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風よけくらいにはにしおりをはさみました!
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風よけくらいには
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泣きつかれて眠る懐里を、そっと後ろから抱き締めた。
「オレが、αだったら良かったのに……っ」
零した言葉に、どうしようもない変えようのない事実に、胸が抉られる。
目の前の懐里の頸に、優しく柔らかく歯を立てる。
でも、なにも起こらなかった……。
次の日、オレの腕の中で目覚めた懐里は、ぽつりぽつりと言葉を零す。
「寂しくて、寂しくて、…死にたくなる」
手首に何本も走る自害の痕を擦りながら、懐里は声を溢す。
自傷の痕は、幾本もの線を残し、完治していた。
「ダメ」
オレの言葉に、懐里は、身体を捻り疑問符の浮かぶ瞳を向ける。
「お前が居なくなったら、オレがそうなるから…オレに同じ想い、させないで?」
懐里の身体を、自分の方へと回転させた。
「オレがどこかに出掛けても、帰ってくるまでちゃんと生きてて。オレに、『おかえり』って言って?」
目の前の懐里の頬を両手で包み、額を、こつりとぶつけた。
懐里はオレの手の中で、小さく頷く。
番に捨てられる。
それは、[運命の番]でなくとも、Ωには大きな負担となる。
一生を共にしようと約束した相手からの決別は、心に大きな穴を開ける。
βのオレでは埋められない。
だけど、風よけくらいには、なれる気がした。
当たり前だが、働かなければ、生きていけない。
懐里を守るためにも、自分の地位を確立する必要があった。
大学にも行っていないβであるオレが、黙っていて良い職につけるはずは、なかった。
オレは、コネを使い、近衛家が経営する会社のひとつに就職した。
懐里の症状も、今はかなり落ち着いている。
でも未だに、発情期の度に、死にたいなんて考える余裕が無くなるほどに抱いている。
オレには、それくらいしか、してやれないから。
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