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(番外編)純愛>♎︎狂愛
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マキは、微笑んだまま溢れるものをごまかすように鼻で笑う。
マキ「ふふ、本当の自分なんて見せなきゃ良かった。本当の僕は、弱くて、傲慢で、構ってちゃんなんだ…」
修二「違う…」
マキ「知らなかったんだ…、こんなコントロール出来ない感情があるなんて…、今までこんな気持ち知らなかった、悪い事ばかり考えちゃう、嫌われないように毎日必死で、会いたくて、触れたくて、肌を重ねずにはいられない…。醜く僕の中に、さらにどうしようもなんない傲慢な欲あったなんて…」
修二「マキ、違うでしょ」
マキ「僕は今までスマートにやって来た、修二は信じないかもしれないけど、昔の僕は自分を押し殺してたんじゃ無い、あれが僕だと思ってた」
修二「周りに合わせて色を変えてる内に、本当の色が分かんなくなってたんだよ」
マキ「ふっ、面白いこと言うね。僕はカメレオン?確かに、喋る相手で色々分けてた、でも、それは僕の普通だ…」
修二「それが普通だと思い込んで、考えるのを辞めちゃったんだよ」
マキ「…そう…かな?今でも色を変えることは苦痛じゃ無い、物事を穏便に済ませる手段だ…。だけど、先生や泉、修二やむつや華南、それに百目鬼さんは、そんな僕は嘘だと言う…ヘラヘラ笑うなって言うんだ。本当の僕が見たいって…」
マキは目を細めながら、その時のことを思い出してるようだった。不思議な感覚だったのか、若干遠くを見てる。
マキ「特に百目鬼さんはずっと言うんだ…、どんなに頑張っても、百目鬼さんは納得してくれなくて、どんなに素直になっても、好きだと言っても、どんなに大丈夫だと言っても、百目鬼さんから手を伸ばしてはこない…。僕にとって愛情表現であるSEXも、百目鬼さんにとっては苦痛でしか無い…、なのに僕は、百目鬼さんに飢えた…、百目鬼さんの気持ちが付いてくるのを待てなくて、もっともっとって…、百目鬼さんが仕事で忙しいのに、側にいたくて…一緒に暮らしたいからって一人暮らしの先で荷ほどきもしないで…、百目鬼さんを独占したいなんて…」
…あれ?
百目鬼さんが言ってたのは、真逆だったけどな…
マキ「毎日メールしてもらって、月に一回はデートしてもらって、会えない日が続いたら食事の時間作ってくれて、色々してもらってるのに全然足りなくて…もっと居たくて…」
修二「それ、百目鬼さんに言った?」
マキ「…直接は言わない…相手は働いてる社会人だよ。だからやんわり言ったことはあるけど…」
修二「マキ、百目鬼さんきっとそれ気づいてないよ。百目鬼さん、マキが寂しがってくれないって言ってたよ」
マキ「え?」
修二「会いたいとか、寂しいとか言って欲しかったって言ってた」
マキ「…そう…なの?」
マキは瞳を瞬いて、信じられないって顔してる。
修二「そうなの」
マキ「そうなんだ…」
修二「言ってみたら?」
マキ「ふふふ、別れてから?寂しい会いたいって?百目鬼さん、ブチギレると思うよ」
修二「言ってみなきゃ分かんないじゃん」
マキ「修二なら分かるでしょ、それ言って、いい反応されなかったら…って」
修二「…」
マキ「…僕は精一杯自分でいたつもりなんだ…♪、だけど…百目鬼さんとの関係は悪くなる一方で…、僕がヘラヘラしてた時の方が、ずっと上手くいってた。百目鬼さんには、僕は重たかったんだ♪。百目鬼さんのせいじゃ無い…、僕ってやつは、面倒くさい子なんだよ♪僕は…所詮……」
言いかけた言葉は、続かなかった。
マキ「修二みたいに…狂うほど愛されたかったなんて…思っちゃったから、バチが当たったんだ…」
微笑みながら肩を震わすマキを、そっと抱きしめると、マキは僕の胸に身を預けてくれた。
どちらか一方が悪いわけじゃない。お互いに抱えてるものがあって、お互いの歯車が上手く噛み合わなかっただけ…
僕ちゃんには、二人が凄くお似合いに見えるのに…。
お互い、頑固で意地っ張りで、言葉を飲み込んで溜め込むタイプだから…。まったくもう…
