アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
頂きに立つもの6にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
頂きに立つもの6
-
「……お願いだから……嘘でも、良いから……」
泣きそうな声が、アメリアの鼓膜を震わせる。
そこで初めて、アメリアは痛み以外の理由で顔を歪めた。折られた両腕がもどかしくて仕方なかったのだ。
「……クラリオ、さま、」
優しい声が、王の名を紡ぐ。その音に、クラリオはより一層苦しそうな表情を浮かべた。
アメリアは、そんな顔をさせたい訳ではないのだ。だから、微笑みを絶やさないように努めたのに。
「……アメリア、」
小さく震える声が、彼女の名を呼んだ。アメリアは、王の声で紡がれるこの名前が好きだった。
「…………ごめん、なさい。……ほんとう、に、なにも、しらないん、です……」
アメリアの答えに、クラリオが今にも泣き出しそうな顔をする。
判っている。判っているのだ。彼女がきっと何も知らないのだろうことくらい、クラリオは知っていた。クラリオは誰よりも彼女を見てきて、心の底から彼女を愛していたから、彼女が嘘をついていないことくらい判っていたのだ。
だがそれでも、クラリオが彼女の本質を見抜き切っている保証がない以上、問うことを止める訳にはいかなかった。万が一にも彼女の嘘を見抜けていなかった場合、その弊害がどこで訪れるか判らない。国を担う王として、そんな過ちを犯すなど死んでも許されることではなかった。だから王は、彼女が帝国の計画の核となる何かを答えるまで、追及の手を緩めることができない。
だがもう、王にはこれ以上彼女を傷つけるようなことをするのは無理だった。彼女を想っているからではない。これ以上アメリアを傷つければ、何を言うこともできずにすぐに死んでしまうと判ったからだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
121 / 197