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#3にしおりをはさみました!
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#3
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数週間後、双子はとある無人島に来ていた。
無人島とは言っても既に過去の話で、これからは自分たちを含む数人の奴隷と、執事が暮らしていくのだが。
島の中心には屋敷があり、尖った屋根、庭に噴水、地下室に屋根裏部屋と双子が想像していた通りの外観、内装が備わっていた。
また、執事と初めて面会した時には、その丁寧な物腰に思わず気後れしてしまった。
頭は白んでおり充分に年を取っている事は明確なのだが、伸びた背筋、しっかりとした言葉遣い、その言動全てに英国紳士のような気品と力強さがあった。
双子が執事に名を訪ねると「三番でございます」と答えた。
何かを聞き間違えたのかと思い再度尋ねると、少し微笑んでこう答えた。
「戸惑われるのも仕方の無い事かと存じますが、私は今までご主人様に三番―さんばんとしか呼ばれておりませんでした。
名前とは、個人を識別する最も明確なパーソナリティではありますが、私は名前の持つそれ以外の意味を存じません。
ですので、私の事はどうかご遠慮なく三番とお呼びくださいませ」
明らかに自分たちの常識とは違う事を言われているのは分かったが、それもまた執事の、いや三番の人柄が成すものなのか、双子は静かに頷いていた。
その後三番から屋敷内の案内、これからの生活についていくつかの説明を受けた。
その中で奴隷に関しては双子の目には付かない様に努めるので、どうか忘れていて欲しいと切願された。
双子は思わぬ申し出に驚いたが、三番の想いに気付き心に温かいものを感じた。
だが、温まった心の端には冷たくて暗い感情が、確かに残っていた。
小さかったその乾いた感情は、満たすことが容易な欲望、食欲、性欲、睡眠欲などが満たされるほどにゆっくりと黒いもので湿り、更に冷たく、そして大きくなっていった。
一体何が足りないと言うのだろうか。
お互いが居ればよかった。
自分に似た、でも自分よりも可愛くて愛しい春が。
自分に似た、でも自分よりも綺麗で愛しい樹が。
居ればよかったのではないか?
だが何度愛の言葉を囁きあっても、何度身体を重ねても。
愛ではない、満たしたいが満たせない何かがあった。
双子は苦悩する。
相手に対する己の想いの浅さに気付いてしまったのかと。
だが、双子はある事に気付く。
満たせないのではない、満たしてはいけないのだと。
満たそうとすれば相手を傷付けてしまうそんな欲は、満たしてはいけない。
自分が最も愛しく思う相手を、傷つけてはいけない。
だがこの欲は、満たしたくてたまらない。
ならば、代わりが居ればいい。
傷つけても良い相手を、存分に傷つければいいのだ。
その歪んだ考え方を叱る者も、諭す者も居なかった。
双子は三番に奴隷とは違う、黒く乾いた欲望を満たす者を連れてくるよう命じた。
三番はそれが誰か分からなかったので、何人かの中から、自分たちで選ぶように頼んだ。
或いはそれで、考えを改めてくれればと思いながら。
しかし双子はその考えを喜んで承諾し、いつ頃集まるかとさも楽しそうに訊いて来た。
日程を告げた三番は、双子の目を見ることが出来なかった。
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