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番外編71ひと夜咲く純白の花の願い
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百目鬼さんは、この意味を分かってるんだろうか?
マキ「ん…ふ………んぅ」
あなた今、シラフなんだよ?
あんたからのキスは、初めてなんだよ。
それに…、あんたの行動矛盾だらけだ。
そんな困り眉で眉間にしわを寄せた可愛い顔で強引なキスとか反則じゃない?
そんなに強く抱きしめないで…もう、分かったから…あんたが抱えてる矛盾だらけの気持ちがあんたを苦しめてるって分かってるから…
貴方が心配してること分かってる。
僕たちと修二は切っても切り離せなくて
僕たちは人に必要とされたい者同士。
感情が上手く表現できない者同士。
貴方の触れたくない過去を思い出させる僕の存在。
僕の触れたくない過去を思い出させる貴方の存在。
溺れるようにキスを繰り返して、酸素が足りなくて…、それでも繰り返して口づけを貪るように絡める…
苦くて残酷な口づけは、直ぐに僕を猛毒で犯す。戒めは崩れて僕は過去の過ちを繰り返すことになる………
それでもその腕を払うことなど出来ない…
苦痛だらけだと分かっていても…
酸素が足りなくなって離れた唇…
僕は目の前の百目鬼さんの困り眉の瞳を見つめ返す。
百目鬼「はぁ…はぁ…」
マキ「はぁ…はぁ…」
限界まで触れていた唇が離れて、息を吸い込む、困り眉の瞳が悲しそうに目を細めて、煙草の匂いの染み付いた左手が、僕の右頬を拭う。いつの間にか流れたものを何度も何度も、まるで消すように指先で拭ってくる。
百目鬼さんが見たかったはずの物なのに、それを見た百目鬼さんは心を痛めたように悲しい表情をしていた。
百目鬼「……なんて泣き方するんだよ…」
マキ「…ん?」
自分の泣き方なんて見たことないから分からなくて、上目遣いの瞳を瞬くと、今度は眉を顰めた百目鬼さん。
百目鬼「…わざとか?」
マキ「…」
百目鬼さんの言いたいことが半分分かったけど、僕をそうゆう風に見るなら、そう思えばいい、百目鬼さんに僕がどう映ってるかなんて知らない。それは百目鬼さんが決めることだ。本当の僕がどうかと説明したところで、信じてもらえなければ何の意味もない。
黙ってジッと見上げていると、百目鬼さんは顰めた表情のまま、何かに困ったような困惑した表情をした後、コツンとおデコを当てて息をついた。
百目鬼「…すまん…。俺が悪いんだよな…、すまん…」
マキ「…」
ほら、また一人で考え込んで、抱えてる…。
なんてバカで愛しい男…。
人を信じることにこんなにも怯えて、ずっと去勢を張って、自分を抑え付けて…
百目鬼「…ずっとお前が泣いたらどんなになるかって思ってた…。お前、泣き方まで嘘つきなんだな…」
百目鬼さんの顔が近づいて左側の目尻に口づけられた。
百目鬼「…どうしてそんな風に泣くんだ…」
自分の泣き方なんて知らない。
絶対に人前で泣くもんかってやってきた。
でも今は、勝手に溢れてくるんだからもうどうしようもない。
百目鬼「…ずっとお前の涙を見たいと思ってたけど…なんか違う気がする…満たされない」
どこか痛むような顔をして言った言葉に、涙が溢れた。
もう泣きたくなんかないのに…。
その言葉の重要性が分かるから、涙が溢れた。
僕は酔っ払ってるのかな?
だからゆるくなっちゃったのかな?
溢れた涙を見て、百目鬼さんはまた苦しそうに眉を歪めて、涙を指で拭ってくれたけど、そうされればそうされるほど、涙は溢れて止まらない。
マキ「ハハッ、止まんないや…」
百目鬼「笑うな」
拭っても拭っても溢れるからおかしくなっちゃって、百目鬼さんに言われても笑いも涙も止まらない。
百目鬼さんは言うこと聞かない僕にムッとして、両頬を掴んできたと思ったら、僕の頬の雫を舐めとってそのまままた唇を重ねてきた。
マキ「ど……ぁ…はん……んぅ…」
百目鬼「黙れ」
マキ「…んん……ふ……」
慰めるような甘やかす唇が段々熱を帯びていく、眉間にシワを寄せたまま、唇と体だけはどんどん熱を増して火照る。
マキ「んぅ…めきさん……ぅん…」
自分の抱える矛盾に苦しみながら、口づけを繰り返すたびに、静かに目覚め始める猛獣の姿が現れる。
マキ「んん¨!?……きさん!…ここ、病院んッ!…ふ…ぅう……」
包帯を巻いた左手に力が入らず、ますます強く抱きしめられた腕が熱くて…なかなか押し返せず、滾ったものが押しつけられ自分も昂ぶったものが抱きしめられて擦れてゾクッとして僕もどうしようもなく欲情してる。
マキ「あっ……ダメ…ロビーに修二が…」
ーゴン!!
修二の名前を聞いた途端、冷静さを取り戻した百目鬼さんは、トイレの壁に額を打ち付けた。
マキ「…あ…大丈夫?」
百目鬼「すまん…」
マキ「…ヌいてあげようか?」
百目鬼「いらん」
この空気をどうしたらいいか分からなくて、ついつい、へらっと笑ったら、ギロッと睨まれた。
百目鬼さんはそっと僕から離れ、少しだけ気まずそうにジッとしてから、トイレの出口に立った。
百目鬼「行くぞマキ、薬と会計して、修二達に傷のこと話さなきゃ…」
マキ「うん」
いつもの強面の百目鬼さんに戻ったけど、僕の先を歩く百目鬼さんの耳は、赤くなったままだった。
何もはっきりしない、迷路の中へ逆戻りしたんだけど…。僕はやっぱり、このライオンが愛おしい…、不器用で、矛盾と戦ってばかりで、愛に飢えたライオン…。
僕は結局…、
また彼の隣に寄り添う
口の中に広がる熱と、苦味を感じながら…
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