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必要、
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「ごめんね、今日は部屋、入れてあげられないんだ」
「今日"も"、だろ?」
俺の問いに、副総長は答えなかった。
バーの奥にある部屋。あんまり素行のよくない高校生のたまり場。そんなベタな空間。
そのさらに奥の部屋は、俺の彼氏である総長が我が物顔で使っている部屋で。
わざわざ来たというのに、その部屋には入れてもらえない。その理由はいつも同じ。総長さんがお楽しみ中。以上。
副総長に「誰も部屋に入れるな」って命令でもしたのだろう、だから彼はここでいわば見張り番をしていて。
つーかカギ締めろよ。それですむだろ。
右腕である副総長に伝言残して、こんな嫌な役回りさせて。何様だっていうんだろう。
今回は女?男?それすらもはや興味はなくて。
「おまえは俺のものだ」とか「いつでも来ていい。おまえなら許す」とか、軽々しく口にする男を信用してはいなかったけれど、
ここまで何度も裏切られるのはちょっと想像以上で。
「はい、どうぞ」
「…ありがと」
副総長が入れてくれたココアを飲んで、ふぅ、とため息をついた。
「…総長のこと、まだ好き?」
「なんで?」
「いや、…こんなことばっかされて、心配してるんだよ。サトが急にここに来なくなったらどうしよう、とかさ」
「…そういう意味では平気。懲りずに来るよ、毎日でも」
「そっか…」
「うん」
少しだけ、ほんの少しだけほっとした顔をした副総長は、それでもまだどこかさみしそうな顔で、俺の頭をぽんぽんと撫でた。
「いい子だね、サト」
「"都合のいい子"な」
「ばか、怒るよ?」
「副総長が怒ったとこ見たことない。見たい」
「もー」
何言ってんの、とふわり笑う副総長。もう、それを見ただけで充分ここに来た意味があるような気がした。
ガチャリ、とドアの開く音がして、振り返って。あ、今日は女だ。なんて他人事のように思って。
「サト、来てたんか」
「来てたんかじゃねーよ、おまえふざけんなよ?何回目だよこれ!」
「何?嫉妬?あ、おまえ帰っていいよ」
総長はシッシと女の子を追い払うようにして、もはや眼中にないような素振りを見せる。
どんだけこいつ自己チューなんだよ。
ってそう、いつも思うけど、それでもこいつの周りにはいつも人が集まって。なんか変なフェロモンでも出てるんだろうな。
俺には全く効いたことのないフェロモンが。
「副総長、ココアありがと」
「どういたしまして」
「サト、行くぞ」
「はいよ」
さっきまで知らない誰かとセックスしてた部屋に恋人入れるなんて最低な男。
早く俺に飽きてくれねーかな。
できるだけ酷く捨ててくんねーかな。
そしたら副総長は、優しく慰めてくれるだろう。
そこから先は、考えない。
「早く落ちておいで」
パタリと扉が閉まる瞬間に、副総長がそう呟いた。意味を考える前に、総長が俺を壁ぎわに追いやってキスをしてきて。
「サト、まだ機嫌なおんねーの?おまえどんだけ俺のこと好きなんだよ」
クックッと笑いながら、「あんなの遊びだぞ、特別はおまえだから。」とそれらしいことを言う総長に抱きしめられた。
「付き合え」と言ったのは総長のほう。
それなのに、飽きもせず見知らぬ誰かと寝てはそれを俺に見せつける。なんて酷いやつ。
早く飽きてくんねーかな。
捨ててくんねーかな。
副総長を名前で呼べる日が、早く来ねーかな。
…こいつと俺、どっちが酷いやつなのか分かんねーや。
おわり。
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