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過去編
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あれから数週間が経ち、『SUBARU』は通常通りに戻った。
向田篤志は喫茶やBARで藤城悠達と共に働く様になり、井端甫は客の話から情報を集める仕事を九十九昴と共に行っている。
「人の話を盗み聞きするなんて、なんだかとっても罪悪感を感じる。」
片目の視力を失って生活して来た井端甫だが、両目が見えないというのはやはり通常通りにはいかない様で、移動なども向田篤志の助けが無ければかなわない。
「仕方ないよ。人の話の中にこそ、必要な情報や、価値ある情報が隠されているんだ。」
「そういうものかな?」
「うん。そういうものさ。…それよりほら、ちゃんと仕事をしないとダメだよ‼︎」
「してるよ、ちゃんとね。」
九十九昴と井端甫は歳が近いこともあり、あれから直ぐに打ち解け、今では互いに名前で呼び捨てにしあうほどに仲が良くなっていた。
今は丁度お昼時で客足がとても多かった。
藤城悠達はあまりの忙しさにてんてこ舞いで、見兼ねた九十九昴が情報収集を井端甫に任せて、手伝いにいくことになった。
「悠、手伝うよ。」
「あぁ、助かる。一通り聞いていたんだろう?」
情報収集を行っていた九十九昴はどこのテーブルの客が何を注文したのか、その客の名前、何回目の来店かも、全て把握している。
「うん。篤志さんはなかなか手際がいいみたいだね。」
「少しの間だが、井端の家で世話役をしていたからな。」
『SUBARU』では、厨房に立つのは大体有村春一一人だけであったが、向田篤志の料理の手際の良さに、有村春一が厨房にスカウトしたのだ。
今は有村春一と向田篤志、二人仲良く厨房に立っている。
「おい、篤志てめぇ、俺の動線に立つな‼︎
ちょっと手際がいいからって調子にのるな‼︎
全く、…うまくできてるじゃないか…。」
「当たり前だ。これでも井端家で働かせてもらっていたんだ。甫に変なものは食べさせられないからな。…お前こそ人の邪魔ばかりするなよ。文句ばかり言ってないで譲り合うとかそういう頭はないのか?」
「仲…良いのかな?」
有村春一と向田篤志のやり取りに思わず首を傾げる九十九昴。
「さぁな。」
結局、彼らが仲がいいのかはわからなかったが、共に厨房に立てている時点で、九十九昴には奇跡にすらおもえたのだ。
きっとあれでも仲良くやっているのだろう。
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