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18歳以上ですか?
❖にしおりをはさみました!
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「りょしゃん、せんべいどーぞ!」
俺の息子は変わっている。
俺の金で煎餅を買わせ、なんと俺に渡してきた。
子どもだから金がないというわけではない。
現に陸はショルダーバッグを提げている。
これは、なにかの陰謀だ。
「亮雅、それ何味や? わさびか」
「豚肉」
「ぶはっ、何やねんそれ。嘘やろ」
「嘘じゃねえよ。あのチビ助、俺を自分の金で太らせる作戦だ。見ろあの顔、優斗を独占する気満々だろ」
「ゆしゃん、おててつなご〜」
可愛い息子と可愛い嫁。
自分がどんな徳を積んできたのか知らないが、恵まれすぎだろう。
「一番のライバルやな」
「あいつの場合、親を独占したい子どもだけどな。好きなやつ他にいるだろ」
「マジでか? 誰や」
「お前の知らん子だよ」
本人すら気づいてないようだが。
「優斗はほんまに純粋やな……なんや胸が痛くなんで」
「純粋すぎるんだよな。もっと強欲で人間臭くても俺は好きだけど」
「オレは嫌やなぁ、優斗は今くらいの方がええ」
「あ、そう。でもお前のじゃねえから、あいつは」
「はっは、知っとるわ」
散々遊び尽くし疲れた陸は車のなかで壊れた人形になっていた。
「あぶぶー……うぇらはむる。ふへー」
「陸……何語なんだ、それ」
隣で困惑している優斗の顔が可愛くてジッと見ていたかったが、渋々シートベルトを締めて車を走らせた。
「亮雅、今日は楽しかったわ」
「俺もだよ。久々に歳食ってよかったと思った」
「……せやな、ほんまに。自分はええやつや、オレは知っとる」
「なんだよ、意味深なこと言うな」
「なんでもあらへん」
ふとフロントミラーを見れば、優斗と陸が寄り添って寝ていた。
……これはまた手がかかりそうだ。
今泉を駅に送って家に着いた頃、目を覚まさない陸を抱えて先に寝室へ寝かせた。
パプキンと怪獣は必需品らしく手放さない。
いつの間にかぬいぐるみ大国となってきているが、週1回風呂場でぬいぐるみを洗っている陸を見ると捨てるに捨てられない。
「優斗」
後部座席で眠っている優斗は起きる気配を1ミリも見せない。
試しにシャツのボタンを1つ外してみたが、眉をひそめるだけで起きなかった。
「りょうが、さん……」
「っ」
まるで俺だと分かっているように腕に抱きついてくる。
優斗が酔っているところをまた見たいと思っている自分がいる。
こんなに可愛いのだから仕方ない。
「ん……」
腰を抱いて長めのキスをした。
綺麗に跳ねているまつ毛はなんとも女性的だ。
優斗からすればそれはディスられているように感じるらしく、そんな男でいたい意識が余計に可愛い。
「ふぅん、ぁ……」
「優斗……綺麗だな、どこもかしこも」
「……ン、……?」
調子に乗っているとバレる。
目を覚ました優斗と視線が合い、わざとらしく首筋に噛みついた。
「ひゃっ……なん、ですか」
「……あーあ、せっかく食おうと思ったのによ。目覚ますなよォ」
「く……ダメですよ! あっ、降りる……からっ」
「かわい。真っ赤じゃん」
「っ」
「俺、怪獣だから」
「……そんな冗談が通じるの、陸の前だけです」
とか言いながら、うつむいたまま動かない優斗は待ちの姿勢に見えた。
ペアリング、綺麗なのを買ってやるか……
「眠いの?」
「いま目が覚めました……もう、別に」
「とか言って力入ってねーのな」
「うーん……うるさいです……」
「はは、寝ていいから体預けろよ」
「……」
眠気に勝てないらしい優斗を抱き上げて車のドアを閉める。
家に入り、ふとミニテーブルの下に何かあることに気づいた。
普段なら特に触れもしないが、寝室に優斗を寝かせるとリビングに降りて下を覗いてみる。
ラッピングされた箱。
ああ……なるほどね。
見なかったことにしよう。
そっとテーブルの下に戻して上着を脱ぐ。
気温はすでに夏だ。
俺も歳を取ったな……陸はとうとう小学生か。
今さらそんなことを思った。
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