アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
〔裏番外〕狂愛♎︎<純愛4
-
腕時計は文字盤が青く、深みのある青。夜空の様にキラキラと金星が散りばめられ。文字盤の上には、時間、日付、がわかる様になっていて、小さな円が二つ、片方は月がわかる様になっていて、真ん中に日にちが表示されている。もう一つは、ストップウォッチ。
時計の円枠は、藍色に時間の数字がふってあり、さらに金枠の円。ボディーは黒、ベルトも黒。
百目鬼「まさか…、俺のやった腕時計と似せて作ったのか?」
姫香「え?」
思わず言葉にしてしまったら。店員さんはにっこり微笑んだが、姫香さんは驚いて目を丸めた。
店員「はい、こちらは、百目鬼様に頂いた時計を参考に、もう少しシックな大人の男性向けに、とのことでしたので」
店員さんは、マキを女だと思っているのだろう、俺の発言に全く驚かず、むしろ喜んでいて。見本として俺のやった腕時計の写真を出して比べる様に説明し出した。
店員「色は少し暗めに抑えた物を選ばれました。文字盤の石はお揃いで、こちらの時計もラピスラズリを使っています。幸運を呼ぶ石といわれております。中でも濃い色をご用意しました。普段仕事でお使いいただけるように、デザインはシンプルに、強度は申し分なく、防水でございます。どうぞ、腕にはめてみてください」
ラピスラズリの石は、藍色に近い様な深いブルーで、その中に金のキラキラと極小の粒が、まるであの日に見た、夜空の満天の星の様に光っていた。
その腕時計は、俺のために作ったように、ぴったりと手首に馴染んだ。1番最初の穴が、手首の長さとぴったりと一致していた。
まさかとは思うが、俺が寝ている間に手首の長さを測ったんじゃないだろうか?
店員「良かった。ピッタリですね」
店員も、その腕時計が俺の手首に合ったのを見て、俺には送る品だと確信したようで、ホッとした様だ。
店員「そちらの腕時計は、裏にお名前が印字されております」
腕時計を外して裏返して見てると、裏には、『Jin.D』と刻まれていた。
まぎれもない、俺への贈り物だった。
マキが…俺に…〝腕時計〟を…
〝腕時計〟を…
いつかのマキの言葉が、頭の中をよぎる。
マキはあの時、照れた様に微笑みながら、優しい笑顔ではにかんだ。
『時計はね、良いの買えば一生物になるし、〝あなたと同じ時を生きたい〟って意味もあるんだよ♪』
マキは、その意味を知りながら、俺にこの腕時計を買った…
という事は…
マキは…
マキ『百目鬼さんと、同じ時を生きたい…』
と、その思いを込めて買ったって事なのか??
………なんだ…?…
胸の奥が重い…
何かで鷲掴まれた様に胸の奥が苦しい…
マキ『百目鬼さんの側に居させて…』
そんな切ない目で俺を見るな…
マキ『百目鬼さんが一緒にいてくれるだけで十分だから…』
どうしてお前は…
マキ『百目鬼さんは、そうやって苦しんで努力して。変ろうって一生懸命な貴方だから、僕は、大好きなんだよ』
どうしてお前は、俺なんかを…
その細い腕で、俺なんかを包み抱こうとしてる?
ーパリーン!!
