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ケダモノ×お酒とヒツジさん
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【彩side】
客間は電気が消えて暗いが、開けっ放しのドアから廊下の明かりが入り込み、私が修二を抱きしめているのがよく見えたんだろう。
奏一は眠たそうな目でシパシパ瞬きながら、こらすように鋭く細め、修二を抱きしめてる私を睨む。
「何してる」と低い声で問われ、冷静に見てもこの状況は誤解されるだろうし、もしかしたら、良くない過去の場面を連想してしまうかもしれないと背筋が冷えるのを感じていた。
忽那「…何って、何してるように見えます?」
心の中は穏やかではないが、いつもの穏やかな口調で振る舞う。
私の腕の中で、修二君が悪夢のことをバラされるんじゃないかと身を硬くしてるのを宥めるように背中をさすってあげながら。平静を装って問い返す。
奏一は苛立った様に眉を顰め、私が問い返した意図を汲み取ることはなかった。
奏一「…だから、なんでそんな事をしてる」
アルコール臭を漂わせながら、完全に座った瞳。
奏一がこんな風に凄むと、どんな強い男たちもその圧に押され、雑魚どもは逃げ帰る。
これは、完全に誤解してる。
忽那「奏一。私は、貴方に睨まれる様な事をする男だと思われてるんですか?」
私の言葉に、奏一はハッとし。同時に私の腕の中の修二も反応して私から慌てて離れた。
修二「ちょっ、違うよ兄貴!アヤちゃんは…」
奏一「違っ!修二ッ俺はッ!…」
誤解を解こうとした修二と。
自分の発言が差別用語になったのではと慌てる奏一。
2人は噛み合わない弁解をそれぞれ口にしたが、2人の心配してることは全く別の事。
とりあえず落ち着かせる様に2人の間に入ると、言葉が途切れた途端冷静になった奏一が口元を押さえてうずくまった。
奏一「ウッ…」
忽那「いきなり大きな声出すから、吐きそうならトイレに」
移動に賛同する様にコクコク頷く奏一を支えて起こしたら、心配した修二がついて来ようとしたが、奏一が激しく拒んだ。
全く、こんな時まで弟にカッコ悪いところを見られたくないと思うなら、もう少しお酒を控えれば良いのに。弱い癖にストレス発散にお酒に逃げるなら、もう少し仕事もプライベートも肩の力を抜けばいいのに。
修二を客間に残して、トイレに移動したが、奏一は、私の前では吐けないと私を追い出そうとする。
仕方がないので一旦トイレから離れて、客間の修二に「あとは私が面倒見るので寝ていて下さい。先ほどの秘密は厳守しますから信じて」と伝えた。
修二は頷き、信じてくれたようだが。
修二は頭が良い。私の方の秘密に気づくには先ほどの言葉で十分だったようだ。
修二「…あの…、アヤちゃんはもしかして兄貴を…」
不安気な声。
修二の方ももしかしたら過去の嫌な記憶に結びついてしまったかもしれない。
忽那「慕っていますよ」
修二「……」
忽那「不快にさせてしまいましたか?」
修二「えっ、ぁ…いえ、その…」
忽那「安心して下さい。私から手を出すことはありません。私は、あなた達兄弟のことを良く知っています。やっと平穏が訪れたのに、それを壊すようなことはしないし望んでない。私の望みは、奏一と修二君の幸せです」
修二「………僕も、兄貴には幸せにはなってもらいたい。やっと僕の面倒な事から解放されたんだから、もう僕も成人するし、僕の面倒もお金も時間もこれ以上使って無駄にして欲しくないから、兄貴には自分の幸せを探して欲しいから…」
忽那「修二君。奏一に聞こえたら怒られますし、奏一が泣いてしまいますよ。奏一は一生あなたのお兄ちゃんです。修二君が人生のパートナーを見つけたから父親としての役割は終わっても、お兄ちゃんとして修二君の面倒はずっとみますし、それが奏一の幸せです。修二君の幸せのためにもいつまでもむつや華南を威嚇してばかりいないように少しは弟離れが必要でしょうが、修二君という弟がいることは、奏一にとってとても幸せなことです」
