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〔裏番外〕狂愛♎︎<純愛17
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奏一はマキの隣にどっかり座り、ポケットティッシュを取り出して、マキの顔を優しく拭いた。
奏一「百目鬼、お前って奴は、泣いてる子の涙を拭いてあげる思いやりは無いのか?」
奏一は呆れたように俺をチラッと見ると、マキの涙の跡のついた頬を優しく拭きながら柔らかく微笑みかける。
マキ「あ、ありがとう」
奏一「マキはまつ毛が上も下も長いから、目元にいっぱい涙が溜まっちゃうんだね」
マキ「フガ…」
奏一「泣きすぎで鼻が赤いね」
ティッシュで鼻を摘ままみクスッと笑う、それにつられてマキの顔が綻ぶ。
ぐっ…ぅぐぐぅう……
グッと奥歯を噛み締め、ドロドロチクチクする感情に悩まされながら、ふつふつと湧き上がって来るものを抑え込むのが精一杯。
奏一はマキを優しく撫でながら、柔らかく微笑んでマキを安心させてやってる。
俺の理想そのものを、奏一は〝普通〟の事のように当たり前にやってる…。
奏一「ちゃんと話しは出来てる?何で俺の話になってるのかな?」
マキ「そ、奏一さんもグルなの?」
奏一「グルとまではいかないかな。俺は応援してるというより、怒ってるからね」
マキ「え?」
奏一の言葉に、俺は頭より先に体が反応した。罪悪感と恐怖で体が強張る。強姦魔の俺が、マキを好きだなんて許されるわけない…
反射的にそう思った。
マキ「何を怒ってるの?」
奏一「そうだね。俺はね、常々何事もやると決めたら根性据えてやるべきだと思ってるんだ」
奏一は俺の方ではなく、マキに説明するように言いながら、その言葉はどれも、俺に向かってきていた。静かに優しく語りながら、奏一は物凄い怒りを込めている。
奏一「人に反対されたからって折れちまうなら、初めっから手ェ出すなって思うんだ」
奏一は、マキの顔を拭き終わると、マキの肩を抱き寄せて話を続ける。
話は耳に入ってきてるが、俺は、奏一かマキを抱き寄せてる手にイライラしてしょうがなかった。そんな事を思うなんて…、とも思うが、湧き上がってくるものをどうする事もできない。
奏一「むつと華南が、修二と付き合ってると俺に言ってきた時。俺は断固反対した。三ヶ月以上突っ撥ねだけど、あいつらはしつこく俺に〝付き合うのを許して下さい〟と言いに来た。その時、もちろん修二にも、むつと華南とは離れろと言ってやった」
マキ「…でも、認めてあげたんだよね?」
奏一「ふふっ、認めたも何も、修二も、むつも華南も、〝別れる気は無い、認めてもらうまで何度でも話しをしに来る〟って啖呵切ったからな」
奏一は、そういうところが大人だ。
大事に大事にしていた弟がゲイだと知った時や、可愛がってたむつや華南が弟と…なんて、そのショックは計り知れないだろう。だが、まず相手の気持ちになって考える。そして自分の感情に流されず考える事が出来る。
奏一「男同士だとかそれ以前に、覚悟の無い奴は俺は許さない。あいつらは俺が反対しても一緒にいることを選んだ」
奏一のような男に、なりたかった。
賢史「おーおー。今度は奏一お兄さんとイチャイチャしてんの?女王様」
その場の空気なんかお構い無しの賢史が、飲み物を持って帰ってきた。
マキにホットココアを出しながら、相変わらず下品にニヤニヤしてやがる狼賢史。
賢史「まさかマキと奏一さん付き合ってんの?」
百目鬼「そんな訳ないだろ!」
良い加減にしろよ!奏一にそういう話題を振るんじゃねぇ!冗談でも男同士なんて奏一にはデリケートな問題なんだよ!
奏一さん「どうして百目鬼が答えるの?俺とマキが付き合ってるかなんて、あんた知らないだろ?」
サラッと言われて天地がひっくり返るほどの衝撃が俺を貫く。
百目鬼「ハッ?付き合ってるのか?」
奏一「何慌ててんの?気になる?」
百目鬼「いや、ぁ…奏一、お前はノーマルだろ?」
奏一「まぁ、ノーマルだけど、マキならアリだね」
百目鬼「ハアッ!?」
目ん玉溢れそうなほどの驚きに、奏一は当たり前みたいな顔を崩さない。
マジか?いやっ酔ってるんだろ!?
