アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
円卓懇親会21にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
円卓懇親会21
-
他人に用意された土産を横から盗って食べた割りに、驚くほど失礼な物言いだった。しかし黒の王の独特の雰囲気のせいなのか、嫌味などではなくただ本当に思ったことを率直に言っているような風情だからか、腹立たしさは抱けなかった。毒気が抜かされるというか、なんというか。
今、どんな反応を取るべきなのだろう。困っているギルヴィスに、黒の王がずいっと手を差し出してきた。
「ん」
「……ええと?」
「これ、俺の分もあるってさっき言ってたよね?」
「は、はい」
「ちょうだい。そっちは持って帰って家で食べる」
「え、あ、はい、その……こちらです。どうぞ」
ギルヴィスの手から本来の自分の分の菓子を受け取りつつも、黒の王の口は止まることを知らない。いつの間にやら、銀の王に用意していた分は食い尽くされそうになっていた。いくら口の中でほろほろ溶けていくマリムとはいえ、勢いが凄まじい。
聞いているのかいないのかよく判らないが、渡すものは渡したため、ギルヴィスは黒の王に向かって会釈をした。
「あの、ヴェールゴール王、その……これから、よろしくお願い致します……」
挨拶はしたものの、黒の王はやはり聞いているのかいないのかよく判らない、気の抜けた声で、んー、とだけ返してくる。そして彼は、空っぽになった菓子箱をテーブルの端に投げた。銀の王へと用意した分は、全て平らげられてしまったようだ。
「やっぱ食い出ないなぁ」
そう言いながら黒の王が手を伸ばしたのは、銀の王のすぐ傍にあるケーキの乗った大皿だった。そこから小皿に取り分けるでもなく、掴んだ皿をそのまま自らの元に引き寄せ、ホールケーキに直接フォークを突き立てる。
遠慮からはほど遠い行動にギルヴィスが目を剥くと同時に、誰かの怒声が響き渡った。
「ヨアン様ぁ!!」
慌てて声の方を見れば、一人の男が怒りも露わにこちらへ向かって来ていた。
両手と頭に乗せた計五つの盆の上に多種多様な料理や飲み物を乗せた彼は、見覚えがある。黒の国において宰相に値する、世話役と呼ばれている男だ。そして、親睦会が始まる前に、何故か黒の王の腕を掴んで押さえていた男でもある。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
97 / 102