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第7章ー9 家族の問題にしおりをはさみました!
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第7章ー9 家族の問題
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「家族の問題は、ちょっとしたことでも大問題です。心にとどまって、すべてに影響を与えてきますよね」
「そうなのだな」
「係長は、お見舞いに行きたいんですか?」
尋ねられて、はっと顔を上げる。
考えもしなかった。
見舞いに行くのか?
自分が。
会ったこともない人に?
祖父は、どう思うのだろうか。
「まさか。会いに行ったら『帰れ』と一喝されて終わりだろう」
「そんな怖い人なんですか?」
「梅沢銀行の頭取までやった御仁だ」
「それはそれは……」
保住は笑う。
「銀行員なんてスーツを着たやくざと一緒だ」
「それは言い過ぎですよ」
「そうか?おれは、そう思っている」
柄の悪い。
悪質な金貸しじゃないか。
そんなことを言っても、市役所の税金関係も似たようなものだが……。
「でも、係長の顔には、そんな迷いが書いてありますけどね。係長のお爺さんだったら、結構な御年ですよね?心配な部分があるのではないですか」
「それは……」
それはそうだ。
死んだら死んだで構わないが。
何故気になるのだろうな。
「亡くなる前に、一度は顔を合わせたい。そう書いてありますけど」
「田口……」
「すみません。調子に乗りました」
「いや。いいんだ。すまない。こんな話をするおれが悪い」
ため息が出る。
田口に指摘されたことは、あながち違っていないからだ。
「そうだな。考えてみよう」
「それがいいです。係長は、思量深い人だ。きっといい答えが出ます」
「褒めているのか?」
「おれは、いつでも褒めています」
田口との会話は気兼ねがなくていい。
保住は、苦笑した。
救われる。
仕事のことも。
こうしたプライベートなことも。
「本当に、育ちのいい奴だな」
「そうでしょうか?あんな田舎育ちですよ」
「だからいいんじゃない」
二人は、並んで昼食を摂った。
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