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〜昴流side〜
緋村に許可をもらい、帰りのホームルームの時間を貰った。
正直、昴流としては空夜一択だった。
亜美香が悪いというより、空夜が上手すぎる。
テンポ管理、皆への指示の出し方、歌詞の口パク、強弱、すべていい。
さすが吹奏楽部の学生指揮者だ。
「……じゃあ、投票やるけど、とりあえず伏せて、手挙げてもらう。半々とかだったら話し合い。票数えるのは、公平になるように緋村先生にやってもらうから。」
「よし。赤津か、鳥谷にあげるんだぞー。」
昴流も席に戻り、緋村の指示で皆が顔を伏せる。
「じゃあまず、赤津がいいと思うやつ。」
昴流はもちろん、ここで手を挙げた。
「よし、下ろせー。次、鳥谷がいいと思うやつ。」
少しの間があって、また手を下ろせ、と声が聞こえる。
「顔上げていいぞ。廊下の2人も入ってこーい。」
全員が着席したところで、緋村が結果を告げる。
「今年は、赤津が指揮者だ。」
クラスから拍手が上がり、昴流もほっとする。
やるからにはいい賞を狙いたいし、本気でやりたい。そのために指揮者は大事だ。
「鳥谷も指揮者じゃないが、パートリーダーなんだよな?ソプラノを上手くまとめあげてくれ。」
「はぁい。」
亜美香は特に落ち込んだ様子もない。
かえって不気味だ。
「じゃあ今日はこれで解散だな。」
ゾロゾロとクラスを出ていく皆。
昴流は空夜、兼、京を呼び止めた。
「あのさ、どのくらい本気でやる?」
「……どういうこと?木之本くんは本気でやりたくないってこと?」
京が戸惑ったようにそう尋ねてくるが、昴流はもちろん本気でやりたい。
「いや。本気でやるなら、俺らが作りたいクラスの雰囲気みたいなのは統一した方がいいと思って。」
「あ、なるほど……そういうことなら、みんなで話す時間作る?って言っても、みんなの予定がなかなか合わないかな……」
「じゃあー、お泊まり会とかしたらいいんじゃね?部活終わったあと、夜ならみんな空いてるじゃん?」
「場所どうすんだよ。かしけんは実家暮らしって言ってただろ?」
「うん。きのちゃんもくうちゃんも実家暮らしだもんなぁ……やっぱ無理か?」
「俺も実家だから……お泊まりは厳しいかも……」
「……俺の家なら、いいけど。多分。」
確かに、赤津家でのお泊まりは、幼い頃は恒例だった気がする。
「さすがにいきなりお泊まりはちょっと無理だけど、何回か遊びに来てくれれば……?」
「……まあ、空夜の家なら、部屋もあるしな。」
「うん、一部屋だけだけど、空き部屋あるから。」
「えー!行きたい行きたい!!くうちゃんのお家でお泊まりしたい!」
「ほんとに迷惑じゃないの?」
「まあ、大丈夫だよ。ゴールデンウィークまでに、何回か家来て、課題でもやって……ゴールデンウィークあたりでお泊まり出来たらいいんじゃないかな?合唱コンクールの練習が本格化する前だし。」
「そうだな。じゃあそういうことで。」
「あ!じゃあじゃあ!きりちゃんも入れて4人でLINEグループ作る!連絡とかいちいちめんどいし。」
「そうだな、かしけん全員の連絡先持ってんだろ?任せた。」
「おーよっ!」
「くーちゃーん!部活行こー!」
「あ、ごめんっ、俺先いくね!なんかあったらLINEして!」
「おっけぃ!」
「赤津くんお疲れさま。」
リュックを引っ掴んだ空夜は、光樹と一緒に走っていく。
その間に兼はグループを作っていた。
「じゃあこれね!」
【合唱コン 運営部】というグループ。
忘れないうちにと早速入り、まだ友達登録していない京の連絡先を登録する。
「あ、これ俺。」
「わかった、登録しとくね。」
京にも登録してもらい、それぞれ部活に向かうことにする。
兼はテニス部なので外に、ダンス部の京と、フィギア部の昴流はアリーナなので廊下で別れた。
いつもならリンクに行くのだが、今日は調整日で、アリーナで柔軟や基礎運動を行うことになっている。
廊下を2人で歩くが、特に会話はない。
昴流と2人きりになると、男も女も関係なく、質問を重ねたり、やたら話しかけてくる人が多い。
それは年度始め、全く仲の良くない人にほどよくあることだった。そしてそれが、昴流は大嫌いだった。
兼や光樹のように、誰に対してもそういうタイプならいいのだが、昴流にだけ、媚びを売るように話しかけてくるタイプは苦手だ。
(……とはいえ無言もキツイな。)
一応同じクラスの、それもこれから合唱コンクールに向けて一緒頑張っていくメンバーだ。
少しくらい会話ができないと困る。
「……ダンス部って、アリーナで踊るの?」
「ん、ううん。今日は基礎練習だから、柔軟と、基本ステップ練習。俺は社交ダンスも出るから、パートナーと一緒に踊ったりもするかも。」
「そーなんだ。」
「木之本くんは基礎練習だよね?スケートリンクじゃないってことは……」
「おー。てか昴流でいい。俺名字あんま好きじゃねえし。」
「そうなんだ……じゃあ、昴流くん。」
(なんか、調子狂うな。)
居心地がいいような、悪いような。
大人しく、必要以上に自分をアピールしてこない京は、昴流が今まであまりあったことの無いタイプだ。
強いて言うなら、空夜がそれに近いかもしれないが、彼は幼馴染。特別である。
「……俺のこと怖い?」
「えっ?!なんで?全然怖くないよ。」
「……そ。ならいいけど。」
不思議そうな顔をする京だが、ちょうどアリーナにつき、会話はそれ以上なく、じゃあ、と別れた。
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