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君を呼ぶ声にしおりをはさみました!
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君を呼ぶ声
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──そうとう毒されてると思う。
あいつなんて大嫌いだった。
付き纏われてうっとうしいだけだった。
あいつのことを知りたいだなんて微塵も思わなかった。
気にすることなんて、なにもなかった。
なのに──…
「はッ、はあっ…はあっ…」
たった一日会わなかった。話をしなかった。
それだけでこんなにもあいつに振り回されてる自分がいる。関わるほどにあいつのことをもっと知りたいと思う。
勝手に人の領域に土足で踏み込んできて
好き放題言って、やって、
気の向くままにふらふらとどこかへ行ってしまう。
そんなあいつが気になって仕方がない。
放っておけばいいのに。
相手の方から離れてくれるんだ、ラッキーじゃないか。
そうすれば、俺があいつのことで悩むこともストレスを感じることもないだろう。
なのに、なにが不満なんだよ──?
久々に走ったせいで肺が痛い。
口の中が乾燥してカラカラだった。
ドクドクと速まる鼓動を落ち着かせようと深呼吸を繰り返す。
今、どこにいるんだっけ…
辺りを見回し自分の居場所を確認する。
幸いにもがむしゃらに走ってきた割に目的地からさほどずれていなかったことに安堵した。
『しおねくんなら多分、中庭にいると思います』
『…保健室とかじゃねぇの?』
『保健室にいることもあるんですけど、今日みたいな日は中庭にいることの方が多いですよ。
…まるで大切な誰かを待っているみたいに』
「……大切な…誰か、か………」
ぽつりと呟き、重い頭を持ち上げた。
「………っ、」
強烈な眩暈に襲われその場に蹲る。
追い討ちをかけるように鈍い痛みが頭に響いた。
昨日はいつも以上に眠れなかったからなぁ、なんてどこか冷静に自分を客観視する。
『君さあ、ほんと"変わんない"ね』
──なにが変わってないの?
『覚えてない?
僕ね、前に君と会ってるんだよ。ここで』
──覚えてないよ。
「………わかんねぇよ……もう……」
ぐしゃぐしゃと髪の毛を掻き乱し、ため息を吐きながらゆっくりと立ち上がる。
響く鈍痛を抑えながら鉛のように重い足を前に進めた。
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