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俺たちの道〜修二〜
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修二「兄貴、おかえり」
兄貴の帰宅は、夜の10時半頃だった。
僕の顔を見た瞬間、僕の決意を悟った兄は、着替えもせず、早々にリビングの椅子に腰かけた。
昨日と同じように向かい合い、兄貴は、白々しく聞いてきた。
奏一「それで?どっちにするか決めたか?」
修二「…兄貴、………俺、むつと華南と3人で暮らしたい。だから、兄貴には分かってもらえるまで話をする」
兄貴の鋭い瞳を真っ直ぐ見つめる。
昨日と変わらないその冷ややかな瞳の兄貴は、いつもどうりの質問を口にした。
奏一「なぜ、男3人で暮らす必要がある」
修二「…それは…、ぼ…俺が、むつと華南と一緒にいたいから…」
怖い…兄貴の鋭い視線が痛くて…怖い。
僕は、手に汗握り、ずっと言えなかったことを口にする。
修二「俺、…むつと華南が好きなんだ」
奏一「…」
修二「兄貴に…、ずっと…言えなかったけど、…俺、お…男が恋愛対象で…」
喉が乾く…口の中が乾いて、指が震える。
修二「女の人に興味が持てないんだ…。ずっと…、小さい頃からずっと…むつが好きで…、男だし、諦めなきゃって何度も思った。…でも、他も、目が行くのは男の人ばかりで…、凄く悩んでたら百目鬼さんとあんなことになって…、助け出された後、兄貴…すっげぇー泣いてたろ?」
奏一「…」
兄貴は隠れて泣いてた…。
僕は…あの時初めて、…兄貴が声を押し殺して泣き崩れるのを見た…。
修二「…だから、言ったら…また…兄貴を悲しませると思って…、何も言えなかった。…俺が、引きこもって、むつに顔を見せられなくて…、兄貴が俺のために引越しとか考えてくれて…でも、兄貴の留守にむつが合鍵使って勝手に入ってきて、…俺…やっぱりむつが好きで…、むつのそばに居たいと思った。…兄貴に何も話せなくて…ごめん。それから…これは…誰にも言ってないんだけど…。事件の後…学校で何度か授業サボってるって担任から連絡あったろ?」
奏一「ああ、あった」
修二「兄貴、俺を問い詰めなかったね」
奏一「…」
修二「…ありがとう。あれは…、気分が悪くなって教室に居られなくなる時があったんだ…。集団の人間の中にいると、気分が悪くなって…」
僕の言葉に、当時の真相を知った兄貴の眉間にシワが寄り、視線がわずかに落ちた。
修二「…その時…、華南に出会った」
奏一「…」
僕は、華南との出会いを、初めて人に話す。
兄貴の下がった視線が、僕をまた見つめる。
修二「俺、あの時、長い黒髪で眼鏡かけてたし、あんま食えてなくて少し痩せたろ?裏庭に一人で居たら、華南が声をかけてきた。最初遠くから声かけてきて、俺を女だと思ったんだって」
『そんなところで何してんのあんた』
『うずくまって具合悪りぃーの?保健室行く?』
修二「男だって分かって、きまづそうにしたけど…、それから時々様子を見に来るようになって。凄く優しくてカッコいいやつだなって…。俺…顔あまり上げなかったかし、その後2年になって華南がむつと腕試しでやりあった時には、髪染めてたから気づかなかったみたいで…、むつと同じぐらい強くて、気の利く優しいやつで、むつと違う格好良さがあって…、むつと華南と一緒に居たら、気分悪くなるのもいつの間にか治ってた」
兄貴は、ずっと鋭い瞳のままだけど…、黙って聞いてくれている…。
僕は、意を決した。
修二「兄貴、俺、むつと華南と付き合ってる。だから、一緒に住みたい。兄貴には認めて欲しい、時間がかかっても兄貴に認めてもらえるようにする、だから、3人で暮らすの、許して下さい!」
僕の言葉を静かに受け止めた兄貴、やっぱり、知ってたんだろうと思った。
兄貴は一度視線を逸らし、壁に掛かってるカレンダーに目をやる、それから大きくため息をついた。
奏一「はぁー…。長かったな…」
その言葉が、僕の言葉をずっと待っていたんだろうと感じた。
奏一「でも…、残念だな…」
え?
奏一「…結局、あの2人に言われたから動いたな」
修二「え?」
奏一「今日、2人に『溜め込んでることを吐け』とでも言われたんだろ?」
まるで、見ていたようなことを言う兄貴に驚くと、僕の反応で悟った兄貴は、またため息を漏らした。
奏一「あれだけ昨日言ったのに…」
修二「昨日?」
兄貴は視線だけで僕を見る。
奏一「昨日…、昨日で5回目だったか?むつと華南は2人で俺に時間を貰って、お前と付き合う許可を求めてきてた」
えッ!?
修二「5回!?」
奏一「初めて俺に言ってきたのは、8月の頭だったかな?…」
8月!?
3ヶ月も前?!
