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番外編47ひと夜咲く純白の花の願い
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ハァ…
ハァ…
渦巻く感情と強烈な痛みに耐える…
嵐は…
いつも過ぎ去るのを待つことしかでき無い…
こんなにしんどい…
…百目鬼さんの考えが分からない…
出会った時、修二を好きなくせに好かれるような行動と言動が出来ない不器用な百目鬼さん。そのチグハグな不器用さを差し引いても、彼の考えは意味不だ。
期待しそうなことをしといて、キッパリ『無理だ』付き合えないと言うくせに、戻って来いってどんだけ意味分かんないことしてんだよ。
最初の時もそうだった。出てこうとしたら、引き止めて、用事があるって…、別に期待した訳じゃないけど、結局は僕にお金を渡すために引き止めてた。
今度はなんだ?
告白もした、振られた、それでも会ってする話って何?
単純に看病のお礼?
なら、電話でだって出来るじゃんか…
それとも……また…お金?
好きだって言ったのに…
お金なんて、そんなこと流石にないと思うけど………
怖い。
会って話して、良い風に転ぶ要素が1個もない……
百目鬼さんは不器用なだけで馬鹿じゃない…
だから百目鬼さんなりの理由があるんだろうけど………
予想もつかない…………
桜木「マキ」
マキ「ッ!!…あっ、桜木さん上がったの?」
急に声をかけられて、慌てて取り繕った顔で笑う。
…さっきの話し、聞こえてだろうな…
不覚にも…、かなり大きな声を出した自覚がある。
だけど桜木さんは、知らん顔で僕の髪に触れた。
桜木「乾かしてないね。おいで、俺がやってあげるよ」
そう言って僕を洗面に連れて行き、部屋の椅子から引っ張ってきて座らせた。
桜木「湯船熱かったろ、濡れタオルあげるから顔の火照りを落とすと良いよ、その間に後ろ髪乾かすから」
そう言って、お風呂から上がって15分以上経ってる僕の顔に水で絞ったフェースタオルが当てられた。
僕がそれを受け取ると、桜木さんは、僕のウルフカットの尻尾のように長い後ろ髪からドライヤーをあてて髪を乾かし出した。
…桜木さん…、やっぱり聞こえてたんだ…。
何にも言わないけど、泣いたのにも気づいてる…、だから濡れタオルくれたんだ…、瞼を冷やすために……
僕が人前で泣くの死ぬほど嫌いなの知ってるから、触れないでくれてる…。
とても紳士な桜木さん…、一緒にいてこんな楽な人いない……
桜木さんと付き合ったら…、きっと毎日穏やかだろう…
桜木「マキの髪はいつ触っても柔らかくて綺麗だね」
マキ「えー、でも癖っ毛だからすぐ跳ねるんだよ、髪型もこの髪型以外だと、常に寝癖のある子みたいだしぃ」
桜木「それは、マキがちゃんとブローしないからだろ?綺麗な髪なのにもったいない」
マキ「だってぇー、ほっといたって乾くじゃん」
桜木「マキはお子様だね」
マキ「ブゥー。僕を子供扱いするのは桜木さんと泉くらいだよ」
首を後ろにそらして、桜木さんを見上げながら、口を尖らせて抗議する。でも、桜木さんはますます子供じゃないかと笑っているから、桜木さんの首を掴んで引き寄せた。
唇が後数センチで重なる位置まで近ずけて、妖艶に囁く。
マキ「子供とは、こんないやらしいことしないでしょ?」
間直で見る桜木さんの顔はいい男で端正な顔立ちで、百目鬼さんとは全く違う。
桜木「体は大人、心は子供。マキは、まだまだだね」
至近距離の誘惑をクスクス笑って返す桜木は、マキの取り扱いを重々承知していた。
桜木「さ、美味しいお子様ランチのあるお店に行こうか」
マキ「…酷い〜、そんなのお腹にたまらないよぉ〜」
桜木「ハハッ。ほら、着替えたら出るよ」
そう言って僕の頭をヨシヨシと撫でた。
百目鬼さんとは違う、柔らかなタッチ…、
百目鬼さんの手はゴツくて大きくてもっと…
ハッ!
いけない…なんで比べてんだろう…。
もう、関係ないのに…。
頭を振っても、思い出は溢れてくるばかり。顔に似合わず優しくて、顔に似合わず心配性で、顔に似合わず一途で愛情深い人…
そのくせ可愛くて…獰猛で情熱的…
きっとしばらくは…
馬鹿みたいに思い出すんだろう…
この死にそうな苦痛と一緒に…
散った花が…
土に還るまでは……
桜木「マキ、レストランへ行く前に、服を買いに行こうか」
ホテルの駐車場で車に乗り込んだら、桜木さんがそんなことを言い出した。
確かに、湿った服をいつまでも着ているのは気持ち悪い。それに、上着が無いとかなり寒い。
マキ「じゃあ、お願いします。取り敢えず、ここの街から離れた所で」
この辺をウロウロするわけにはいかない。もし百目鬼さんが探してたら鉢合わせになっちゃうかもしれない。
桜木「実はね、この近くに俺のお気に入りのブランドがあるんだよ、是非そこに連れて行かせてよ」
マキ「…ッ…、いや、ブランドなんて高級そうなの僕要らないよ」
…………。
桜木「高級じゃないよ、ブランド化して、高級感出してるだけだから、それにマキの趣味に合う服だよ、絶対気にいるよ。クリスマス一緒にできなかったんだ。今晩その代わりの豪華なディナーをしようよ、服もプレゼントするし」
そう言って車を発進させる桜木さん。
僕はへらへら笑って返しす。
マキ「あは♪ヤダヤダ、服なんて貰えないよ。服をプレゼントなんて意味深♪服をプレゼントするのはその服を脱がしたいからなのかな?あんなに散々ヤッたのに、桜木さんのエッチ♪桜木さんが服買うなら、僕も桜木さんの服買うからね」
桜木「マキは俺にどんな服着せて脱がしたいの?」
マキ「ふふっ♪桜木さんはやっぱスーツだよね♪あっ!タキシード!タキシードが良いな♪」
桜木「嬉しいけど、それは高すぎて貰えないな…」
マキ「でしょでしょ♪?。だから他のに…、そうだ!ネックレス!ネックレスが良いよ!」
すると、運転して前を向いていた桜木さんが、チラリと視線だけで僕を見た。
桜木「ネックレス?」
マキ「うん♪こないだ買ってくれるって言ってたし」
桜木「…いいよ。マキの欲しいものならなんでも一つ用意してあげるよ。本当に欲しいならね」
マキ「うん♪フフっ、凄く欲しい♪」
胸のあたりにポッカリと穴が空いたみたいで…寂しい…。
あるはずの無いものに手を伸ばし、空を握る…。
桜木さんが優しく微笑むたびに、自分の笑顔が引きつってるような気がして。
早くこの街から離れたい…
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