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『気持ち悪い』
目が覚めると汗だくだった。
夢、か
静かな部屋に聴こえるのはいつもと変わらない秒針の音
それからザーッという雨音
時計の方へ視線を向ければ4時半だった。
チッと短く舌打ちをしてシャワーを浴びにいく
嫌な夢だ。
この家に住む前から雨の日は殆どと言っていいほど見る夢
もう、何年も見ている夢
いい加減慣れろよ
自身に苛立ちを覚えながらシャワーの蛇口を捻り頭から温い水に打たれる。
今日は一限から授業があるから早く目が覚めるのは別にいい
それにしても起きるには早すぎるが。
風呂場を後にし電気もつけず
リビングのテーブルに置いてある煙草を手に取った。
箱から一本抜いて口に咥え火をつける。
ソファに腰を沈めすぅーっと息を吸い薄暗い部屋の天井に向かって紫煙を吐き出した。
特別うまいわけでは無いけれど
今ではもう手放せなくなりつつある煙草
一口吸うごとに徐々に肺を侵されていく感覚にも慣れた。
そうやってボーッと天井を眺める。
目を瞑れば聞こえてくるのは変わらず雨音と秒針の音
針が何周回った頃か、短くなった煙草を灰皿に押し付けて
ただただ時間が経つのを待った。
、
ピリリリリリリ……
「……」
スマホのアラーム音で目が覚める。
時刻は6時過ぎ
結局あれから意識を飛ばしてしまっていたようだ。
窓の方に視線を向けると既に雨は止んでおり、カーテンの隙間から日差しが差し込んでいる。
テーブルの上に放られたリモコンを手に取りテレビをつける。
流れゆくニュースをBGMに大学へ行く支度を始めた。
朝食は食べる気になれず
一杯分の珈琲を淹れソファーに腰を沈める。
液晶画面を眺めつつ淹れたての珈琲を口にした。
熱い液体が喉を通る感覚にじっとマグカップに視線を落とす。
淹れ方は同じなはずなのに店長のとなんか違うんだよな
前に何が足りないのか聞いたことがあった。
すると、ウィンクをしながら
『そりゃお前さん、愛情に決まってんだろ』
そう言われた。
思い出してもやはりというか
あの人言動がいちいちおっさん臭いんだよな
なんて、くだらないことに思考をめぐらせていると時が経つのも早くなるようで
気がつくともう家を出なくてはならない時間に近づいていた。
スマホで今日の時間割を見ながら鞄の中身を確かめる。
今日は、中古文に近現代文学、それから…
簡単に確認をして計算された笑顔を飾るアナウンサーの
「いってらっしゃい」を聞き終わる前にテレビの電源を切った。
玄関棚の上に放置されていた鍵を手に取り靴を履く。
トントン、とつま先を打ってドアノブに手をかけた。
これからまた、変わらないつまらない一日が始まる。
変わりたいやつだけが変わればいい
今のままでいい俺には変化なんかいらない。
変わりたくないんだから俺はこのままでいいんだよ。
誰に言うわけでもなく心の中で呟いて家を出た。
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