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75
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〜空夜side〜
7月8日
「はい、そこまで。」
最後の試験が終了し、教室がザワザワし始める。
皆で勉強した世界史だったので、空夜は兼の手応えが気になって隣を見た。
「くうちゃん……!」
「どうだった?」
「ちゃんと全部埋められた……!自信ないところもあるけど、ここはわかるってとこもあった!!」
嬉しそうな顔でそう言う兼を見て、空夜も安心する。
空夜はいつも通りしっかり埋められた。
「せとっちとか、ほしちゃんとむらちゃんどうだったかな。」
テストは名前順の座席で受けるため、3人とは席が少し離れている。
昴流は余裕そうな表情だし問題なくこなせたのだろう。
「よし、このままSHRするぞ。」
試験の監督官だった緋村が集めた試験を封筒にしまってそう言う。
「7月23日が終業式、その後は夏休みだ。今年は8月2日、3日、4日が夏期講習になっている。申し込む場合は22日木曜日までに用紙を書いて俺に提出すること。」
緋村はそう説明しながら申込用紙を配る。
「成績が悪かった者は強制的に参加になるからな、覚悟しておけよ。」
げぇー、とか、やだぁ、とか声があがって、緋村が静かにと宥める。
「それから、当日が部活の試合などで参加できない場合も考えて、今回は夏期講習で使用するプリントを希望者には配ることにした。希望者はその申込用紙の参加の隣の欄にある資料希望を丸して提出すること。いいな。」
空夜たち吹奏楽部はコンクール直前であることと野球応援に行くためにほとんど参加できないため、この制度はとてもありがたかった。
「えー、皆から連絡あるか?なければ今日はこれで解散にするぞ。」
特に手はあがらず、挨拶をして解散になる。
部活に入っていない者や今日休みの者はすぐに帰宅したり遊びに行ったりするようだが、空夜たち吹奏楽部や宏樹たちサッカー部は部活があるため教室で弁当を食べる。
昴流と京、兼は自主練のようだが残るらしい。
理央や梢は他のクラスの吹奏楽部の子と食べるようで教室を出ていき、何人か残っていた生徒もいなくなってしまった。
(珍しく人少ないな。)
このクラスは部活に所属するものが多いため、こういう時に残る人も多いはずなのだが、今日はイツメンしかいない。
「かしけんテストどうだった?」
「ふふん、せとっち聞いて驚け。俺が全部の欄を埋めた!」
ドヤ、と得意げな顔をする兼に光樹が苦笑する。
「いや、目標ひっく。」
「だって!!いつもどの教科も空白ができちゃう俺が全部埋めたんだぜ?それに、自信あるところもちゃんとある!やっぱきのちゃんすごいぜー!」
「まあ確かに木之本はすごい。教えてもらったとこたくさん出てたしな。」
「あ、それ俺も思った!問題の中に昴流くんが話してたところたくさん入ってて、的確な教え方してるんだなぁって。」
「……褒めてもなんもでねぇぞ。」
兼、光樹、宏樹と次から次に褒められ、昴流は照れたのかパンを頬張る。
「あれ、木之本また照れた。意外と照れ屋よなぁ、お前。」
「うっせ。」
「きりちゃんとかむらちゃんはどうだった?」
「俺はいつも通りかな……あ、でも皆とやったところはいつもより自信あるよ。」
「いつもより埋まったと思う……適当に埋めるみたいなことしなかったから、ちょっと自信あるかな。」
「おぉっ!!やっぱ皆でやったとこは、皆できてる自信あるってことだな!」
「でもさー、ちょっとやっぱ心配だよな。何個か答え合わせしたいわ。」
光樹がそう言うと宏樹と俊哉も頷く。
「……どの辺。」
(あれ、珍しい。)
昴流が自分から、テストの回答の照らし合わせをしようとしているのを見て、空夜はそう思った。
昴流は頼まれればやるけれど、頼まれるまでは何も言わないことの方が多い。
それが今回は自分からやってもいいという態度をとっている。
(昴流、このクラスは相性いいのかな。)
仲のいいメンバーは、昴流を遠巻きに見たりチヤホヤしたりしないのも、居心地がいいのかもしれない。
「さっきの世界史の最後の問題とか?ひっかけだったよな。」
「ん、あれは時代のひっかけだった。」
「だよなー!木之本が言うなら安心っ!」
「俺数学が心配。」
「問題は?」
「えーっと……」
宏樹がプリントを出していくつか問題を指定する。
「……飯食ったらやってみる?皆の部活まで。」
「え、やりたいやりたーい!!」
兼も食いついたので、昼食を済ませたあとでいくつかの問題を解いてみることにした。
京と空夜は皆が黒板の周りで問題を解くのを少し離れたところで見ていた。
「京くんはどうだった?」
「うん、いつもは忘れちゃうような細かいところも割と覚えてたよ。」
「俺もだー。やっぱ人に教えると覚えるよね。」
「うんうん。いつもは1人で家で勉強してるけど、皆と勉強するのもすごくいいなって思った。」
ニコと笑った京に、空夜は思わずドキッとした。
(京くんって魔性というか……笑った時の魅力が半端じゃないんだよなぁ。)
どことなく母、恋と似たようなものを感じて、空夜は少しばかり心配になる。
恋といえば周りについては鋭いのに、自分に関わるものにはとことん疎く、まして向けられている好意には気がつかない。
独身の頃はそうでも無かったようだが、空夜の記憶にある恋は誰にでも親切で、困っている人がいると自ら声をかけることもある。
魅力を振りまき、周りから好かれ、琉が嫉妬する。
(いやまあでも、京くんは恋人いないしな。)
空夜は考えるのをやめた。
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