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― ep.4 ―(2)にしおりをはさみました!
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― ep.4 ―(2)
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...【side change】
ようやく学校に来られるようになった。
…本当は、まだ風邪が治りきっていない。
一応病院の先生は、もう感染力はないから学校に行っても大丈夫ですよと言っていたけれど。
それでも中学までのぼくだったら、まだだるいとか咳が出るとかを理由にして、あと2〜3日は「粘っていた」ところだ。
風邪を引いた時は“しめたものだ”と思っていたのだから…。
いじめられっ子の多くと同じように、ぼくも両親には「学校に行きたくない」とは言えない側だった。
でも、彼らとぼくとではその理由が違う。
ぼくの方は、彼らのように両親に心配をかけたくないからなんていう立派な理由じゃない。
いじめられていることを知られたら、当然その原因も知られることになるだろう。
それだけは絶対に避けたかった。
だから普段は決して学校を休みたいとは言ってはいけなくて、たまに病気などで堂々と休めることがあれば、ここぞとばかりにギリギリまで休みを延ばしていた。
熱が下がっていくことや、咳が治まっていくことがただただ憂鬱だった。
そんなぼくがまさか、風邪を押してまで学校に行きたがる日が来るなんて、どうしたら想像できただろう――?
部屋で1人で寝ている時、いつも考えているのは学校のことだった。
早く学校に行って部活に出たい。
美術部のみんなに会いたい。
――早く汐海に会いたい。
こんな変化が泣きたいほど嬉しくて。
とにかく学校に行って、汐海と一緒に部活に出ることでぼくの頭は一杯だった。
……で、数日ぶりにそれが果たせたところなんだけど…。
「………
………」
「……ほら、亜稀固まっちゃったじゃないですか」
久しぶりに戻ってきた美術部には、
………なんかヘンな人が居た。
◆◇◆◇◆
2年の砂原先輩のことは、何となく顔と名前が一致する程度には知っていた。
やっぱりちょっと目立ってるし、1年生の中には彼に憧れてるという人も何人か見たことがあるし。
もちろん変な意味ではなく、純粋に男として憧れてるっていう人達だけど。
でも、この人が美術部と関係あるなんて聞いたことないし、なぜ今ここに居るのかも、なぜすでにこんなに溶け込んでいるのかも、…なぜ初対面でこんな乱暴な“挨拶”をしてくるのかも、全っっくわからない。
…それより何より。
さっきから一番気になっているのは、汐海の様子がどこかおかしいってことなんだ。
どこがどうおかしいのかと言われたら、何と説明していいのかわからないのだけれど…。
でも、確かに美術室に来るまでは、ぼくが学校を休むまでと何も変わらないいつも通りの汐海だった。
それが美術室のドアを開けて――中にこの人が居るのを確認した瞬間から、何だかわからないけれど、何かが明らかに変わったんだよ。
そわそわしてるっていうのか……何だか、こう…地に足がついていないような。
皆は気づいていないのだろうか?
ぼくはふとスケッチブックから顔を上げ、他の部員たちの様子をさり気なく盗み見てみようとした。
するとその時。
「?」
気のせいだったかもしれないけれど、今、阿部先輩がぼくのことをじっと見ていたような気がした。
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