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一章 １にしおりをはさみました!
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一章 １
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西欧風の建物。木造の階段。並ぶ簡素なドア。
————天界軍、レキア東方基地、レキア東方旅団。
何やら話しながら階段を登る二人の男の天使の姿があった。二人の軍人は、すれ違う他の軍人達にチラチラと視線を向けられている。
「はぁ？ それでお前、そんな任務受けたのかよ」
「ええ、受けましたよ」
︎ ︎ ︎ 「何でだよ。断っても良かったんだろ？」
「引き受けた方が良い任務です」
「いや、危険だろ」
そう言った黒髪の天使に、先に階段を登り終えた銀髪の天使が振り返る。
「でも、依頼されたんです」
先程から他の天使達に視線を向けられているのは、彼の所為だった。
さながらアルビノのような——天使に先天的な病気は有り得ないが——腰まである長い銀髪に、淡い青紫の双眸、白い肌。高めの身長と、やや女性的な美しい顔立ち。
彼、ニコライ・フォン・ヴィノクール特務曹長は、どこにいても注目の的であった。
一方、彼と会話している天使。
「だからって、お前はなぁ……！」
ニコライを越えるかなりの長身に、鋭く黒い瞳。波打つ黒髪は肩まであり、白い肌と強いコントラストを作っている。
レオ・クルツ伍長——ニコライに唯一ぶつかっていける男。
「お前が一人で行く必要は無いんだろ」
「いいえ、今回も私だけで行きます」
二人は廊下を歩き出す。
わざとらしく溜め息をつくレオ。
「一人で行けって言われたのかよ」
「ええ」
「そりゃ……ヴィノクール特務曹長さんよ、どう考えても実験だぜ」
レオの言葉にニコライは横目で彼を睨み付けた。
その目を見返して、彼は続ける。
「分かってんだろ。お前でそいつがどれくらい強いか測るんだよ。お前なら死ぬ可能性は低いだろうから、取りあえず実験的に行かせんだ」
「……クルツ伍長、だから何だと言うんです？」
そう言って、ニコライは自室のドアの前で足を止めた。
レオも止まって彼を見下ろす。
「わざわざお前がそんな危険なことしなくていいってんだよ」
「私がやらずに誰がやると？」
彼はレオに背を向け、ドアを開いた。
「わざわざご忠告、ありがとうございます」
「おい……、ニーカ！」
レオが呼ぶのも聞かず、ニコライは部屋の中へ入っていってしまった。
取り残されたレオは、興味本位にこちらを見ていた天使達を鋭い眼光で睨み付けて追い払った。そして苛つきながら自分の部屋へと歩いていく。
部屋へ戻ると、四人部屋には二人の同居人がいた。レオの苛立った表情を見た二人は苦笑した。
「今日はどうした、レオ」
「まぁた喧嘩かぁ？」
茶髪の天使と眼鏡をかけた天使がそう問いかけた。
自分のベッドに向かうレオ。二段ベッドの上の段だ。
「喧嘩つーか……別に俺は悪くねぇし」
「喧嘩した奴は誰でもそう言うの」
「そうだけれど……、でもニーカはおかしい」
レオがニコライの愛称を口にした瞬間、二人は顔を見合わせた。
「ヴィノクール特務曹長かよ」
「おいレオ。いくら幼馴染みだからって、いつもいつも突っかかり過ぎじゃねぇか」
そう言う二人に、ベッドに横たわるレオ。
「お前らにゃ関係ねぇだろ」
「確かに関係ねぇが、お前の立場が悪くなるぜ？」
眼鏡の男がそう言ったが、確かにその通りだった。
ニコライは一般兵士百人を凌ぐ強さと言われ、彼を信望する者はたくさんいる。そんな彼に度々突っ掛かるレオは、他の天使から睨まれ易くなっていた。
レオは友の最もな言葉に、黒髪を掻き回す。
「まあ、そうだが……」
「今回はどうしたんだよ」
茶髪の天使に尋ねられたレオ。
「ニーカが最強の悪魔の抹殺を命じられた。断っても良かったのにその任務につくらしい」
彼がそう言うと、二人の軍人は目を丸くした。
「最強の悪魔って……人間界にいるミハイルって奴か？」
「ああ」
「そいつを、一人で？」
「そうだ。危険だから拒否もできたのに、あいつはやるってんだ。おかしいだろ？」
それには二人もレオに賛同せざるを得なかった。
「明らかに実験だな。ヴィノクール特務曹長も分かってるんだろうが」
「上も矢鱈（やたら）な任務出してくるもんだ」
そう、そもそも上司の命令がおかしい、とレオも思った。
「あいつが変なプライド持ってるのも問題だけれどな」
自分の言葉に疑問符を浮かべた二人に、レオ。
「昔からそうだ。あいつは何でもできて、強いから……その自信があるから、頑張ろうとするんだ。それがいけない。自分で自分を苦しめてんだよ」
ずっと近くでニコライを見てきた。
だから彼のことはわかる。そんなつもりでいた。
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