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痛みにしおりをはさみました!
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痛み
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――残念だったな。
と、台所に向かいながら思った。
色が俺に触れたおかげさまで、やつが何を考えているのかは把握済みだ。
藍鶴色は、不思議なやつで最初に会ったときも俺に個人的に復讐する気があるみたいだったが、どうせ全て筒抜けなのだし、こちらも潰すのも容易いわけで。
つまり、なんの意味もない。
俺も、たまに千里眼をつかうとそういう目に合う。そういう、とは、逆に疑念を持たせてしまうっていうやつだ。
だからこそ、おれたちのつかう回線自体が、特殊だったりするのだった。
そう――電力ではなく、念のようなもの。
目に見えない、なにか。だから、出回りようが無いわけだ。
あの会社には、その念を拾いやすい人しかいないわけで、無線は言わば業界用語。『普通をやってます』っていうカムフラージュ。普通、でいなければいざというときに怪しまれる。
例えば今だって藍鶴色は、おやつにエクレアを食べるか考えているのがわかるわけだが、それを告げたら不審者扱いされるので、はっきりとした話はできず、とおまわしに、おやついいなー、と言うのがせいぜいだ。
ま、今のご時世が監視社会なのだからガチのストーカーと混同されやすいのは仕方がないだろうけれど。
強さに憧れたのではないか、と聞いた。
彼は首を横に振った。
「俺が殴られなければ、あの人は、俺に謝る必要がなかったんだ。だから、殴られたくない」
思考回路が。
理解できず、一瞬固まった俺に、そいつは言った。
「すごく小さなときさ。
大事に大事にされていたらしいんだよ。
かわいいねと、きみはずっとここに居ていいよ。かわいいきみの顔に、傷なんか付けられない。
そんな毎日が――退屈だったんだろうな。幸せ、だっただろう。
可愛い顔に傷を付けられないって言葉に、嫌気がさして。
自分でやってやるよって。俺は自分を傷つけるためだけに生きてた」
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