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〔裏番外〕狂愛♎︎純愛11
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今まで平気そうにしてヘラヘラ笑っていたマキの顔が、悲しそうに瞳を曇らせ、震える唇の口角は下り、歪んだ。
崩れそうになりながら、それでも耐えようと下唇を噛み締める。
そして、直ぐに顔を隠してしまいう。
もう一度目が合った時、その悲しみの表情は消えてしまった。
マキは、何も言わない。
こうして何度も、気持ちを呑み込んできたのだろう。だが、呑み込まれた言葉は、俺に届かない。届かなければどうしようもできない。
俺は、どうしたらいいのか分からず胸が苦しくなりながら、その歪んだ顔に興奮した。
俺の中の獰猛な猛獣が、マキを喰らいたいだけ喰らって傷つける。
怒りと熱の引いた俺は、マキを見ていられなくて、逃げるように帰った。
マキを、ベッドの上に放置したまま…
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自宅に帰りつくと、雪哉が玄関の前に座り込んでいた。
ムスッとした様子だったのに、俺の顔を見て驚いたように心配しだした。
雪哉「神?顔が真っ青だよ」
百目鬼「ッ…、雪哉…俺、やっぱりダメだ……、俺は、最低だ…」
いつも、反省は全てが終わってから…
暴走して、相手を傷つけるだけ傷つけて。
我に返った俺は、やっちまってから反省する。いつまでも変われない。
雪哉が、俺をリビングのソファーに座らせて、暖かいホットチョコを作ってくれた。
甘い甘い飲み物…
少し飲んで落ち着くと、なおさらさっきのことが悔やまれる、逃げ出して、マキをあのまま放置してきてしまった…
雪哉「落ち着いた?。なら、何があったのか言ってごらん?」
甘い匂い漂う雪哉は、恐らく検討がついてるんだろう、〝仕方ない奴〟ってな具合で言ってきた。
百目鬼「ッ……」
雪哉「…、俺は、あんたの性癖知ってんだから、今更言い淀んだって意味ないよ。今朝は俺も仕事だったから、神を止めてあげられなかった。ごめん」
百目鬼「お前は、関係ない、俺の問題だ」
雪哉「はいはい、気にするなって言いたいんでしょ?」
雪哉は、俺がどんな乱暴な言葉を使っても、言葉ではなく〝言いたいこと〟を拾って適切な言葉に直してくれる。流石に、何年も体を重ねただけあって、俺を熟知していた。
雪哉「でも、残念ながら気になります。神があんなに怒ったの初めて見たもの。チャイナドレスのマキ様、そんなに隠しておきたかったの?」
百目鬼「隠したいとかじゃない!あんな露出した服!」
雪哉「スリット入ってるだけで、あとは露出ないよ」
百目鬼「そうゆう問題じゃないんだよ!あいつは、分かってない!」
雪哉「じゃ、どうゆう問題?
神は、マキ様が可愛いすぎるから、誰にも見せないように隠しておきたかって話でしょ?」
百目鬼「はあ!?」
俺が睨んでも、俺を熟知している雪哉は、冷めた瞳で鋭く俺を見据える。
雪哉「何もかも、誰にも見られないように隠しておきたかったのに、他の人に見られて嫉妬して、頭に血が上ってマキ様を縛って犯してきたんでしょ?」
百目鬼「ッ…」
そう、俺は、怒りや嫉妬の欲望のまま、マキを縛って犯した。マキは、反省して泣くどころか、喜んで締め付けて感じていたことに腹が立ち、言葉で追い込んだ。
マキが少しづつ素直になってくれた分だけ、正確に、マキの気持ちに牙を食い込ませて傷つけた。俺は、最低の人間だ。
うなだれる俺に、雪哉は深く息をついて、噛み締めるように言った。
雪哉「神は、それだけ真剣なんだろ?」
百目鬼「…だけど、俺は、マキを壊す…」
俺は、もう、無理なのかもしれない…
誰だって嫌な思いをする奴と一緒にいたいなんて思わない…
マキは、俺といても傷つくばかりだ…
マキに嫌われても…仕方ない…
泣かせたくない…
だけど、あの涙を見た時の高揚感。罪悪感を伴いながら、それでも背筋をゾクゾクと這い上がる満足感。マキが俺を好きだと安心する。
だが、マキは泣いた分だけ俺に対して取り繕うのだろう…。そうして離れた心は、近いうち消えるのかもしれない。
マキに、別れたいと言われたら、俺はどうなるだろう。嫉妬だけであんなことをしでかす俺は…。きっと、俺から離れて別の奴を好きになるマキを、殺してしまうかもしれない…
雪哉「…ねぇ、好きな人と一緒にいるんだよ?壊れたりしないよ、だって、会うたび触れ合おうとしてるんでしょう?神にとって1番恐れることを、マキ様は怖くないって教えてくれてる、口先で言っても神は信じない、マキ様は、体で触れ合って全然平気だって教えてくれてるんじゃないの?」
百目鬼「…。マキは、お前と同じマゾなんだ、虐められることが快感だから俺に近寄るんだ」
雪哉「…………、マキ様、マゾなの?本人がそう言ったの?」
百目鬼「…マゾだとは言ってないが、どんな痛みも快感に変えるように出来てるって。あいつは、先生様に調教された奴だぞ」
