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俺は高校二年に進級した酒谷凛、17歳。
高校生活を十二分に楽しむ年である。
が。
俺には友達と呼べる人がこの一年間誰一人としていない。
「酒谷くん 、このプリント提出してる?」
「あ、えっと、ハイ。僕は提出して……ます」
「あ、そう。分かったー」
女の子ともまともに話せないコミュ症だから、仕方ないんだけど。
あぁ、手が震えちゃってる。
話し掛けた女の子は完全に事務的なことしか、喋ってないのに。
こんなだから、俺は毎日、ぼっち飯を食っている。
「ほら、またシャットダウンしてる」
「イヤホンして眼鏡してるのに前髪で隠してさ」
「どんだけ周りと関わりたくないんだろうね」
「陰を極めちゃってるなぁアレ」
「ま、友達いらないからそうしてんでしょ」
「こっちも求めてないしね」
全部、聞こえてるよ、くそやろう。
イヤホン、音楽流してないんだからな。
俺は帰宅して、ようやく気が抜ける。
「おかえり、凛」
「狼。ただいま。いたんだな」
「うん。先に上がっちゃってた」
狼の前で。
狼は俺の唯一の知人であり、恋人でもある。
正直大好きだ。
俺のことをよく理解してくれてる。
外面があまりよくないことで、周りの目を気にしてること。
でも、緊張して手が震えて上手くコミュニケーション取りづらいこと。
心を開けば、狼と普通に会話できる、「普通の高校生」になれる。
ただ、それには時間がかかりすぎるのが難点だけど。
でも、大好きな狼は、基本変人だ。
俺は付き合うまでこの170越えしたクールなイケメンを小学生だなんて思いもしなかった。
所謂「事後報告」みたいにカミングアウトされてしまったのだ。
狼は精神年齢が高いから大学生とかでも思ってた。
身長が俺よりも10センチは高かったから、まさか小学生なんて思わなかったんだ。
まずそこで俺のなかの小学生のイメージが崩壊した。
逸脱した風貌がいけないんだ。
声変わりだって勿論してて、その声で優しく俺を包んでくれる。
そして次に、狼は小学生なのにやけに俺を心配する。
俺のことを知っているがゆえなのだろうけど、今時の小学生ってグラウンドで遊んだりすることに夢中って感じじゃないのか?
精神年齢が無駄に高いせいで、俺を支え心配する。
情けない話だが、これが俺と狼が外に出ると、情けないとか言ってられないくらい、人の目が気になる。
怖いんだ。
ま、狼と一緒にいるときは狼が壁を作るように、俺を端にやってくれるからあんまり気にしなくなった。
小学生なのに、大人並みの優しさがあって、お人好し。
だから、変人だ。
あ、あともうひとつあったや。
つまらない学校から帰宅して、着替えがすむ頃、狼は優しい声色で話し掛けた。
「今日も嫌なこと、聞こえちゃったよね?」
俺がイヤホンを指してるだけの時に、陰口を言われたことだろう。
俺は別に隠す必要もないから、うん、とだけ答える。
「おいで、凛……。」着替えがすんだ俺を呼び寄せ、俺のベッドに座る狼の胸のなかに埋まった。
居心地がいいのは、きっと、狼がきつく俺を抱き締めてくれてるから。
「そろそろ、学級閉鎖でもさせようか」
優しい狼は、たまに、毒を吐く。
それは、絶対に俺以外で。
だから、変人だ。
そこまで、俺に尽くす気持ちが嬉しいから、何も言わない。
どうせ、学級閉鎖なんて小学生の力じゃ到底無理難題だし、何より、学級閉鎖は色々条件だってある。
そんな状況を作り出すこと自体、労力の無駄遣いにだってなる。
ましてや小学生の小さい手では出来っこない、励ましの言葉を喋っているとしか、俺は捉えなかった。
「凛……このまま一人でもいいけど、学級閉鎖しちゃえば、僕達、一緒にいられるね」
俺は恒例で、狼の腕のなかですぐに眠ってしまった。
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