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18歳以上ですか?
40にしおりをはさみました!
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40
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・・・・・
やがて全身の金箔を人々に分け与えた王子様……。
その姿は、かつて人々を魅了した豪奢さをなくし、単なる鉛の塊となり果てていた。瞳も、美貌も、財産も、持てるものは全て失ってしまったが、それでも王子様は少しも惨めだとは思わなかった。
それは少年にとって最も大切な存在が変わらずに自分を愛し、側にいてくれたから……。
しかし、ある日の早朝。
ついに恐れていた時がやってきた。
この冬一番の冷え込みが街を覆い、山間から降りてきた雲の隙間からチラチラと白いものが降ってくる。
王子様はその気配をいち早く察知するなり愕然とした表情で鋭い声を上げた。
「ソウゲツ、大変だ! 今すぐ起きて!」
「……」
「雪だ! ついに雪が降ってきたんだ! 僕は今までさんざんあなたに無理なお願いをしてきた。だけど、これが本当の本当に最後のお願いだ。今すぐ行って! はやく離れて少しでも南の方へ行ってくれ!」
ソウゲツは少年の肩に辛うじてしがみついていたが、この頃にはすでに身体はボロボロで、瀕死の状態になっていた。
「雪……ああ、これが雪なのか……はじめて見た」
ソウゲツは少年の肩に横たわったまま、荘厳な白の美しさに目を細めた。
うっとりとした、しかし切ない表情。
そして瞳を閉じると噛み締めるように呟いた。
「幸せでした……」
「え……?」
王子様はソウゲツの微かな声を聞き取れなかった。
「ソウゲツ、いま何て言ったの?」
ソウゲツは最後の力をふりしぼって宙に羽ばたくと、王子様の頬を両手で包み、万感の思いを込めて唇にキスをした。
「お慕いしています......」
その言葉を聞いた王子の両目の窪みから堰を切ったように涙が溢れだす。
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