雪哉「……。神、本当に彼がマゾだと思う?酷いことやったり、言ったりしたら、喜ぶの?よく考えて」
百目鬼「ッ…」
マキの体は、どんな風に扱っても柔軟に受け止めて、快感に変え蕩ける。
どんなことをしても、どんなことを言っても、平気そうにヘラヘラして、限界がくるまで、その内側が見えることはない。
百目鬼『…これで…満足か…』
マキ『ッ……』
マキの歪んだ顔を思い出した。
今までも、何度も泣かせてきた、どれもこれも、我慢に我慢を重ねた後、溜まりに溜まったものが溢れてしまうように、本人の意思では止められないほどの涙が溢れ出る。なのに、泣いてる本人は、平気な顔して「止まんないや」っ笑ってたり、それすらできないほど崩れ落ちたり…どちらかだ…。
百目鬼「マキは、なんでも受け止めるが、その内側は、小さな子供のようで。無邪気で、曇りのない瞳を持ってて、人をよく見てる。素直で、寂しがりやで、甘えたで、なのに、心配されることや、人前で泣くことを酷く嫌う。人の気持ちに敏感で、人の世話はなんでも首突っ込んで焼くくせに、自分は二の次で、自己犠牲が強い。自分が我慢して済むなら、我慢することを選ぶ…」
いつの間にか…声に出てた。
淡々と、思い出せるだけマキのことを思い出した。最近のこと、付き合ってからのこと、付き合う前のこと、初めて知り合ったときのこと。
マキは、掴み所が無くて、ヒラヒラ蝶のように飛び回り、人の目を引く…
だけど蝶は、羽根に触れられた瞬間、飛べなくなるほど…儚く脆い。
危なっかしくて、目が離せなくて、危険な俺といても、いつもニコニコしてて、俺の手料理にいちいち感動して、俺の腕の中で安心したように眠るマキ。
百目鬼「俺なんかを好きだと言った…。俺なんかと、ずっと一緒にいたいって…。だから大事にしようとした、優しくしたし、出来ることは全部した。
だけど、マキは、俺の怪物を刺激するんだ、ほっといてくれりゃいいのに!いちいち刺激して起こしやがる!そんなんじゃ大事に出来ない!あいつはワザと俺を怒らせる!」
雪哉「……、マキ様は、神の全部を好きなんじゃないの?暴走してしまう神も受け入れてくれてるんじゃないの?」
百目鬼「違う!マキは、狂った俺が好きなんだ!この俺に狂うほど愛されたいって言いやがった!」
雪哉「………」
違う…、きっとそうじゃない…、だけど上手く言えない、だって、よく分からない、分からないんだ、マキって奴が…
あいつは俺のこと理解してくれてる
でも狂うほど愛されたいと言った
あいつは、なんでも受け止める
だけど、何度も怒らせる
あいつは知ってるはずなのに
穏やかに過ごそうとする俺に跨ってくる。
百目鬼「そんなこと2度としたくないという俺の気持ちを知っていながら、俺を狂わす、酷いことなんかしたくないのに、会うたび誘惑して跨ってきやがる、俺がキレたら、SEXできて満足そうに笑ってやがる」
雪哉「…それ、本気で言ってる?」
百目鬼「ッ…」
雪哉「君の今付き合ってる恋人は、自分の悦楽のために、SEXにコンプレックスのある神をワザと煽って怒らせて、酷いSMプレイを満喫するような人なの?」
自分の言葉が、全く違う言葉に変わってる、だけど、俺は確かにそう聞こえることを言った。
雪哉「神の気持ちなんか考えもしない、自分の快楽のために神と付き合ってる人なの?」
百目鬼「…」
雪哉「神がそこまで嫌だと思ってるなら、何で付き合ってるの?」
百目鬼「嫌だなんて…言ってない」
雪哉「神、君は、きっと今の調子で〝恋人〟にこの話をしたんだろ。その言葉を聞いた〝恋人〟は、神に好かれてると思うかな?
少なくとも俺は、神の話しだけ聞いて思うのは。その恋人は、人の気持ちなんか考えない、マゾの快楽主義者で、神が傷付くのもお構いなしにSMプレイを満喫してる酷い奴なんだって思ったけど」
百目鬼「違う!マキはそんなやつじゃない!」
雪哉「支離滅裂。人に言われると怒るなんて典型的すぎる。今、神がそう言ったんだ」
百目鬼「ッ…」
雪哉「神が言いたいことを上手く言えないの知ってるよ。喋るの下手だし、ぐるぐる考えてると、考えてることを考えついたまま言葉にしてしまうのも知ってるけど。
今の説明じゃ、そうとしか聞こえない。マキ様にも、そんなようなこと言ったのなら、きっと、そうとしか聞こえてないと思うよ?」
マキの悲しそうな瞳と歪んだ顔を思い出した。泣きそうなのに震えながら下唇を噛み締めたマキを…
雪哉「神がどんな風にマキ様を大事に思ってても。神は、そのマキ様に、〝俺の気持ちを考えない、自分の快楽を優先するマゾ野郎〟って言ったもどうぜんじゃない?」
背筋から冷えるような、悪寒がする。
自分が支離滅裂なこと言ってるのは分かってた。
百目鬼「………」
雪哉「自覚があるから、後悔するんだろ?」
マキ『ごめんなさい…いい子にするから…ごめんなさい…、好きになってごめんなさい……』
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