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30にしおりをはさみました!
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30
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アパートに帰りついてからも、ふわふわした気持ちが落ち着かない。
まさか、あの本宮くんが、僕のことを好きだなんて。
ここ数日の地獄が嘘のように、舞い上がる。
なんか、今なら何でも出来そうな気さえしてくる。
じっとしてられなくて、でも何も手に付かなくて。
そわそわそわそわ、彼のバイト終わりの時間を待つ。
昨日までの二週間は連絡を待ってるのが苦痛で仕方なかったのに、今日は一転、とにかくニヤ付きが止まらない。
この嬉しすぎる気持ちを誰かに伝えたくて。
でも、そんな友達、僕には………、居た。
しかし、アイツは本宮くんが不機嫌になるきっかけだった。
とは言え、やはり誰かに喜びを伝えたい。
仕方ない、アイツで我慢するか。
携帯を手に取り、履歴からリダイヤルを押す。
『おー、風間。どーしたー?
やっと本宮くんから何か言われたか?』
こちらが何も言わないうちに、開口一番そう言われて。
からかうような、見透かすような声音に、不信感を抱く。
「何かって、何?
お前、何か知ってるの?」
本宮くんとのことを伝えたい気持ちが、一瞬にして影を潜める。
本宮くんのあそこまでの不機嫌は、何だったのか。
『んー?
お前らがあんまり焦れったいから、ちょっとな。
本宮くん待ち伏せて揺さぶってみた。
もっと早く連絡来るかと思ってたけど、結構時間かかったな』
「はぁ!?」
驚きすぎて、言葉にならない。
待ち伏せ? “揺さぶった”って、何?
『バイト終わったとこ捕まえて、“俺の将吾に手を出すな!”的な?』
ホント、意味がわからない。
「本宮くんが不機嫌だったの、それのせい!?」
『でも、俺が発破かけなきゃ、お前らいつまでもうだうだしてただろ?』
「確かに、そうだけど…」
的確な分析に、言い返せない。
『だから、本宮くんのこと煽ってみました~!』
ふざけた様子の友人が、恨めしい。
「だからって、あのまま気まずくなってダメになってたら、どうするつもりだったんだよ!」
イラっときて流石に言い返す。
が、友人は意に介さないようで。
『そんときは、それだけの気持ちだったって事だろ?
大事な親友を男に渡すんだ、生半可な気持ちで手を出されたら困るんだよ。
だいたい、ライバル出現くらいで逃げるようじゃ、同性愛なんて無理じゃねぇ?』
またしても、的確な言葉に、ぐうの音も出ない。
しかも、大事な親友とか言われたら、余計に。
「でも、僕に相談くらいしてくれたって…」
ボソボソと文句を言うと、
『そしたら、風間は絶対反対するだろ』
って。
もう、ホント見透かされ過ぎててイヤだ。
でも、本宮くんとの関係が先に進んだのは、確かにこいつのおかげで。
一応、キューピッドってことになるのかな。
「取り敢えず、ありがと」
『取り敢えずかよ?』
僕の酷い物言いにも、友人はケラケラと上機嫌で。
ああ、僕って周りの人に恵まれてるなって。
そう思ったら、視界がぼんやりと涙で滲んだ。
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