修二君の気持ちは痛いほど分かる。
別に自分を卑下したくてそんな言い方したんじゃない。奏一を苦労させたから、自分のせいで色々迷惑かけたし自分に時間を使わせてしまったから、修二君は本当に切実に奏一の幸せを願っていると言いたかったんだ。
私の一時の感情で、奏一を傷つけるようなことをして欲しくないと、懇願してる。
複雑な表情の修二君に近づき、修二君の揺れる瞳をしっかり見つめ、そっと頭を撫でた。
忽那「私は、奏一を想ってるだけですから、私からは何もしません。私の恋愛のポリシーは、心の繋がりですから。修二君、信じて下さい。
奏一を傷つけることも、あなたを傷つけることも絶対にしないと誓います。勿論、あなたの恋人を怒らせるような事もしません。むつ君を怒らせると煩いですからね」
修二「……」
忽那「困らせてしまいましたね。修二君は明日大学があるでしょう、もう寝たほうがいい。誓いはカミサマに誓って破りませんから、今はトイレに籠ってしまった酔っ払い奏一の面倒を、私が見ても良いですか?」
奏一を傷つければ、弟の修二君が傷つく。修二君が傷つけば、恋人のむつと華南を怒らせる。
修二は、複雑で不安げな瞳を揺らしながらも、小さく頷いてくれた。
優しい修二君は、奏一を心配しながら、私の気持ちを汲み取ってくれようとしている。
本当に愛おしい兄弟。
さて…。修二君にお許しを貰いましたので、奏一のところに戻りましょう。
しかし、普段も頑固なのに酔っ払っても頑ななお兄ちゃんをどうやって宥めましょうか…。
とりあえず、暫く待ってみてダメなら、扉をこじ開けてみますか…中で寝られて便器で溺れられても困りますし…。
台所に寄り、冷蔵庫から未開封の水のペットボトルを用意して、タオルと汚れた時用の着替えを準備しトイレの前に待機。
だいぶ経ってから、扉は重々しく開いて中から憔悴しきった奏一が俯いて現れた。
奏一「………………………ごめん」
小さな小さな声で絞り出した謝罪。
トイレの中で、奏一は私の問い返しの意味に気が付き、ひたすらグルグル反省していたのだと分かった。
忽那「…気分は?、ちゃんと1人で吐けましたか?」
奏一の謝罪に何も返さなかったら、奏一は益々落ち込んだ。
奏一「……彩さん…ごめん…」
忽那「吐く姿なんか見せたくないものですから気にしないで、それより口をゆすぎましょう、水をお持ちしました」
奏一「ッ…」
奏一の言わんとする事に気付きなら、さらに惚けて返し、ペットボトルの水を奏一に差し出す。
奏一は謝罪をかわされてビクッと肩を震わせ、私からペットボトルを受け取るどころではなかった。
そうだと知りながら、私はさらなる意地悪をする。
忽那「…水とタオル。洗面所に置いておくので使って下さい。…私は、外に出てましょうか?」
奏一「えっ!?なんで?!」
忽那「身の危険を感じるのでしょう?。この頃、私から距離を取ってますよね」
告白してから、戸惑った奏一は私に触れられる事を避けた。でも、嫌がる事は出来ないから、私と会う事を避けることはない。差別はしてないと奏一が戸惑うのを最初は可愛いと思って眺めていた。
しかし、〝マキ〟が現れてから、私を放ったらかしてマキにつきっきり。マキ君の問題が落ち着いても、一度離れたらその距離のまま、この数ヶ月会う回数も減ったまま。
恒例の谷崎との3人飲みでも、避けてないと自分に言い聞かせる様に私の隣に来るけど、頑張ってる感が凄くて、可哀想なことをしているような気になる。
なのに、酔いつぶれて寝てしまって私の家に泊まる。今までそうしていたから、それを止めてしまったら、差別した事になると怯えているのは明白。
奏一「…ッ」
