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69.別れ2
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今日は珍しく仕事の合間の休日だった。
なのに。
なのに、どうして自分はここにいるのだろうか?
高塚は大きくため息を吐いてソファで寝転がっている圭を見つめる。
昨晩、突然呼び出された。
たまたま、リサイタルの帰り道でまだ東京まで行っていないところだったけど。
それにしても南に向かっていたのに、また少し逆に戻る羽目になっていたのだ。
彼が緊急で呼び出すなんて珍しいことだから急いで戻ってきたのに。
自宅に着くと、彼は掃除もすっかり終え、一人で飲んでいるところだった。
用事とは愚痴に付き合えと言うものだった。
がっくりした。
何度、帰ってしまおうか悩んだか知れない。
しかし、自分は彼のマネージャーだ。
仕事だと思うしかない。
そう諦めてからは気持ちも軽くなる。
そして、自分も日ごろの鬱憤を吐き出して飲んだ。
そのせいなのか?
悪い酒だったからだろうか?
二日酔いだ。
気分が悪い。
「うう。なんでこんなことになってんだよお~」
悲しくて涙も出ない。
水を飲もうと台所に行く。
その気配にけだもが気が付いて追いかけてきた。
しかし、相手が住人ではないと知ると「にゅ~」とがっかりしたように鳴いて寝室に戻っていった。
「猫は案外、賢いんだな」
独り言をいいつつ、勝手にコップを出して水道をひねる。
「もうなんとかしてくれよ。早く蒼ちゃんが帰ってこないと困るんだけどなあ~」
いくらマネージャーでもここまで圭の面倒は見られない。
やっぱり蒼にいてもらわないと。
反対に考えると、よくこんなわがまま男と一緒に住めるものだと思う。
自分だったら1日でダウンだ。
「あの人、貴重な存在だな。ちゃんとここにいてもらわないと」
高塚は大きくため息を吐き、そして居間に戻る。
寝返りを打つ圭は気持ちよさ気だ。
「まったく」
側の空いている壁に寄りかかってぼんやり天井を見上げる。
「明日からは海外か~」
明日からは海外に行かなければならない。
ゼスプリコンクールのガラコンサートツアーの第一弾だ。
今回はイギリスとイタリアを巡る。
そして、一旦間を置いてから日本でやる予定になっている。
あの賑やかなメンバーとの兼ね合いもさることながら、圭のこの精神状態にも振り回されそうな予感がしてお腹が痛くなってきた。
「やれやれだな。こりゃ」
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