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10にしおりをはさみました!
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10
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翌週末、誤解も解けて、本宮くんの風邪もすっかり治った。
そして僕は今、本宮くんの部屋で一人、彼のバイトが終わるのを待っている。
先週は結局、「風邪をうつしたくない」との彼の希望で、彼が寝付くのを見届けてから自宅アパートに帰った。
ベッドに入る前に、「将吾さんの分です」と渡されたのは、上品な革のキーケースに付けられたここの合鍵。
「いつ渡そうか悩んでたら久弥に先越されたから、実はちょっと悔しかったんです」と拗ねるように言った彼の言葉が嬉しくて。
ギュッと胸が締め付けられて、ちょっとだけ涙ぐんで。
「泣かないで」って言われて、涙を舐め取られて、そして久しぶりの口付けをした。
しっとりと柔らかに、吸い付くような口付け。
僕が怯えないようにひたすらに優しく、穏やかなそれで、ずっと波風の治まらなかった僕の心は凪いでいく。
嬉し涙は止まらなかったけれど、自然と微笑みが漏れる僕に満足したのか、彼はそれ以上何も言わずにずっと僕の唇を啄んでいた。
数日後、電話で今日のことを約束して、「バイト終わったら急いで帰るから、この間渡した合鍵で先に入っててくださいね」と言われて今に至るのだが、手持ち無沙汰と言うか、なんだか落ち着かない。
ふと彼からの口付けを思い出し、一人で気恥ずかしさに居たたまれなくなっていると、外廊下から足音が響く。
時間的にもきっと本宮くんだろう。
火照った顔をパタパタと扇いで、玄関へと向かった。
「ただいまー」
「おかえり」
玄関を開けた彼を出迎えると、いきなりギュッと抱擁される。
突然の出来事にどぎまぎしていると、耳元でふぅっと息を吐かれて。
「どーしよ…。
玄関開けたら将吾さんがいる。
嬉しすぎてどーしたらいいかわかんない」
首筋に顔を埋めながらそんなことを呟かれては、こちらの方こそ羞恥に顔が赤く染まる。
以前のように、本宮くんが手早く夕食を作ってくれる。
僕の方が仕事が早く終わったのだから作って待っていられればいいのだが、生憎そこまでの技術は持ち合わせていなくて。
いつも作る間はちょっとだけ手伝って、食後の洗い物などをメインですることで相殺してもらっている。
他愛もない話をしながら食事して、二人並んで片付けをして、時折触れるだけのキスをして。
だんだんとそのキスが深さを増していくとともに、本宮くんの声が低く甘く掠れていって。
「シャワー、浴びてきて?」
その言葉に顔を上げることも出来ずに、小さくコクリと頷いて、俯いたまま浴室に身を隠した。
本宮くんの部屋でシャワーを借りるのはあの日以来2度目だ。
当たり前だが、そうそう慣れるものではない。
シャンプーの位置やシャワーのコックの操作一つ一つに手間取ってしまう。
本宮くんが使っているボディーソープの香りが全身を包む。
彼から香るときのような甘さはないけれど、それでも彼に抱き締められているようで、それだけで身体の中心が疼いた。
漸く浴室から出た僕と入れ違いで、本宮くんが浴室に向かう。
その待ち時間がまた居たたまれなくて、ソファに座ってそわそわとその時を待った。
「将吾さん、約束してください」
ベッドに仰向けになり、覆い被さってきた彼からじっと真剣な眼差しで見詰められる。
「何?」
「痛いとか怖いとか、我慢しないで教えてください。
貴方に無理をさせてまで、したい訳じゃないから。
ゆっくり進みましょう」
慈しむようにそう言われて、ホント僕って大事にされてるなぁって、幸せだなぁって思う。
「うん、ありがとう」
ホントはすごく怖い。
でも、それよりも、彼と触れ合いたい気持ちの方が勝っていて。
正直にそれを伝えると、本宮くんはギュッと力強く僕を抱き締めてくれて。
「将吾さん、ありがとうございます。
愛してます。
時間かかってもいいから、いつか俺のものになってくださいね」
耳朶を擽る甘い声音に、背筋がゾクゾクと粟立つ。
「ん」
緊張と興奮で、それしか言えずにいると、本宮くんは今度はニヤリと維持の悪い笑みを浮かべて僕を見詰めてきて。
「あ、恥ずかしいとか気持ち良すぎるとかが理由だったら、止めてあげませんから、覚悟してくださいね」
そう言って妖艶な雰囲気を身に纏った。
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