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――やばい。
控えめに言っても今朝の行動はやばすぎる。
どう考えても有坂に散々愚痴りまくって家まで送ってもらっておいて、ハルヤンともう関わらないとか自分でも言ったくせに、朝イチちゃっかり仲直りしてるとかやばすぎだ。
そんなの絶対に俺の性格が疑われる。
いや実際全く仲直りした覚えはないが、あの態度はそう取られても仕方ない。
それにハルヤンに抱きついた理由としても有坂の真似をした、なんてそんな茶化した発言をしたら余計に人格疑われそうだ。
アイツ真面目そうだし、ワンチャン愛想尽かされる可能性もある。
ともかく昼休みに理由を聞くって言ってたから、それまでに何かいい理由を考えないと、絶対にやばい。
なんて考えていたが、そんな時に限って授業時間はあっという間に進み何も思いつかないまま昼休みになる。
軽く冷や汗をかきながら四時間目終了のチャイムを聞く。
「結城」
「お、おー…有坂。今日はあれか?食堂か?」
「食堂は嫌だと言っていなかったか」
もちろん有坂と俺の邪魔をしてくる奴がいる食堂は嫌だが、今日に限っては邪魔者大歓迎だ。
もう少し俺に考える時間をくれ。
「今日は部室だ。結城に話がある」
「…わ、分かった」
いつになくハッキリと俺を先導する有坂にくっついて部室へと向かう。
怖い顔をしているのはいつものことだが、どことなく不機嫌さが滲み出てる気がするのはただの気のせいだと思いたい。
「春屋と仲直りしたのか」
部室に着いて扉を閉めたら、開口一番にツッコまれた。
はえーよ。
「あー、いや…あれは…えっと――」
おまけに有坂が先に部室に入ったから、振り向かれると扉を背に追い詰められるような形になってしまう。
背中に硬い扉の感触を感じながら、俺よりデカイ身長を見上げる。
「違うのか。仲良くしていたように見えたが」
淡々と聞かれているだけなのに、めちゃくちゃ威圧的に聞こえるのはなんでだ。
見下ろされる視線が鋭いのはいつものことだが、眉を潜められるとめちゃくちゃビビる。
「な、仲良くしてたわけじゃない」
「じゃあ何をしていたんだ」
「それは…えっと…」
有坂の再現VTRしてました、とかマジで言えない。
コイツ冗談通じなそうだし。
「なぜ言えないんだ。何か後ろめたいことがあるのか」
「な、なんだよそれ。そんなのあるわけねーだろっ」
慌てて返したが、つーかなんで俺が責められなきゃいけねーんだ。
どう考えても悪いのは俺じゃなくて、ハルヤンだろ。
俺はただの可哀想な被害者のはずだ。
元々ちやほやされまくることはあっても、人に怒られたり責められたりすることなんて滅多にない。
俺にこんな態度を取れるのは有坂だからこそなんだろうが、それでも唯一の友人に責められて胸がギュッと詰まる。
「あ…有坂。怒らないでくれ」
「怒っていない。聞いているんだ」
そうはいっても顔が怖いから問い詰められるとめちゃくちゃ怒られてるような気分になる。
ハルヤンが元々顔が怖いやつが凄むとマジで怖いって言ってたが、これのことか。
完全にビビっていたが、それでも俺が一番ビビってるのは実のところ有坂の顔が怖いことでも、視線を全く外さないレベルでガン見されてることでもない。
俺が一番怖いのは、有坂に嫌われることだ。
ハルヤンにも裏切られて、有坂にまで嫌われたら、もう友達なんて一生出来る気がしない。
この先有坂を失ったら、俺の高校生活はきっとぼっち確だ。
思わず目の前の有坂のシャツをギュッと掴んだ。
「は、ハルヤンとはもう喋らない」
「いや、そういうことを言っているわけでは――」
「…だ、だから嫌わないでくれ」
必死に紡いだ言葉が消え入りそうになる。
ハルヤンなんかガチでどうでもいいが、有坂を失うわけにはいかない。
もしかしたら有坂にとって俺はたくさん友人がいる中の一人に過ぎないのかもしれないが、俺はそうじゃない。
やっと出来た友人で、ここ最近有坂のおかげで本当に人生に色がついたみたいに楽しかったんだ。
コイツを失うわけには、絶対にいかない。
有坂の服を掴んでどうしようもなく顔を俯かせていたら、不意に指先が頬に当たる。
どこかあやすように親指が輪郭をなぞり、それからそっと上向かされた。
「…そんな顔をするな。別に春屋と仲直りしたならそれでいい」
「――え?」
俺と視線が合うと、有坂は少し困ったように目を細める。
別に断じて仲直りはしてないが、有坂は俺がハルヤンと仲直りしたから怒ってたんじゃないのか。
「自分を貶めた相手を許し、再び分かり合うのは中々出来ることじゃない。むしろそれが出来る結城の心の広さには感心している」
いやだから全く仲直りはしてないけどな。
でもなんか予想外に褒められたからもうそういうことでいい気がしてきた。
それよりてっきりそこに怒っているのかと思ったが、どうやらそういうわけじゃないらしい。
じゃあ一体話って何だ。
ふと頬に触れたままの手に熱さを感じてドキリとする。
さっきまで鋭かった視線が、ほんの少し和らいだ気がした。
「結城、俺はお前を大切に思っている」
唐突に落ちてきた言葉に、自然と目が見開く。
俺からの一方的な気持ちだとばかり思っていたのに、有坂も同じ気持ちでいてくれたのか。
「――だから、あまり他の奴に触れさせるな」
そう言って有坂は俺の目を見つめて、ふわりと微笑んだ。
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