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新学期(11)にしおりをはさみました!
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新学期(11)
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「すごい。」
見ていた者の口から出た言葉は、ただそれだけだった。
圧巻とも言うべき、見事な禊法を施したのは、まだ正式に楽師団となっていない平均年齢17歳のSクラス。
空いた口は塞がらず、ただ禊法の余韻に浸っていた。
パラパラとまばらに拍手が鳴り出し、それは次第に講堂全体に広がった。
同時に歓声も上がり、学校全体が興奮しているようだ。
Sクラスのメンバーは早々に講堂から引き上げ、サロンに雪崩込むように入ると、理人を四人掛けのソファに寝かせた。
ぐったりと力なく横たわる理人は、呼吸が荒く目は虚ろにゆらゆらと動くだけ。
「理人様!しっかりしてください!」
アリスは手早く理人の衣装を脱がせ、聖夜は手を握り額に浮かぶ汗を拭いている。
「理人!理人!俺の声が聞こえたら手を握ってくれ!」
僅かに聖夜の声に反応した理人は、ほんの少しだけ聖夜の手を握り返した。
「香!昴さんに連絡ついたか?」
潤は理人にまだ意識がある事を確認すると、少し離れたところで電話をしていた香に声を掛けた。
「慧様と共にこちらへ向かっている。」
香はちょうど電話が終わったところで潤に報告をすると、潤は渋い顔をする。
「……時間かかるか。」
「いや、すぐ近くにいらしたようだから、そんなにかからんだろう。それよりも……。」
香は言いかけて聖夜を見つめる。
手を握り、必死に声をかけ続ける聖夜に溜息を吐いてから、さらに息を吸い込んで言った。
「聖夜!てめぇはアホか!?何のための守人だよ!癒守(ゆもり)の陣を張れ!」
「!!ごめん、今やる。」
怒鳴られた聖夜は、我に返り理人の手を離して立ち上がった。
同時にアリスも理人のそばから離れる。
「めぐり巡る花の使徒守りし我が名は東雲聖夜、湯殿の神に願い申す、我が主に癒しの気吹(いぶき)を!」
聖夜が詠唱すると、理人を中心に光で描かれた小さな陣がいくつも浮かび上がり、理人を守るように取り囲んだ。
じっと陣に囲まれる理人を見守っていると、ガチャリと音がしてサロンの扉が開く。
怜と流生に連れられて、現カゲロウの慧とその守人で医師の昴が立っていた。
昴は癒守の陣に囲まれ、ゼェハァと荒く乱れた呼吸を繰り返す理人に近づいた。
陣に触れるスレスレの所まで来ると、左手の人差し指と中指を立て唇に当て詠唱を始めた。
「ゆらりゆいていえゆくばやたのからすをまぼりまつらん。」
カラカラとどこからともなく音が鳴り、聖夜の癒守の陣が更に光輝き、ぐるぐると左回転を始めた。
徐々に速さが増し、陣が光の帯に見える速さになったところで一度強く輝くと音も無く陣が弾け飛んだ。
ソファにぐったりと身体を預けている理人を確認すると、顔色は悪く、汗でぐっしょり濡れているものの、呼吸は落ち浮いていた。
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