アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
森の館⑩にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
森の館⑩
-
湊が運転席のドアを開けると、それが合図のように、いつのまに近づいたのか、玄関にいたはずの初老の男性が、コウタの側のドアを開けた。
「お待ちしておりました。」
男性に、深々と頭を下げられて戸惑うコウタに、降りるよう促してから、湊も車を降りた。
ふたりが玄関の扉の前に立つと、さっきの男性が大きな重い扉をうやうやしく開けた。
湊は、もう10年以上も前からしばしばこの洋館を訪れているが、この扉をくぐるときには、いつも緊張している。
期待と不安… 時には大声を上げて逃げ出したいくらいの恐怖に襲われて、それでも、いつも自分の意志でこの扉をくぐり、館の中に入るようしつけられた。
どうしても足を進めることができずに、この扉の前で何時間も石のように固まって過ごしたこともあった。
進むことができず、でも、引き返すことはもっとできなくて、泣きながら、それでも最後にはいつも、進むことを選んだ。
そうして、何度も何度もくぐったこの扉の前に、今日はこれまでとは違う、言いようのない高揚感で立っている。
湊は湧き上がってくるものを抑えるように、ひとつ大きく息を吐いた。
隣に立つウタを見下ろすと、コウタはこわばった顔で湊を見上げている。
コウタの瞳の奥にはわかりやすく不安の色がのぞいていたが、湊はそれに気づかない振りをして微笑んだ。
コウタも、自分の中の不安を悟られまいと、ぎこちなく湊に微笑み返した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
49 / 463