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8*感染者のにしおりをはさみました!
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8*感染者の
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「じゃあ…聞かせてもらおうか？えーと名前…。」
「…山内です。」
「あ～、ごめん山内君。」
黒服君…あらため、山内君は本当にわかりやすい。
言っていいのかな、どうしようかな、でもな…って
モヤモヤしてるのがしっかり顔に書いてある。
健太君もそういうところが放っておけなくて仲良くしてたんだろうなあ。
なんだかんだで面倒見いいんだもん、健太君。
「…僕、派遣切られて困ってた時に健太からここ紹介してもらったんです。
健太が店で秘密にしてる事は誰にも話さないって約束で…。
僕が生活に困ってたのも本当で、
親ともあんまりいい関係じゃないのも健太…知ってて…
だからその恩もあって、黙ってたんです…。」
「黙ってたって……何を？」
「…っ、健太が本当は…αだって…。」
心臓を、えぐられるような衝撃が走った。
だってそんなはず…
健太君、自分はβだって…。
それにαの近くにいればいくら発情期じゃなかったにしても…わかるはず。
それにそもそも健太君はそんな素振り――
”っ、おい仕事終わりは近寄んなって言って………”
もしか…して。
客相手に一通りの仕事をこなせば、
少し落ち着いているとはいってもΩ特有のフェロモンの香りは残る。
それに客に密着した直後は俺の鼻もバカになってる…？
俺が見抜けてなかっただけなのか？
「勿論このこと、他の黒服は誰も知りません。
でも一人だけ…店長は知ってて。
…アリスさんが襲われたあの日、健太も検査キットやらされたらしいんです。
そしたら………っ、う…ぅっ。」
山内君はその先の言葉をなかなか言い出せなかった。
だけど、そこまで聞いてしまえばもう……。
それよりも、大切な友達の命に係わる秘密を
ここまで一人で抱え込んで、ため込んで…。
どんなに怖かっただろう。
どんなに、苦しかっただろう。
「…山内君、涙拭いて。」
「っ、あ…アリス…さっ……、」
「話してくれてありがとう。
健太君は今…どこにいるのかな。病院？」
今にも堪え切れず、溢れてきそうな涙を必死に隠した。
ただの送迎。
1日にほんの数十分の交わりしかない俺よりも、
ずっとそれを近くで見てきた山内君の方が
きっと何倍も辛いだろうから。
俺は山内君の前で、泣いたらいけない。
「病院なんて…受け入れてくれないっすよ。
何人感染者いると思ってるんですか……っ、病院がパンクする……っ。」
「っていうことは、家にいるんだね。山内君、場所わかる……？」
「っ？！行くん……ですか？」
「…連れて行ってくれるんだね？」
「見るのも辛いかも…しれませんが…。」
「それでもいい。…健太君に会いたい。」
俺たちは飲み残しの珈琲もそのままに、
駆け足でファミレスを出て車に乗り込んだ。
健太君の為に新調した香水を振って
俺を乗せたセダンは、店とは反対方向に走り出す。
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