バレてないと思っていたのか、私が怒ってると思ったのか、奏一はビクッと肩を震わせた。
やはり怖がらせてるなら、なかった事にした方がいい。自分の欲のために、羽撃く奏一の重しになるのは不本意。
取り消しを申し出ようとしたら、奏一が必死に私の服の袖を掴んだ。
奏一「彩さんが怖い訳じゃない、本当にごめん、酔ってたって言い訳になるけど、本当にごめん」
忽那「…奏一。謝らなければいけないのは私の方です。あなたに私の気持ちを伝えるだけでも負担だったのに、最近あなたがマキ君を構ってばかりだったのにイジケテ少し意地悪なことをしてしまいました、すいません」
奏一「はっ?。イジケ…?…マキ?」
忽那「はい。あなたがマキ君に夢中なのが悔しくてイジケてしまいました」
奏一「夢中ッ?!…って!何言ってんの彩さん!あの子は修二の友達で!色々助けてくれたからッ…、そ、それにあの子は昔の修二みたいに自分のことは二の次ばかりで、それでッ…」
忽那「甘えてもらえて可愛いのでしょう?」
奏一「ッ…そりゃ…可愛いけど…。ッ…。……彩さん話を逸らさないでくれよ。俺、本当に反省してる。彩さんが修二とくっついてたからって、あんなのと一緒みたいな誤解される言い方したの、本当に反省してる」
やはり、過去に触れてしまったか…
忽那「…そこではないのですが」
奏一「え?」
忽那「私は奏一を好きなのに、修二君に如何わしい事をするかもと思われたのかと…」
奏一「ぅっ…」
忽那「私は、あなたに楽に息をして欲しい。修二君が幸せなのだから、次は奏一に幸せになって欲しい。これは心からそう思ってます。ですから、あの告白は忘れて下さい。私の隣はもう、息苦しいでしょう?」
奏一「えっ…」
忽那「奏一を好きな気持ちを無くすことは出来ませんので、告白をなかった事にして下さい。私は今まで通りに戻ります。奏一も忘れることができてから、私の家に来るようにして下さい。もう、無理しなくていいですよ」
奏一「無理なんかしてない!!」
忽那「奏一、好きでもない人に、好きじゃな言ということやベタベタするなと言うことは、差別でもなんでもないですよ。奏一は考えすぎです」
奏一「ッ!」
考えを言い当てられたのだろう。奏一は激しく動揺し、反論を口にしようとしたが、パクパク動くだけで言葉が出ない。何か言いたげに瞳で訴えるが、罪悪感を奏一が感じる必要はない。
忽那「奏一、手を離して」
袖を握っている手のことを言われてると気が付き、奏一は袖を握ってる手にさらに力を込めて私を睨んだ。
奏一「嫌だ!」
忽那「奏一、また具合が悪くなってしまいますよ」
奏一「嫌だ!彩さんは誤解してる!」
忽那「…誤解?」
奏一「俺は、確かに、男同士を下手に否定したくないって思ってるけど、彩さんが好きな人に好きだと言うことも、彩さんが近づきたいと思う人に近づくのも、彩さんの自由じゃんか!」
忽那「…そうですが、奏一は拒めないでしょ?私を拒むことで、修二君の事を否定する事になると怯えてる」
奏一「…ッ…それは……」
ほら…。だから、なかった事に…
奏一「でも!彩さんはきっと、俺が拒んでも、修二を拒んだ事にはならないって言うだろ」
忽那「…そうですが。だからと言って拒むまで近づいていい訳じゃないでしょう?」
奏一「…迫られたら困る…。…けど…。俺は、彩さんが俺の嫌がる事をする人だとは思ってない」
…。
忽那「…奏一、私を喜ばすような事を言っては駄目ですよ」
奏一「俺は、彩さんを信じてる。彩さんの隣が居心地がいいからつるむんだし、一緒に飲むし。頼りになるし、甘えさせてくれちゃうからついつい甘えたことしちゃうし、眠たくなる」
奏一…、いくら私でも、そんな風に言われたら、告白を取り消すのを止めてしまいますよ。
奏一が必死に私の袖を掴むその手に、そっと手を重ねると、奏一はビクッと体を震わせ怯えたが、逃げはしなかった。