ただでさえ、大柄でスケベで下品にニタニタするこげ茶の狼がマキを狙ってるのに。
奏一が白銀の狼に見えてきた。
白銀奏一『泣かないで、俺が慰めてあげる』
羊マキ『はぁん♡カッコ良い♡♡』
ガァアアアーー!!!
そら、奏一はカッコ良かろう!!いやッでも!奏一はノーマル!
羊マキ『奏一さんが望むなら僕女の子になる♡良い子にする♡』
マキならやりかねないぃ!!マキのあの色気ならあり得る!!
マキを狙う狼が増えたぁぁあ!!
賢史「ちょっとちょっと、付き合ってはないだろ?マキちゃん驚いた顔してるし、それに俺が今口説いてる途中なんだけど」
百目鬼「冗談はよせ!」
賢史「いや、本気だけど、だってマキ様と一発ヤッてみてぇーし」
マキの背後にスケベ狼賢史。
隣にはカッコ良い白銀の狼奏一。
賢史「ハハッ、ひっでーツラだな神。女王様に骨抜きにされてそのザマか?そんなにマキ様のセックスは良かったか?」
百目鬼「黙れ」
賢史「だからお前はやめとけって言ったのに、あんな魔性を味わったら、後々後悔するって言ったろ?神は恋愛慣れしてねぇーんだから、魔性に毒されるぞって。でも良かったじゃんか、目が覚めたんだろ?」
百目鬼「その汚ねぇ口を閉じろ賢史!お前にマキの何が分かる!!」
賢史にこいつの何が分かる!?
マキは、寂しがりやで、泣き虫で、大人ぶって嘘ばかりで…
百目鬼「こいつは魔性なんて大層なもんじゃない!…ひ、独り寝のできないただの甘えたがりのガキだ、お前の好みじゃ無い」
賢史「はあ?」
百目鬼「マキはヘラヘラしてるけど、本当はヘラヘラなんかしてない、余裕ぶってるだけの超ネガティブだ、その癖弱音の一つも吐けないし、余計な事に頭使ってばかりだから、結構大食いな癖に身になりゃしないし、甘いものばっかり食うし、食うばっかりで料理はビックリするほどできないし」
だから気づくべきだった。
もっとちゃんと察してやるべきだった。
泣くのや弱音を吐くのを頑なに嫌がるのも。
甘える真似はするのに本気では甘えられないのも。出かけるたびに行った事ないとか、見た事ないとか言うのも。外食より俺の手作りご飯を食べたがるのも。隙あらばSEXばかりしたがるのも。
そうしちまうのは、全部、マキがそれしか知らないからだ。
マキは愛人の子供で、その叔父の清史郎に育てられ、でもその清史郎も仕事でいない時の方が多くて、愛情に飢え、叔父の清史郎にその愛情を求めた。清史郎はマキに愛情を注いだが、それは、マキを通して別の人間への愛情で、マキは偽物の愛情を自分のもののように二番目でも良いと諦めた。
マキは、1番に愛される事も本気で向き合う事も〝知らない〟。
百目鬼「お前には向かない、興味本位で近づくな!手を出すな!」
賢史「………。ブッ!ぎゃははは!」
百目鬼「なにが可笑しい!?」
賢史「ハハッ、全部」
百目鬼「ア!?」
賢史「お前は相変わらず下手くそだな」
百目鬼「何が?」
賢史「お喋りが」
百目鬼「ア?」
賢史はヒーヒー腹を抱えて笑い、涙まで出てきてる。
俺の怒りのボルテージはMaxまで来て爆発寸前。
賢史「お前の言葉はいつも三回転半ひねってあって誰も解読できやしねぇよ。神よ、お前〝モテる男〟の本でも読むか俺を見習えよ」
百目鬼「三回転半ってなんだ!誰が貴様のような取っ替え引っ替えを見習うか!」
賢史「お前のやってることは、アレだな、小学生が女子のスカートめくって泣かせるのと同じだな」
なんだと!俺は女のスカートなんか興味ねぇ!
