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金色の瞳のチェシャ猫のお話23にしおりをはさみました!
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金色の瞳のチェシャ猫のお話23
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その日は、珍しく本堂に明かりが灯っている。
全ての戸は閉まっていて、ロウソクがぼぉっと薄暗く辺りを照らしている。
本堂におかれている木魚は、一定のリズムを刻みながら、心地よい音色を奏でている。それよりも、もっと心地良いのが、何よりも天花のお経を唱える声だ。
坊さんのお経なんて、皆同じだと思っていた。天花のお経を聞くまでは…
腹膜を振るわせ、鼻腔を抜けて出て行く空気は、天花の喉で震えて心地よい音と鳴って、辺りに響く。辺りの空気がビリビリと震えて、木製の本堂がいつか崩壊するのではないかといつも思うほど天花の声には力がこもっている。
「…」
天花が、薄暗い本堂でお経を読んでいる。滑らかな口調で、読み続ける。
何があっても、絶対に後ろを振り向いてはいけないとチェシャとミケに言われたのだ。
「…住職」
例え、話しかけられても。触れられても。
「住職?」
何をされても、決して後ろを振り返っては行けないと…
「ぎゃあああっ!」
叫び声が、天花の背後から遠ざかっていく。
何が起きても、動じる事無く、冷静にお経を読み続けるように…
「そっち、終わった?」
「…あぁ、思ったよりも多かったかも」
ズルズル… ズルズル…
お経を全て読み終えたら、後ろを振り返って良いと言われている。まだ、あと10行は残っている。
「…めんどくせぇなぁ、これ俺がやんの?」
「仕方ねぇだろ。田舎なんだから」
「マジかよ」
やがて、バタンと音がして、その内静かになる。
「…」
その数秒後に、お経を全て読み終えた。
1時間くらい読んだだろうか…辺りはシンとしていた。
「…」
半開きの目をそっと開けて、辺りを見回してみる。静寂と暗闇。ぼぉっと明るいロウソクの炎が、揺れている。
「…」
天花は、読んでいたお経を胸の中にしまって、ロウソクを消すと、すっと立ち上がった。黒い袈裟がフワリと揺れる。
「…」
本堂の戸をすっと開けると、辺りは薄暗く、笹の葉が揺れる音さえしない。そろそろ、秋の虫が鳴いていても良さそうなのに、音が全くしない。闇が飲み込んでしまっているのだろうか。
「住職」
ロウソクの灯りを持って現れたのは、玉屑だった。
「…ああ、終わったのか?」
ほっと胸を撫で下ろす。
「はい、終わりました」
穏やかに完了報告をした玉屑に、天花は違和感を抱いた。
「…そうですか、ご苦労様です」
天花はお辞儀をした。
「住職…秘仏はご無事ですか?」
「え?…ああ、まぁ…そうですね…」
そういって、天花は本堂を見せた。
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