辺も悶絶…
「秋月可愛い…」
安定の緒方…
ご満悦な顔で井上が戻ってきた。
「井上!秋月来てくれるって?!」
「おう!俺が話したからな!完璧だ!」
「井上ありがとう!」
「ジュース奢れよ!緒方!」
「え、ヤダ」
「なんで?!いつも山っちに奢ってんじゃん!あ、あとで山っちに奢らないとだった!」
「だって井上の提案じゃないじゃん。俺も山梨に奢らないとだ」
「え、なんで?」
「それは内緒だ!井上こそなんで?」
「俺だって内緒だ!」
その後も井上と緒方はしばらく騒いでたけど、まぁいつもの事だ。
そんで山梨がカモってたのもいつもの事。
秋月を追い詰める所か、秋月の無表情を恐怖だと感じる事になるまで、あと数十分後と迫った頃の事だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
14 / 59