奏一「あ〜、確かに」
反発していた俺に、奏一の冷ややかな声が響いてくる。
奏一は静かな表情でマキの肩を抱きながら俺の方に冷ややかな視線を向けてきた。
賢史に言われた事を俺は感情的につっぱねたが、奏一に言われてしまうと、そうなんだと反省せざるおえない。
俺が押し黙ると、賢史は俺が奏一に逆らわないのを良い事にさらにベラベラ喋り出す。
恋愛偏差値小学生以下だとか、そんなんじゃいつまでたっても、まともな恋愛出来ないとか…馬鹿にしてきやがる。
百目鬼「ふざけんな、お前の興味はエロの部分だけだろ」
賢史「あーあ、神は言葉のバリエーションさえしっかりありゃそこそこイケてんのに。いつも口で損するよな、今だって気の利いたことの一つも言えりゃ、マキちゃんが『きゃっ♡百目鬼さんカッコイイ♡』って惚れ惚れするシチュエーションだったのに、カッコ良くフォローするどころか貶しちゃうんだもんよ」
百目鬼「お前、さっきっから何が言いたい」
賢史「いやぁ…、言いたい事があるのは俺じゃなくて…」
人を小馬鹿にするような態度だった賢史の瞳は、一瞬で、鋭い真剣な眼差しに変わった。
賢史「お前だろ?」
百目鬼「ッ…」
賢史「さっきっから、ただでさえ口下手なのに、遠回しに色々言ってみたり、お前の場合ストレートに言ったって一回転半くらい言葉が捻くれてんだから、そんな遠回しに諭すような芸当出来るわけねぇだろ」
百目鬼「…俺は…」
賢史は見透かしてる。
いや、長年の付き合いから、俺の癖を知り尽くしてると言った方が正しい。
賢史「俺は元々、お前とマキ様をそばに置いとくのは反対なんだ。今だってそう思ってる。マキみたいなタイプはお前の手に負えない。俺みたいな大人の男が相手じゃないと」
百目鬼「お前じゃ、マキの相手は務まらない、お前は釣った魚に餌をやらないだろうが」
賢史「そんなことないさ、職業柄不規則でなかなか相手してやれないだけだ」
分かってる。
賢史は賢史で、どんなに真剣に恋愛しようにも、忙しいさや急なドタキャンでなかなか長続きしない。
賢史はチャラいが、気は利くし洒落た事もできるし、懐に入れたやつに対してはどんな事をしても守る正義感もある良いやつだ。
それでも…。マキは渡せない。
百目鬼「お前、いい加減にしろよ」
賢史「いい加減にするのはお前だよ。俺の自由とマキちゃんの自由に首突っ込むなよ。マキちゃんが俺に口説かれて俺のもんになるのがそんな悔しいのか?」
百目鬼「お前とマキはタイプが合わない、お前の性格じゃ、マキに寂しい思いをさせる」
賢史「お前なら出来たのか?」
百目鬼「俺は、縛り付けるから窒息させる」
マキ「まだ言ってるの!?」
突然マキがブチ切れた。
マキ「僕はそんなヤワじゃないし!百目鬼さんはもう大丈夫だって言ってるじゃん!」
百目鬼「うるさい!お前は何もわかってない!」
マキ「分かるわけないだろ!百目鬼さん何にも言わないじゃん!」
百目鬼「言ったらお終いなんだよ!言ったら何もかも終わっちまう!」
マキ「言ってもみないで何言ってんの?言ったくらいで終わるわけないじゃん!百目鬼さんが何言ったって、大丈夫だよ!言ってみて一緒に考えればいいじゃん!僕だけじゃない!百目鬼さんの周りには、百目鬼さんのこと親身になってくれる人がいっぱいいるじゃん!」
百目鬼「…」
マキ「百目鬼さん…」
百目鬼「…俺は、お前が思ってるような優しい男でもないし、お前を大事に出来たわけでもない、俺は変われなかった…」
マキ「…」
百目鬼「………………俺は…、
俺は、お前を監禁したかった」
騒がしかったはずの店内がいつの間にか静まり返っていた。
予想通り。
その場が凍りついた。
マキは、俺の言葉に驚きのあまり言葉を失い目を見開いていた。
それも、予想通りの反応だ…
監禁したいなんて言われて喜ぶ奴はいない。
ほら、終わっちまったろ?
全部壊れるんだ…
俺の望みは全てを壊す。
そして、俺は、この言葉を口にしたら、裁きを受けて抹殺されると思っていた。
しかし、その俺を裁ける人物は、俺の言葉にリアクションする事はなく、静かな眼差しで俺を見据えていた。
弟を監禁され、過去の俺を許す事はできないと言っていた奏一。
俺の予想は、ハズレたのか…
奏一はジッと俺を見るだけで、その胸の内は表情に出てない…
マキに嫌われ、奏一に半殺しにされると思っていたのに、奏一は動く事なく、真っ直ぐ俺を見据えている……。
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