そもそも最初が肝心だったよね。百目鬼さんが気持ちを言えば、きっと良い方向に向くのに…。本来、百目鬼さんはむつタイプだからガンガン言ったり行動したりするのに…、だけど百目鬼さんには変なストッパーがあって時々言わなきゃいけないことが言えなくなる。百目鬼さんも、僕ちゃんと同じで自分の性壁を誰にも相談できなくて、辛い学生時代を過ごした。きっとその時の我慢が、麻痺しちゃってそれが普通になっちゃてるんだ。
マキはそれに気が付いて、上手くガス抜きしてあげてたんだろうけど、百目鬼さんはそれすらも、乱暴な行為として悩んだんだね。
マキ「…修二、迷惑かけてごめんね」
修二「何言ってるの!迷惑じゃない、友達だろ!マキがココに来ないって言ってても、僕ちゃんとむつと華南は引きずってでも連れてきた」
マキは親密な人との付き合いを避けてる傾向がある。もしかしたら、避けてるんじゃなくて、知らないのかも。
そんなとこまで百目鬼さんと一緒。だから、お互いの気持ちが上手く重なれば、絶対に分かり合えるはずなんだ。
修二「こういう時は、ありがとうって言うんだよ」
それを聞いたマキは、僕ちゃんの腕の中で目を丸くして不思議そうに驚いた。
マキ「奏一さんと同じことを言うんだね…」
修二「兄貴の教えですから」
目をパチクリするマキにニッコリそう言うと、マキは僕の肩に頭をポテッと乗せる。
マキ「兄弟ってそうゆうもの?」
修二「さぁ、色々じゃない?むつも華南も兄弟いるけど、むつのお姉さんは女王様みたいだからむつとは愛情いまいち、でもお姉さんはむつのこと好きだし、むつもお姉さんを嫌いじゃない、下の妹と弟はその分大人しいかな。
華南のところは四人兄弟で仲は良いよ。みんなタイプは違うけどね、長男はエリートで、次男は研究大好きの遊び人で、華南はあんなんだし、弟の北斗くんは華南に少し似てるけどコスプレ好きだし。でも華南のところは、みんな優しいよ」
マキ「そっか…賑やかだね。僕も賑やかな兄弟欲しかったな…」
修二「百目鬼さんの所も兄弟いるんだよ。相手の連れ子だけど」
百目鬼さんの家庭は、離婚して長い間母親が1人で定食屋を切り盛りしながら百目鬼さんを育ててたけど、百目鬼さんが中学生の時、母親に良い人が出来て、その相手の連れ子が6人も居て、一人っ子だった百目鬼さんは、思春期真っ只中に弟と妹とが6人も出来るかもしれなくて。百目鬼さんは母親の苦労を知っていたから反対も反抗もしなかったけど、戸惑いを隠せず、よく兄貴に相談してた。
でも、百目鬼さんは自分思ってるより面倒見良いから、ちゃんと弟と妹と上手くやってた。口下手だから、お喋りはあまりしないけど、必要な時はいつでも力になるし、面倒も見るし、一人暮らし始めてからはあまり会わないみたいだけど、今でも仲はいい。
マキ「うん。聞いたことあるよ。姪っ子甥っ子がいっぱいいるって言ってた」
修二「兄貴に、百目鬼さんちの定食屋に連れてってもらってるんでしょ?誰か居た?」
マキ「うん、みんなでお店手伝ってた。百目鬼さんのお母さん、凄く優しい笑顔の人で、百目鬼さんと同じ味のご飯だった」
修二「昔は、百目鬼さんも厨房手伝ってたって兄貴が言ってた」
マキ「奏一さんが色んな話してくれた。昔の写真も見せてもらったよ、2人がバリバリの時の、可愛かったなぁ、ふふふ♪」
百目鬼さんは昔に比べたら今の方が丸くなった。だから、現役の時はかなりヤバイ目つきだったけどな…
マキ「…奏一さんって、素敵な人だよね」
マキはそう言うと、お風呂の中にトプンと潜って、すぐに顔を出した。
マキ「ふやけちゃいそうだね。もう出ようか♪」
修二「マキ。百目鬼さんのことは…」
マキ「…」
マキは、無言で微笑んだ。
その複雑な笑顔はどちらの意味なのか…
「諦めない」と言えば、胸の痛みが続く
「諦める」と言えば、その苦しみにとどめを刺さなければならない。
僕ちゃんは、むつに長年片思いしてきた時、何度も引き裂かれそうに苦しんだ。でも、それは、相手に拒まれた苦しみじゃない。マキはきっと、もっと苦しい…。
2人が、僕と関係ないところで出会ってたら上手くいったんじゃないかって思わずにはいられない。
マキと僕ちゃんが関連付かなかったら、百目鬼さんも、もう少し素直でいられたのかな?
もう、2人は戻れないのかな?
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