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メランコリー東京・・・・2にしおりをはさみました!
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メランコリー東京・・・・2
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2
そう、ボクはずっと女の子になりたいと思っていたけど、男の子であることに違和感があったわけじゃない。
小さい時は、大人になれば女の子になることができるんだと思っていたけど、それは宇宙飛行士になれるとか、スーパーアイドルになれるとかってのと同じ種類の(とボクは思っていた)夢だった。
そして、半年前に出会った恋人は、ボクを本物の女の子にしたいと言った。
ボクのファンタジーの中で生きてる「まゆ」を現実の女の子にしたいって。
まゆと結婚したい。
なのに、なにがあったのかは知らないけれど、恋人はボクを置き去りにして消えてしまった。
或る日突然。
電話も、ラインも。
わからない。最初から全部嘘だったのかもしれない。
ボクは、彼の家にも行ったことがないし、もらった名刺のオフィスにも行ったことがない。
半年間ボクは夢を見ていたのかもしれない。
「へー……タマ取ると男っぽさ抜けてくの?」
「少なくとも、これ以上ごつくはなりません。男性ホルモンがもう作られないわけだから」
最近はジェンダーレスな雰囲気維持のため若くして去勢しちゃう男の子たちもいるらしい。
「ハゲたくないし」
「あ、そっか。男性ホルモンなくなるとハゲないんだ。いいな」
やっぱりこの人って天然だな。バカなのかも。
「……でも性欲なくなっちゃうらしいですよ」
「えっ!ほんと?やばいじゃん」
「……確かめてみます?」
「……確かめていい?」
杉田さんが顔を近づけてささやく。耳がくすぐったい。
「……いいけど、今日はアナルなし」
「え、なんで?」
「……バカ」
セックスするならこんなに豪勢にお肉食べないっつの。
ほんとにボク性欲なくなっちゃったのかな。今日はセックスより完全に食欲だったし、施術後2ヶ月、セックスどころかオナニーもしていない。
「じゃ、俺んちくる?」
「え?」
意外な言葉に、杉田さんの顔をまじまじと見る。
「うん。近いから。うちでやろ」
「……」
どうして佑くんは僕を部屋に呼ばなかったんだろう。
それが答えだなんて思いたくない。
杉田さんのマンションまで、タクシーなら4、5分らしかったけど、夜風に当たって歩くことにした。
実はまだ杉田さんとどういう距離で歩いていいのかわからない。
でも今日は杉田さんからボクの歩調に合わせてくるので、なんとなく並んで歩いている。時々手の甲がコツンと当たるくらいの距離。
「うん、やっぱ伊藤、女っぽくなってるかも。なんか並んだ感じが男じゃないな」
「……そうですかぁ?会社じゃ誰も何も言わないけど……」
まあ、誰もボクを気にかけてないってだけだけど。会社でのボクはそういう存在。
「杉田さん……」
「ん?」
「まさゆきって呼ぶの……セックスの時だけですか?」
「え?……ああ……」
杉田さんは素で今気づいたというふう。杉田さん、こないだもホテルでたらずっと伊藤でしたよ。
するといきなりボクの肩を抱き寄せ、唇を重ねた。すぐに離れたけど。
当然、すれ違う数人がボクらを見てた。
「……はぁ?」
呆れてボクは言葉もない。
だけどキュンっと嬉しかった。よくわからないけど。
嬉しかった。
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