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「分かった。この件は対処しよう」
「ありがとうございます」
俺がほっとしてそう言った瞬間、父は立ち上がると、俺の髪を鷲掴みにした。
「お前はっ、中学生の女も一人で追い払えんのか。こんなことで親を頼って、それでも男か。情けない。恥を知れ、恥をっ」
父は俺の頭を書斎のテーブルに何度も打ちつけた。
痛みで目の前に星が飛ぶ。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
父は唐突に手を離すと、椅子にどかりと座り込んだ。
恐る恐る顔を上げると、父は口を半開きにして小さないびきをかいていた。
そっと自分の額に手をやると、掌がべたりと血に塗れた。
翌日、有希子のことで憂鬱だった俺は学校を休むと父に告げた。
額に大きな絆創膏を貼った俺の顔を見て、父は外聞が悪いとでも思ったのか、ただ頷いただけだった。
その日は土曜日だったので、だらだらと部屋で過ごし、日曜も同じように過ごした。
月曜の朝。俺は学校に近づくと、校門を見ることができなかった。
目を一度ぎゅっと閉じ、思い切って顔を上げると、そこには有希子の姿はなかった。
ほっと息を吐くと、肩に手を置かれ、俺はびくりと体を強ばらせる。
「おっはよー。今日英語の訳、見せてくんない?俺当たりそうなんだよね」
本条が俺の肩を抱きながら言う。
「それくらい自分でやれよ」
俺は本条の手を払うと、校舎に向かった。いつもと変わらない本条の態度に自然と笑みがこぼれた。
その日から有希子は俺の前に姿を現さなくなった。
まるで魔法みたいに。
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