奏一「…確かに警戒してるけど…迫られたら困るけど…、気持ちには答えられないけど…、俺にとって彩さんは、俺を1番理解して居心地のいい場所を作ってくれた人で、俺を肩書きから救ってくれた人で…」
忽那「奏一、酔ってるでしょ。そんなことこれ以上言ったら後で後悔しますよ」
奏一「しない。本当に思ってることだし言葉は曲げない。感謝してる人に感謝も伝えず後悔したくないし、俺と真剣に向き合ってくれる彩さんに、嘘ついて欲しくない」
あぁ…、駄目ですよ奏一。
その真剣な強い瞳を、私は好きなんだから。
忽那「…でも、困るでしょ。私にこんなことされたら」
私の服の袖を掴む奏一の手に、そっと口づけを落とす。
奏一は驚いて一瞬で真っ赤になって、その手を引っ込めた。
ほらね、と笑ったら。奏一は複雑に顔を歪めて何故か直ぐにまた私の服の袖をちょこんと摘む。
忽那「奏一?」
奏一「彩さんはズルい。俺、迫られたら困るって言った」
忽那「逃げていいですよ」
奏一「逃げるけど、避けない」
忽那「そんなカッコいい目で見られると、益々迫りたくなりますが…」
奏一「彩さん、俺を試すのやめてよ。俺は、彩さんに迫られたら困るし、付き合って欲しいって言われたら断るけど。側を離れたいとは思わないし、居なくなったらちょっと困る」
忽那「ちょっと困る?」
奏一「…結構困る」
忽那「どうして?」
奏一「彩さんいなかったら、俺はどこで酔っ払って寝ればいい?修二のこと、誰に相談すればいい?俺、彩さんを信頼してるよ、俺の中じゃ彩さんが1番だ。本当だよ」
忽那「嬉しいけど…。側にいれば、今まで通り、あなたの頭を撫でるし、あなたを支えたいと思ったら抱きしめるし、可愛いと思ったらおでこにキスしたくなるし、奏一を好きだと口にしますよ」
奏一「ッ…、キスは…遠慮したいけど、他は今まで通りでいいよ」
この子は。また無理をして…
忽那「奏一を口説いていいんですか?」
奏一「く、口説いていいって訳じゃないけど…、気持ちを口にするのは自由でしょ」
忽那「……奏一、あなたのことが好きです」
奏一「……ありがとうございます」
忽那「抱きしめてもいいですか?」
奏一「仲直りのハグなら…」
馬鹿な奏一。
怯えた目をしながらそんなこと言って。そういうの、男を煽るっていうんですよ?そんな可愛く健気な姿、私以外に見せたら襲われますよ。とくに、羚凰君とかね。
奏一が怯えないようにそっと優しく抱きしめると、奏一は言葉どうりハグのつもりなのだろう、私の背中に手を回してきた。
漢らしいといえばそうなるが、今は、可愛らしいだけ。
忽那「奏一、頭を撫でてもいいですか?」
さすがに断ると思ったのに、奏一は頷いた。
忽那「奏一が可愛すぎて、キスがしたくなりました」
奏一「キ…、それは困ります」
本当はキスだけじゃない。撫で回して全身に口づけして舌を這わせて、奏一の中の誰にも触らせてない部分に触れたい。恥ずかしがる奏一に気持ちいいことだけして、蕩けさせて、私がどんなに奏一を大切に想って愛しんでいるのか、奏一の1番だ深いところに届くように教えたい。
私も所詮男で、欲望という名の獣が住んでいる。でも今は、仏のように微笑んで、その獣を感じさせる訳にはいかない。
私の中の激しい熱で、あなたに火傷を負わせたくはない。
奏一にこれ以上どんな小さな傷もいらない。
奏一はこうやって飲みすぎて修二を褒め称えて無防備になるくらいで丁度いい。
私が欲しいのは、体ではなく、
奏一の繊細なのに強い心。
私の腕の中で安心きて欲しい。
頑張ってきた奏一に幸せになって欲しい。
忽那「…瞳がとろんとしてますね。やっぱり酔ってるんでしょう。明日後悔しますよ」
奏一「彩さん、俺、酔ってるけど後悔はしない」
そんな風に私に抱きついたまま、そんなことを言うなんて、奏一は本当に可愛らしい。
忽那「…奏一、あまり可愛らしく煽らないでください」
腕の中の温もりを手放したくないですが、私の気持ちと奏一の気持ちは同じではない。
