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Wデート -9-にしおりをはさみました!
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Wデート -9-
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サヤカさんは楽しそうに好きなだけ喋った後、呆気なくその場を後にした。
これからデートだと言っていたから、本当に偶然興本を見つけて思わず声をかけてしまっただけなんだろう。
微妙な空気だけを残され、俺たちはおろおろとするが、当事者である興本だけが何事もなかったかのように平然としている。
「何やってんだよ。ほら行くぞ」
自然とサヤカさんから距離を取っていた俺は興本との距離も取っていたらしい。離れて立っていた俺の腕をやれやれと掴んで、興本は自分の方へと引き寄せた。
新しくできたというラーメン店は順調そうに混んでいた。広いとは言えない店内は満席で、俺たちは店の外で数分待たされてからの案内だった。
待たされているけれど、こういう時だけ時間が経つたびにテンションは上がっていく。
提案した時はテキトーだったものの、すぐに脳裏に浮かんだのは内心ずっと気になっていた店だったからだ。あの時父さんは何が美味しいと言っていただろう。
「さっきの興本の元カノ、すごい美人だったな」
俺が何を食べようかと悩んでいる横で糸田が思い出したように呟いた。
「糸田はああいうのが好みなの?」
心配そうに聞く宗田は、それを聞いてどうするというのか。
それでも聞かずにはいられないんだろう。
「いや、そういうわけじゃないんだけど。流石だなぁと思ってさ」
糸田の言う流石と言う言葉の意味は分からないけど、言わんとしていることはなんとなく察する。確かに興本とサヤカさんが並ぶ光景はしっくり来るというかぴったりくるというか、見ていて違和感はない。悔しいけど、お似合いなのだ。
それは俺が初めて二人を見たときから変わらない印象だった。むしろ派手だったあの頃より、落ち着いた今の方が美男美女度が上がってよほどカップルらしく見える。
「あ、別に井瀬がどうとかっていう意味じゃないからな。今はあの美人より井瀬を選んでるってことだから、それは自信を持っていいと思う!」
「それは何のフォローだ?」
何を思ったのかハッとしたように慌て出した糸田だが、逆に貶されてる気がするのはなぜだろう。
「そんなことより何食う?」
糸田と話していると不意に興本の腕が俺の肩に回され、ぐいっと引き寄せられた。
「メインは醤油みたいだな。塩と味噌もある」
入口付近から見えるメニューが掛かれた黒板を指す興本は、わざとらしく屈んで俺の顔の横で話しかけてくる。
「ち、近い、近い…!」
「これくらい普通普通。意識しすぎだぜ、井瀬チャン」
フッと笑う興本は、結局店員が席へ案内しにやって来るまで俺の肩に回した腕を解かなかった。その間俺はずっと緊張することになるのだが、それを知っているのは興本だけだろう。
ようやく席に着けた俺たちはそれぞれ注文し、先に出された冷や水を飲んで頼んだラーメンを待つことになった。
「で、このあとはどうするの」
ふと隣に座る興本が対角線上の宗田に尋ねるのを聞いて、そういえば、と俺も正面に座る宗田を見た。
映画を観て、ご飯を食べて、その後のデートプランを宗田は考えているのだろうか。この前の作戦会議では映画だけしか決めていなかったが、時間的にはまだ午後が始まったばかりだ。
「特に決めてないけど、カラオケでもゲーセンでも、どっか遊びにいきたいかな。糸田は何かしたことある?」
「んー、俺はどこでも。映画も久々にちゃんと観れて良かったし、友達と遊ぶこと自体久しぶりで、たぶんどこでも楽しいよ」
さり気なく遊園地のことはなかったことにされていて、それに気づいた俺はどこか糸田に同情する。
あの時は宗田が糸田に夢中になり過ぎて糸田が女子の視線に殺されていたから、今の糸田が本当に楽しそうにしているのが見て分かる。
「糸田はいつも何してんの?」
「カラオケも行くしゲーセンもたまに行くかな。あとは部活のメンバーでバッティングセンターに行ったこともあるし」
「ああ、良いじゃん! バッティングセンター行って糸田が打ってるとこ見たい! 試合はこの前観に行ったけど、カッコ良かったもんな」
途端に宗田がうっとりと惚けた表情になる。クラスメイトと応援に行った試合のことでも思い出しているんだろう。
そうして俺たちはラーメンを食べた後、駅から少し離れたアミューズメント施設の中にあるバッティングセンターへと行くことにした。
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