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〔裏番外〕狂愛♎︎<純愛34
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〔裏番外〕狂愛>♎︎<純愛
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出会いは大事だ……
『神よぉ、自分の存在価値を評価するのは他人かもしれねぇーが、価値を磨くのも高めるのも自分だ。自分で価値を下げるな。お前の価値を、切れ端のゴミだと言う奴らは言わせておけ、お前が腐らないで成長すりゃあ、切れ端のゴミじゃなく、希少価値の高い存在だと言わせることもできる。忘れるな、人は幾らでも変われる、存在理由なんて自分で決めろ、俺はお前をかってんだ』
昔、朱雀の総長に言われた言葉だ。
腐ってた俺を拾ってくれた。
その朱雀で、俺はいい出会いも悪い出会いも経験して…
奏一と出会った。
奏一も、悩みを色々抱え、発散できずに重く腐っていかないよう自分と戦い尖っていた。
誰も手を付けられない狂犬のような一匹狼。
谷崎亮司が俺に紹介したのが切っ掛け。尖ってた奏一の教育係を任され。
1人でなんでもやろうとする奏一をほっとけなくて、最初はウザがられたが、俺なりに奏一と向き合った。
少しづつ変わる奏一を、カッコよくて可愛いと感じてると気付いた時、俺の気持ちは止められないところまで来てた。気高く凛とした奏一、みんなに慕われる奏一、弟を溺愛して家族に優しい奏一、年下の危うさもありながら大人びたしっかりした所も持っていて…。
俺もそんな風になりたいと憧れに似たものはあった。
奏一が光り輝く存在になればなるほど、俺は闇を濃くしながらかけ離れた存在になる気がした。
そん時、修二と出会った。
奏一似の端正な顔立ち、性格は大人しいが、奏一似の芯のある修二。しかし、どこか儚げで影を持っていて、修二なら、手が届くと思った。
結果、修二を傷つけ、その大きな影に潜む悩みが、自分と同じものだと知った時。暴走は停止し、俺は事の重大さに気がついた。
修二に償うつもりで、むつの話を聞いた。聞けば聞くほど、修二の儚くも健気で真っ直ぐな性格に惹かれた。
修二を手に入れたくて、人生で初めて〝好きだ〟と告白した。俺の告白は拒まれ、俺は身勝手にキレて暴走した。
何もかも失った。
憧れと可愛さに襲い掛かりそうなほど好きになった奏一と。
初めて俺を理解してくれ、人生で初めて気持ちを伝えたほど好きだった修二。
好きな人も…
友達も…
仲間も…
全て…
賢史とは近ず離れず。
数年して杏子に出会い、檸檬にも会った。
ボロい空き部屋を借り、探偵事務所を作り、菫に出会った。
数年して探偵事務所が今の場所に移ってから、矢田を拾った。
そして修二と再会。
ほどなくしてマキと出会った。
修二への再熱。そして懲りもせず気持ちを押し付けた。今度は間違えないと思いながら、結局修二にとっては迷惑以外の何者でもない。
恋心が焼き尽くした後に残ったのは、罪悪感と愛しさ。
マキは、その焼け野原に舞い降りて、馬鹿みたいな事ばかり言った。
焼け野原は焼ける前、『ココはいっぱい素敵な草木や花があったんだね』…と。
荒れ果てた雑木林だったのに…、破壊して奪うばかりのこの気持ちの根本は、修二を〝好き〟だったってことを思い出させ、ストーカー俺を一途なんだねと言いやがった。
化けもののように膨れ上がった狂った気持ちを、マキは1つ1つ元がなんだったか紐解いた。
俺は、マキが怖かった。
このガキは何を言っているんだろう。焼け野原にしたのは俺なのに、マキは、『きっと今度は素敵なお花畑になる』と言いやがる。
マキ『百目鬼さんなら、次に好きになる人を大切にできるよ』
マキと両想いの幻を見て、その幻は理想そのもので……
俺はまたしても、縋るような気持ちが生まれた。
『こいつなら、俺をわかってくれるんじゃないか…』
それは、修二に感じた気持ちと同じ。俺はマキに苛立ちながら、その仏のような強すぎる存在感に圧倒され恐れ、求めた。幻がそうさせるんだと言い聞かせ、修二への気持ちの下からジワジワ気になりだした事を無視した。
だって馬鹿だろ。
相談に乗ってもらった相手を次から次に気になるなんて…
先生様の家の前で、マキと泉に会った日。馬鹿みたいにマキを気にしてた自分がいた。