柔らかく包んで怯えさせないようにしても、こんなに近いと愛しくて、抱きしめて頭を撫でるだけでは足らなくなる。本気で口説き落としてしまいたい先を急ぐ気持ちに目を瞑れなくなる。
奏一「だから、煽ってません。彩さんこそ、触り方エロいし、俺が離れていくようにワザとらしくそういうこと言うのやめて下さい」
忽那「本当にそう思うから言ってるんですよ。奏一を好きだから口説いてるんです」
奏一「くど……、彩さん、酔ってますよね?」
忽那「酔ってますけど、いつも通りですよ」
奏一「いや…、いつもと違います。…声が…エロい」
忽那「あぁ、それは失礼いたしました。奏一が先ほど、嘘をつかなくていいと言っていたので」
奏一「…なら、仕方ないですね」
忽那「嫌がって下さらないと」
口説くことも、抱きしめる事も。
拒んでくれないと。
奏一「しょうがないじゃないですか、俺、彩さんの側は嫌じゃないし、俺が修二を大事にするみたいに、彩さんのこと大事だし…」
拒んで欲しいのに、拒むことを恐れる奏一は、拒んでくれない。
それどころか、嬉しいことばかり…
奏一「迫られたら…困るけど…、彩さんが…頼りになるのも、安心するのも…変わらない…。信じてよ…、さっきはごめんなさい、彩さんが俺を好きって男もいけるってリアルに考えたらつい口が勝手に…、ちゃんと反省しました、二度とあんな彩さんを傷つける事言わない。だから、…仲直りして下さい」
忽那「私は怒ってませんよ。少し悲しくなりましたが。あなたを好きなこと、忘れられたのかなって…」
奏一「忘れてません…。…恥ずかしいくらいちゃんと覚えてます。…避けてたわけじゃなくて…、つい、なにやってても考えちゃうから…」
忽那「おや、マキ君と会ってても?」
奏一「ッ…、マキは関係ないでしょ。…修二の大切な友達だ、俺にとっては修二の次の弟みたいで…、マキだけじゃない、むつも華南も俺の弟みたいなもんなんだし」
忽那「みんなといても私のことを考えてくださるんですか?」
奏一「…っていうか、あいつらといると考えざるえないっていうか…、見せつけられてるっていうか…」
忽那「あぁ…、フフッ、たしかに」
奏一「彩さんと羚凰にどんな態度取ればいいかとか…」
…忘れてました。
羚凰の事…
奏一「もう、許してよ…」
忽那「怒ってません。でも、頑張って教えてくれたから、仲直りですね」
奏一「良かった……」
私も距離が戻って良かったですが…
羚凰のこともちゃんと考えてあげてるんですね…
さすが真面目な奏一。
羚凰君は職場で奏一を襲ったりしてないでしょうね…
奏一の男嫌いを治すのに羚凰も参加させたのは私ですから自業自得なんですが…
…ん?
なんか、静かですね
奏一「……」
忽那「?」
奏一「……」
忽那「奏一?」
奏一「………」
奏一の返事はなく、腕の中の温もりは、全身を私に預けたまま…
忽那「…………。やはり忘れてますよね…。でなければ私を試してるのか…。そんな無防備に男の腕の中で寝るもんじゃないですよ奏一…」
食べられても、文句は言えないんですよ。
……。
安心しきったその寝顔。
綺麗な黒髪を撫でながら、あとどのくらいこうして寝顔を見る機会があるのか考える…
忽那「あなたが好きになるのは、
どんな人なんでしょうね…」
そう遠くない将来、奏一がタキシードに身を包み幸せそうに笑うその姿を想像する。
そんな奏一を、修二が嬉し涙で見送りながら、その両脇にはむつと華南がいるのでしょう。
どうか幸せになって欲しい。
初めて会った時、あなたは今にも死にそうな顔をして、弟を救いたいと懇願した。
あれからもう直ぐ10年になろうとしてる。
あの時からずっと、
こうしてあなたの黒髪を撫でながら
苦しみが和らいで幸せが訪れますようにと
ずっと祈ってる…
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