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183.にしおりをはさみました!
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183.
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皿に盛り付けられていた料理を綺麗に平らげ、僕が食器洗いをすると率先して名を挙げる。
それに対して、キョウ君も手伝うと言ってくれて2人でキッチンに立った。
「…本当に驚いたよ」
「んっ?」
「棗さんと兄弟ってこと…でも、よく見ると似てるね」
僕がスポンジを使って食器を洗い、ソレをキョウ君に渡して水で洗い流す。
水の音でかリビングにいる皆には僕達の会話は聞こえていない。
「…僕と兄さんは母親似で柊君は父親似だからね」
「こんなに美人なお兄ちゃんがいたら、弟は気が気じゃないだろうね」
「んーでも、兄さんは合気道が出来るからそこまで心配しなくても大丈夫」
「あ、それは凄い」
カチャカチャと食器の音を鳴らしながら、兄弟の話を進める。
この後待ち受ける話し合いに対して緊張感が無いわけじゃない。
けれど、あの2人なら僕がして来た事を許してくれると思ってる。
勝手な事言っている自覚はあるけど、僕はそう信じているから。
「…こんなに楽しいと思ったのは久しぶりなんだ」
「…ん?」
「やっぱり、兄弟の縁は何があっても切れることはないって思った。だから、自分の気持ちを"兄ちゃん"と"柊"にきちんと伝えるよ」
ずっと、ずっとあの頃に戻れたらどれだけ幸せなことか計り知れない。
でも、そんなことどれ程願っても、何をしても、叶うことはない。
だから…だから…。
「…また新しい関係を築く為に頑張ろうと思うから」
今日はその大きな一歩を踏み出す。
そんな僕の決意を後押しするように「ナズなら出来る。俺も側にいるから」と言って手を握られた。
この手はいつも僕を掬い上げてくれる。
この人がいるから頑張ろうと思える。
溢れる笑みを隠しきれなくて、洗い物中はずっとキョウ君に"可愛い"と言われ続けた。
そして、食器を洗い終えて3人が待つリビングへと移動する。
横に長い4人がけのソファに3人が座り、左右に一つずつ1人用のソファがあるが僕達は兄さん達と向き合うようにラグの上に座った。
「…さてと、色々と聞きたいけど…まずは、2人は何処で知り合ったの?」
付いていたテレビを消すと、厳かな雰囲気が漂い出す。
順を追って説明して行くつもりだけど、支離滅裂になるかもしれない…その時は、キョウ君に落ち着かせて貰おう、と思い話し出した。
「…実はゴールデンウィークから、部活に臨時のコーチが付くことになりまして、その人がキョウ君だったんです」
「そう言えば、母校のテニス部のコーチを頼まれたって言ってたな?」
どうやら蓮さんはそのことを聞いていたらしい。
僕は家族に言うことではないと判断して何も喋らなかったから、知らないのは当たり前。
「…そっかぁ…」と取り敢えず納得の声があった。それに続いて「付き合い出したのはいつから?」と聞かれた。
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