奏一「知らなかったろ」
修二「し、知らない…」
奏一「昨日も、むつと華南揃って俺のところに来て、色々話してきたよ。お前がまいってるから、どうか認めてくれってさ」
えッ!?
むつと華南が?!
そんなこと一言も…
奏一「修二…、お前、物事に波風立たないで平和であればいいと思ってるだろ、そのためなら、自分の考えは簡単に諦める。でもな、これからはその考えは通用しないぞ」
修二「ッ!」
奏一「お前の進もうとしてる道は、イバラ道だ、平和でなんかいられない、常に戦わなきゃならない、どこにも平らな道なんかない、そういう道をお前は進もうとしてる、分かってるのか?」
修二「…分かってる。でも僕は、…俺は、あの2人と一緒に居たい、そのためなら何でも頑張れる」
奏一「…お前は諦め慣れてる。だから、直ぐ逃げようとする、でも、むつと華南をそうゆう世界に巻き込むんだ、逃げることは許されない」
修二「…うん」
奏一「2人に、やっぱり違ったって言われて女作られても、逃げないで最後まで2人と話しが出来るか?」
修二「ッ………」
奏一「お前は直ぐ諦める。2人に女の影が見えたら、そっと消えようとか考えたことがあるだろ?」
何度も何度も考えた、体だけ繋げた日から、ずっと今だけ…そのうち飽きると、はじめのうちはそればかり考えていた。
修二「………ある」
奏一「3人で一緒に暮らしたい?…、可能性に怯えて逃げるくらいなら、やめておけ、無駄な時間だ」
修二「ッ、やだ!」
奏一「本心をさらけ出せないで上辺だけで付き合う恋人なんか恋人じゃない、お前は二ヶ月もあったのに、むつと華南に相談もせず、2人がそっとしといてくれのに甘えて自分から荒波に飛び込みもしない。あの二人はとっくに覚悟を決めて、俺のところに何度もぶつかりに来てたのに」
修二「ッ…、僕は!上辺だけで付き合ってるるんじゃない!僕は!確かに…波風立てたくない、2人に相談しなかった、でも!別に隠して訳じゃなくて、頑張らなきゃって!
…でも、約束した!今日2人に、僕の思ってることとか、兄貴に言われたこと全部話して、これからは、自分から言うって!自分から何でも話すって約束した!」
奏一「高校卒業してまで2人にお前の面倒見せるのか?!」
修二「面倒も、迷惑もかけるし、むつと華南を頼る!だって、僕も2人の面倒も迷惑もかけてもらって頼ってもらうんだから!」
奏一「…修二」
修二「兄貴、僕は本気だから!これからは兄貴にも何でも話す、何でも相談する。迷惑は減らす、兄貴には、僕の面倒見るより自分の幸せを考えて欲しい、僕はもうすぐ高校卒業するから!成人するまでは、兄貴に頼ったりすこともあるけど、でも、もう、兄貴のために何か出来るくらい大きくなった」
奏一「…」
修二「兄貴。…俺、むつと華南が好きなんだ。大切で、いつも安らげるようにしてくれてる、兄貴が俺を大切にしてくれてるように、2人も俺を大切にしてくれてる。だから、一緒に居られて幸せで、いつも一緒に居たい」
奏一「…今はそうでも、先はわからないぞ、お前は、男しか好きになれなくても、2人は違うだろ」
修二「…うん、先は分からない、2人はノーマルだよ。でも、2人と一緒に居たい、2人が僕を好きだと言ってくれる、けど、それ以上に僕は2人が好きなんだ…大好きなんだ」
奏一「捨てられる覚悟があるんだな」
修二「…違うよ、一緒に居る覚悟をしたんだ」
奏一「…なら、約束出来るか?2人に浮気されようと、片方いなくなろうと、これから3人で住む家に、修二、お前が最後まで残るって…」
修二「最後?」
奏一「女連れ込まれようが、浮気現場見ようが、喧嘩しようが何しようが、お前は、その家から逃げたりしない、最後まで残るって約束出来るか?」
修二「……約束する。2人からも、兄貴からも…逃げない」
奏一「辛いぞ」
修二「辛くないよ。むつも、華南も、そんなことしないもん、…喧嘩はするかもしれないけど…」
奏一「…」
修二「それに、むつのこと、兄貴は良く知ってるでしょ?嘘も、浮気も遊びも出来ない、他に好きな人が出来たら、隠さず言ってくる。
華南は優しいから、浮気なんてしないし、気持ちが離れたら、話してくれる。……そうなったら…ちゃんと言うよ、離れたくないって…、もう引き返す分の余力は僕には無い。むつと華南がいなきゃ…きっと泣けちゃうくらい、全部明け渡しちゃったから…」
奏一「…泣く?」
修二「うん、泣けちゃうくらい好きだよ」
奏一「…」
修二「兄貴。約束します。これからは逃げないし、諦めないし、最後まで残る。だから、3人で暮らすのを、どうか許してください」
生まれて初めて…
心から…
あきらめたくないと思った。
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