アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
【57】にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
【57】
-
「よし、卵黄は混ぜ終わったし次は……薄力粉か」
レシピを確認しながら生地に薄力粉を振るう。
バイト帰りにスイーツ用のレシピ本を買い、その中から木月にあげるケーキはチョコレートケーキにしようと決めた。
ただいきなりプレゼント用を作って失敗しても困るし、練習もかねて材料は倍買っておいた。
そして今は練習用を作っている。
「響、次お風呂ーーーあら、何作ってるの?お菓子?」
濡れた髪をタオルで拭きながら母さんは興味深そうに覗き込んできた。
「いや、ケーキ……………学校の課題で。ほら前に春休みの家庭科の課題でご飯を作るってやつあったじゃん。あれのスイーツバージョンっていうか…………」
言い訳が苦しかったが、母さんは「へえ、今はいろんな課題が出るのね」と言っただけで特に深くは聞いてこなかった。
「そういえばあの時のご飯……親子丼だったっけ。あれも美味しかったわね、また食べたいわ」
「……………………いつでも作るよ、あんなので良ければ」
普段仕事が忙しく顔を合わせることすら少ない母さんにそんな風に言われると妙に恥ずかしい。
そのケーキも完成したら食べていい?と聞かれ小さく頷いた。
「響、風呂………って何やってんの」
不思議そうな顔でキッチンに入ってきた兄貴に母さんが「学校の課題でケーキを作ってるんですって」と俺のかわりに答えてくれた。
全部を知っている兄貴は母さんの話を聞いて「へえ、“課題”……ね」とクスクス笑いながら俺を見た。
「…………俺まだ時間かかるし兄貴先に風呂入っていいよ」
これは後々ネタにされるな……と思いながらぶっきらぼうに兄貴に言った。
「じゃあ俺先に風呂入るわ。頑張れよー」
「お母さん明日も早いから悪いけど先に寝るわね。おやすみ」
そう言う兄貴と母さんそれぞれに、ああと返事をし俺はまたレシピに目を戻した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
64 / 97