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86にしおりをはさみました!
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病院に着くと、巫女装束という出で立ちに加え、その容姿のせいで巫女都は院内に居る者の注目の的となっている。
巫女都はそそくさと受付に行くと、藤堂が今日は外来かどうか、もしそうなら診察をしてもらえるかを聞く。確認しますので少々お待ち下さい。と言う受付の女性に従い待っていると、正太郎がジト目で見てきて巫女都は苦笑した。
暫く待っていると、受付に現れた藤堂が、巫女都の頬の殴られた痕を見て盛大に驚き詰め寄る。
「 巫女都くん、どうしたんだいこの傷!?」
「...あ、...ちょっとあって。...あの、肩外れちゃったみたいで、診て貰えますか?あと、 正ちゃんも脚痛む様なので一緒に...。」
遠慮がちに頼む巫女都に藤堂はふぅとため息を吐くと、腰に手をあて呆れた顔で巫女都と正太郎に諭す様に言う。
「 仲が良いのは分かってるけど、二人して退院早々悪化させてどうするの。空いてる診察室で見るから着いてきてね。」
藤堂先生の指示に従い診察室に着くと、先ずは正ちゃんの脚を診てくれて、先にCTとレントゲンを撮るよう手配してくれた。車椅子に乗るよう看護師さんに促された正ちゃんは、なんか迷ってるみたいに見える。きっと僕を心配してくれてるんだと思う。
あんな事があった直ぐ後に、巫女を藤堂と残して平気か不安になった俺が口を開こうとすると、それを察したのか、巫女が苦笑してて、「...僕なら大丈夫だから」と言ってきた。ここでごねてもしゃあねぇし、俺は渋々頷いて車椅子に乗った。
肩を診るから上を脱いで貰えるかなという言葉に従えず、僕が躊躇う素振りを見せると藤堂先生が遠慮がちに聞いてきた。
「...巫女都くん、何があったか聞いてもいいかな?」
その言葉に僕は俯き口を開けずにいたら、藤堂先生は苦笑してる。診てください話せませんじゃ駄目なのは分かってるけど、口に出来ない。
「...一応、医者だからどうしてこんな事になったか把握しておきたいんだ。君の意に背く様な事はしないと約束するから。」
真摯に頼む藤堂先生の言葉に僕は申し訳無くなって、ポツリポツリと事の経緯を話し始めた。
「...神社で、暴漢に襲われたんです...。...正ちゃんが...助けに来てくれたんですけど、......っ、」
「....怒って暴れちゃったのかな?」
なんと言ったらよいか分からず言葉を紡げずにいると、藤堂先生がそう確認をしてきて、小さく頷いてから直ぐに俯いた。そんな僕を見て先生は少し考える素振りを見せてる。
「...先程、外来に診察に来た患者さんが、複数箇所骨折していたんだけど、酷い怪我の割に理由を全く話してくれなかったんだ。もしかしたら彼が君を襲った暴漢かも知れないね...。身元と顔、調べられるけど...、どうする?」
その言葉に僕は首を振ると、食い入る様に先生を見つめ、弾かれた様に聞く。怖いけど知りたかった。
「 あのっ、...その人の怪我って、...命に関わる様なものじゃ、」
「 大丈夫。酷く折れてはいるけど、内臓は無事だったから。安心していいよ。君にした事を考えればあの程度の怪我じゃ足りないよ。」
柔和な笑みで「医者のセリフじゃないね。今のはオフレコで」と笑う先生の言葉に、僕は心底安堵した。
「...よかっ...た。...死んじゃったらどうしよって...僕のせいで...正ちゃんにあんな事させて...もしもの事があったらって....怖くてっ、」
ホッとしたら急に震えが襲って来て、僕は肩を押さえる手にギュッとと力を込める。
そんな巫女都に藤堂は一瞬驚いた顔をしたが、何かを諦めた様な困った顔で微笑んだ。
「 君はどんな時でも彼の事を一番に考えるんだね。こんな事をされたら自分可愛さに相手のその後の心配より、報復してくれた事に普通は感謝すると思うよ。」
その言葉に巫女都がキョトンとした顔をすると、藤堂はくすくす笑う。
「 本当に、君はとことん神の遣いだね。...今日からは無茶をしないで、治す事に専念してくれるかな? もう一度、君の巫女神楽が見たいんだ。約束してくれる?」
「 はい 」
にっこり微笑み返事をする巫女都の頭を藤堂は一撫ですると、巫女都に聞いた。
「 君の治療は、佐倉くんが戻ってからにしようと思うんだけど、もう少しだけ我慢していられるかな?」
「 大丈夫です。...藤堂先生、ありがとうございます。」
僕を一人残すのを心配そうにしてた正ちゃんの事を思うと、僕は藤堂先生のその気遣いが途轍も無く有難いものに感じてた。
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