修二への気持ちもありながら、強すぎるマキの存在を無視しきれなかった。
突っぱね、マキを傷つけて遠ざけた。
俺はまだ、修二が好きだ。犯した罪を償ってない。マキを気になるなんて、そんなの大罪だ。
1年半後、なんの悪戯かマキと再会した。
1年半の間で、修二への気持ちを消化して行くと、時々夢にマキが出てきてた。
過去の思い出だったり、修二へした仕打ちだったり、俺の夢は記憶を題材にしたものが多く、その中に、たった一晩一緒に頂けのマキが出てきた。幻のマキは、俺を抱きしめ、あの心底俺を好きだという熱い瞳で言うんだ。
マキ『もっと愛して、僕はそれ以上で愛してあげる♪神さんが困っちゃうくらいいっぱいいーっぱい大好きだから♪』
悪戯に可愛らしく艶やかな笑顔は、俺の心臓を鷲掴みにしていつも苦しめ焦がれさせる。
俺の理想。
俺だけを好きで、俺の全てを受け止めることの出来る。
都合のいい夢。
打ち砕いて無くなればいいと、乱暴に抱いた。だが、マキはあの妖艶な笑みで全て受け入れる。俺の凶暴さも狂愛も、抱きしめてしまう。揺籠のように。まるで…
目が覚めた時、消えるはずの幻が、俺のベットの上で拘束され服を引き裂かれグッタリと横たわっていた。
現実だったと知って血の気が引いた。
同時に、マキの首から俺の買ったキーホルダーが消えていたのに気がついた。
…ああ、麻疹が治ったのか…と、幻は消滅していたと知った。
あの時、再会しなければ…
マキが俺を好きじゃなくなってれば…
インフルエンザにかかって引き止めることにならなかったら…
キーホルダーをまだ大事にしてたと知らなければ…
マキの涙を見たくないと気づかなければ…
マキと出会わなければ……
こんなにマキを傷つけて好きになることも無かったのに……
俺にとってマキは、俺の価値を高め必要としてくれる人間だ。俺を希少価値の高い存在だと言ってくれる。俺にとってマキは、かけがえのない存在。
だが果たして、求めて壊すばかりの俺は、マキにとって良い存在だと言えるのか?
修二が、むつや華南と居て成長し強くなるように。俺はマキを支え、マキを満たすことが出来るのか?
修二のように、満ち足りた笑顔で真っ直ぐ伸びる若木のように。
マキは、俺を好きだと言ってくれる。だが、俺の愛情が、マキを根腐れさせ枯らしてしまわないだろうか?
俺が〝好きだ〟と伝えた瞬間から、俺のマキを独占したい気持ちは止まらない。
キラキラ輝くマキの光を奪うことにはならないだろうか?
焼け野原は花畑になるだろうか?
マキを思って芽吹いたこの気持ちは、マキを笑顔にする花になるだろうか?
不安に揺れる瞳が絞り出した声が問う。
マキ『恋は、芽生えましたか?』
踏みつけて、見ないようにしていたこの恋の芽生えは、真っ直ぐ育つだろうか?
俺とマキの出会いは間違いにならないだろうか?
俺はマキを大事にできるだろうか?
危ういマキを支え、守ることが出来るだろうか?
俺の存在は…
マキのとって………
『人は幾らでも変われる…』
より良い存在に変われるだろうか?
マキ『僕は、どんな百目鬼さんも好きだよ。不器用で、優しくて、変わろうと努力して戦ってるのをカッコ良いと思う。僕は、百目鬼さんが大好き』
マキ『……一瞬でも……僕を好きだと思ったことはありますか?』
マキ『…捨て…ない…で…』
マキ『好きです…』
いや…
変わりたい……
何もかも、俺の凶暴さも、俺の目指す普通も、俺の理想も、世間の常識も…全部一回忘れて…
マキにとって出会ってよかったと言ってもらえる存在になるべきだ……
マキの理想になるなんてそんな器用なことはできないから、マキの理想でも、俺の理想になるのでもなくて。
マキと一から…
マキを笑顔にして、その危うさを取り除き、満たしてやれる存在になりたい。
いつか、何年か経ってからで良いから、俺が修二に感じたような、修二はむつや華南と出会って良かったんだということを。
今度は別の誰かが。満たされたマキを見て、思ってもらえるように。
『マキは良い人と巡り会ったんだな』
と、マキが言われるように…
俺は、変わる……
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーキキキィ…
闇の中で
傾きを変える音が響いた
その僅かな音は
誰にも気づかれず
本人すらも気づかず
その傾きは徐々に大きくなる
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