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58
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〜空夜side〜
6月20日
1度家に帰って着替えた空夜は、1番近いショッピングモールにやってきていた。
入口で14時に航と待ち合わせだ。
午前中はいつも通り部活。今日は施設点検のために吹奏楽部にしては珍しく午後はオフだ。
航から誘われて、その午後を2人で遊ぶことになった。
私服で航と会うことはそう多くない。
部活の打ち上げで何度か見たことはあるものの、そこまで意識したこともないので覚えていない。
「くーちゃん!お待たせ。」
(うっわぁぁぁ、オシャレ……)
幼馴染組の陸玖、空夜、新、昴流の4人の中で最もオシャレに興味が無いのが空夜だ。
陸玖はたまに琉に流行の服を聞いているし、新や昴流は服や靴が好きなため自然とオシャレになる。
空夜は新や昴流でイケメンのオシャレには目が慣れているはずなのだが、航も相当オシャレだ。
「……くーちゃん?どうかした?なんか変?」
「いやっ、航オシャレだなって思ってさ。」
「んんん"っ……くーちゃん、急に褒めないで……」
「えっ?大丈夫?」
顔を覆って固まってしまった航を覗き込む。
「大丈夫……行こうか。」
ニコッ、と笑った航はいつも通りだ。
「くーちゃん甘いもの好きなんでしょ?ここのショッピングモールに最近できたカフェの、チョコパフェがめっちゃ美味しいんだって!」
「あっ、Noah?」
「えっ、もしかして食べたことある?」
「ううん、カフェの名前だけ知ってるんだ。ここよく来るから。すごく気になってたんだけど、まだ食べられてないんだよね。」
「ほんと?よかった!」
ショッピングモールの中を歩きながら部活のことや、普段の休日の過ごし方なんかも話した。
「空夜?」
「えっ?昴流?!なんで……」
振り返るとこれまたオシャレな格好の昴流がいる。
デート、というわけではなさそうだ。
「……いや、ここバイト先。」
そう言って昴流が指さしたのは目の前の靴屋。
SHOES Aと書かれた看板。昴流から聞いていた靴屋とは名前が違う。
「まあ、ヘルプだけど。」
「あっ、そうなんだ。昴流から聞いた靴屋じゃないと思った。」
「俺が働いてる店は学校の方にあるから。ここは店長が昔バイトしてたとこ。今日は頼まれて、俺と店長で来てる。」
「へー!」
「……これからデート?」
「でっ、そういうんじゃ、ないし。」
「……ふーん。まあいいや、これ使えば。」
そう言って差し出してきたのはショッピングモールで使える割引券だ。
「さっきうちの店長が、ここの店長からもらったんだって。使わないからって俺にくれたけど、俺まだシフトあるし。」
よく見てみれば昴流はコンビニの袋を持っていて、中にはおにぎりが見える。
少し遅いが昼休憩なのかもしれない。
「あ、ありがと。」
「ん。じゃあな。」
「うん、バイト頑張って!」
ひらりと手を上げた昴流が店内に入っていく。
「あ、ごめんね?話し込んじゃって。」
「いや、平気だよ!木之本くんだよね。くーちゃんの幼馴染の。」
「そうそう。なんかこれくれたから、せっかくだし使お?」
「割引券だ。ありがたいなぁ。」
「ふふ、だね。」
航はアルバイトしているらしいが、空夜はしていない。
月の決まったお小遣いから文房具などの勉強道具、服や靴なども含めたものを自分で購入する。残ったものが遊びに使うお金だ。
必要なものを買うのもお小遣いからなので、人よりお小遣いは多いと思うが、自由に使えるお金はそこまで多くない。
恋にお願いすれば出してもらえるものもあるが、節約できるところは節約し、無駄遣いはしないのが赤津家のルール。こういった割引券も遠慮なく使いたい。
「あ、ここだ。」
「うわー、綺麗なお店。」
「だね。くーちゃんチョコパフェにする?」
「うーん、この抹茶も気になるなぁ。」
「じゃあ2つ頼んでシェアしない?」
「え、いいの?航は食べたいのとかないの?」
「俺はチョコパフェ食べられればいいから。」
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
店の外で注文内容を決めて、店に入ってすぐあるレジで注文してから先に会計を済ませる。
席に着いて少しすると飲み物が先に来た。
「くーちゃん紅茶好きなの?」
「ん、うん。お母さんが紅茶好きで、その影響かな。」
「そうなんだ。いつもくーちゃんって優柔不断なのに、飲み物は迷いなく紅茶!って決めてたから、ちょっと気になって。」
確かに空夜は迷い始めると長い。
スパッと決めてしまうところもあるのだが、食べ物は迷うことが多い。
(まあ、だから普段は自分で決めないんだけど。)
人と出かけた時はその人の好きなものを注文したり、その人が食べたいというものを頼む。
「食べ物は迷うけど、飲み物は割とすぐ決まるよ。」
「だなー。くーちゃん好きな食べ物が多いの?」
「うーん、どうだろ……なんでも好きだし美味しいと思っちゃうからかも。」
「そうなんだ!でもそんときの気分とかはあるんじゃないの?」
「まあね……でもあんまり時間かけると、相手に迷惑だろ?」
「そうかな?俺は選んでるの見てるのも楽しいけど。」
そう言う航は温かい笑顔だった。
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