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1年前 3<宮前視点>にしおりをはさみました!
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1年前 3<宮前視点>
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それから、2日後の真昼間だった
天原結弦の事件について調べていた俺達の元に一課の警視長がやって来たのは…
こんな小さな殺人事件よりもお国のお偉いさんを助ける方が優先だと言われ、俺の部署の皆が駆り出された
無事にお偉い大臣さんは捕まえられたし、俺達のでる幕なんて殆どなかった
だが、帰って来た頃には報告書やら何やらに追われてしまい、あの事件は犯人がわからないまま戸棚の奥へと押し込まれていったのだ
そんなある日、雪が降り出しそうなくらい寒かったのを覚えてる
華奢でちっこいあいつが警察所を訪れてたのは…
俺の知り合いだから話を通してくれと無理を言い、自分の部署までそいつを連れて来てもらって驚いた
真冬にもかかわらず薄手のシャツにパーカー、防寒具は一切身につけておらずそいつの顔は真っ青になってガクガクと震えていた
それに顔や身体の至る所に怪我をした後や青あざが残っていた
とりあえず毛布と熱いお茶をそいつに渡し、落ち着くのを待つ
「…落ち着いたか?」
頭を上下に振り、俺の問いかけに答えるそいつにもう1つ俺から質問をする
「…何があったんだ?」
別の刑事から話を聞いたところ、路地裏で震えてる少年がいるとの通報があったらしい
そいつは俺の顔を見ると、口を開きかけたがまた下を向いて黙り込んだ
「…答えたくない…か。」
「すみ…ま…せん」
そういったそいつの声は掠れるくらい枯れていた
「…俺さ、お前に謝らなきゃいけない事が1つあるんだ。」
話題を変えるために俺はあの事件の事を持ち出す
「……?」
そいつは顔をあげて首を小さくかしげると俺の瞳をじっと見てくる
「…事件の犯人。俺が捕まえるって言ったのによ。あの事件、上からの指令で解決できなくなっちまった…」
すると、寂しそうに微笑みながらそいつは首を横に振った
「…もぅ、いいんです。総理大臣には敵わないですから…それに俺が結弦を殺した様なものですし…」
俺は思わず目を丸くして吸っていた煙草を落としそうになる
(…あの時はあんなにもすがりついて来たのにな。)
「本当にすまない。」
「…いいんです。謝らないで下さい。」
そう言うとそいつは毛布を俺に返し、礼をして出ていってしまった
「家まで送ってやるぞ?」
「…大丈夫です。貴方もあまり俺と関わらない方がいいです。自分の身が大事なら」
意味のわからない事を呟くとそいつはふらつく足取りで署を後にしたのだった
それ以来俺はそいつの事が忘れられなかった
(…まさか、また会える事になるとはな。)
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