贈ったはずの腕時計は、俺が壊した。
お前を縛りつけた結果、お前を不幸にしたから壊したのに…
奏一『マキ君の全部を知りたい、見せろって言ってるけど、あんた
本当に〝マキ君を見てるか?〟
マキ君が本当の自分を見せたとして、マキ君が求めたことに答えてやれるのか?』
『本当に、〝マキ君を見てるのか?〟』
本当のマキ…
俺は…見せてもらえてない…
あいつは嘘ばかりで…
いつも言葉を飲み込む…
奏一『本当に?』
…。
奏一『マキ君の望みは何?』
あいつは…
マキ『僕は、贅沢なこと言わないよ。百目鬼さんと一緒にいられるだけで幸せだから…』
そんな事しか言わない…
あるだろもっと…
本当は人一倍寂しがりやで…
人一倍傷つきやすいのに…
ヘラヘラヘラヘラ、本当の気持ちを呑み込んでばかりで…
マキ『僕の望みは…』
百目鬼『面倒くさいんだよ。だから捨てる。お前なんか、要らない』
百目鬼『こんな物のために、身売りするなんてアホのやる事だ!!』
マキの本当の望みは………
目の前には、マキが俺へ送ろうとしていた、青い文字盤の腕時計。
腕時計には、その思いが詰まっている。
マキの本当の望みが…
店員「百目鬼様、箱にメッセージカードが添えてあるのでご覧ください」
百目鬼「えっ…」
店員が白い手袋で、箱の中に添えてあった小さなメッセージカードを俺に渡してきた。
中を開くと、マキの直筆のメッセージが…
〝百目鬼神さん、お誕生日おめでとうございます。百目鬼さんがこの世に生まれ出会えた事に感謝を込めて…。また、来年もお祝いさせて下さい。〟
それは…
信じられない様な言葉ばかりだった。
そして、俺が…、1番欲しかった言葉でもあった。
〝百目鬼さんがこの世に生まれ出会えた事に感謝を込めて〟
俺が…生まれたことを感謝?
俺なんかが…、修二や奏一を傷つけた俺なんかが生まれたことを?
感謝だって?
泣かせてばかりの俺に、感謝だって?
幼い頃から自分に違和感を持ち、片親だからと言われない様に生活してきた。だけど中学の時、親友に性的興奮を覚え、好意を抱いてしまった自分に気がついたと同時に、泣かせてやりたいという欲求にも目覚めた。
俺の性的興奮は、泣いてすがる様な、泣きながら俺の事が好きだと言う様なシチュエーションに萌えた。
自分が異常なんだと何度も否定したが、親友への思いは膨らむばかり。男へ恋してるだけでも異常なのに、泣かせてやりたいと思っているなんて、絶望的だった。
そうして殺した親友への初恋。だが、そこからも、気になるのはみんな男。そして必ず泣かせることを想像した。こんな俺は生きていていいのだろうかと悩んだ事もある。
普通の恋愛も出来ず、性癖まで歪んでいた。
心を通わせる様な恋愛はした事がない。
自分の性癖をどうにかする事で手一杯で、初めて男を抱いたのは、バーで知り合った年上のMっ気のある人だった。
酷いやり方で抱いて、相手は喜んだが、自分は初めて味わう高揚感と快楽と絶望を知った。
誰かに恋する事はあっても、決して口にはしなかった。好きではない相手にあんな事をして泣かせるなら、好きな人にはもっと酷い事をしそうだったから…
誰かに…必要とされたかった…
誰かに…好きになってもらいたかった…
自分の存在の意味を知りたかった…
学生の頃、何度も何度も問い続けた。
俺は、何のために生まれてきたのか…と。
百目鬼「どうしてあいつは…、俺の欲しい言葉ばかり知ってるんだ…」
修二への呪縛の答えも…
俺の性癖の正体も…
俺の存在価値も…
マキが、その答えを導く
姫香「……それは、マキちゃんが百目鬼さんを大好きだからじゃないかな」
姫香さんは、俺とマキが男同士であるという事に気付いたはずなのに、そう言葉にした。
その瞳は、必死に俺に語りかける。
その腕時計、受け取ってくれますよね?って。
俺がこの腕時計に対して嫌悪したり、否定的じゃない事から、別れたマキに何かしら気持ちが残ってると、女の勘なんだろう。腕時計に驚きながら、うれしそうにしてるようにでも見えたのかもしれない。
〝なんとかなりますよね!〟
と、必死な視線で俺を見つめてる。
メッセージには、もう一つは気になる事があった。
〝また、来年もお祝いさせて下さい〟
って、今年を祝いながら、来年の事。
それはまさに、この腕時計に込めた願い事なのだろう。
腕時計の持つ意味は…
〝貴方と同じ時を生きたい〟
そして…
〝独占欲〟
マキの望みは…
『俺の、側に居たい…』
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
758 / 1004