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隙を魅せて。1にしおりをはさみました!
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隙を魅せて。1
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「先生、僕と付き合って下さい」
「…うちの生徒会会長様はこんなに頭が悪かったか?」
「心外ですね」
突然の告白。人気のない渡り廊下で青春の1ページのような出来事を起こした張本人は貼り付けたような笑みを浮かべ返事を心待ちにしている
「着いてくるな」
「返事をくれたらいいですよ?」
「……ふざけるな」
「ふざけてませんよ」
「……殴られたいのか?西園寺…」
「…」
ドスをきかせ睨むと観念したのか立ち止まりそのまま着いて来なかった
日向 心咲(ひゅうが みさき)28歳
4月始め、この学校に赴任して約5ヶ月あまり
最初のうちは生徒の方から寄ってきては質問責めにあったが、それも今ではない。
自分の性格上フレンドリーに生徒と話すことなんて出来ない。数学担当のせいもあり悪い噂は浸透する…
なのに……
『先生、僕と付き合って下さい』
『好きです、先生』
『先生も好きになって下さい』
今思い出してもイライラする。
何を面白がっているのか初めて会った日からこの調子。
西園寺 類(さいおんじ るい)
はっきり言って、苦手なタイプだ
「はぁ、」
「浮かない顔ですね、日向センセ」
「阿久津先生…」
「また、“西園寺が”ですか?」
「…察しの通りです」
「まぁ、今時の子供はこんなもんでしょう」
「ですよね…」
阿久津 臨海(あくつ りんか)27歳
彼も今年の春にこの学校に赴任してきたうちの一人で、なかなか上手く出来ない俺のことを手伝って貰ったりしている。
…………彼の方が年下なのに…
俺とは違い生徒に愛されているとてもいい先生だ
「けど、そのうち向こうから離れて行くでしょう」
「そうですね」
優しい相談相手になだめられようやく、苛立ちも消える
────ガラッ
「阿久津先生ぇ、緒方くんが!」
「すぐ行く!」
「阿久津先生も大変ですね…」
「はい、けどまぁ教育指導担当なんでしようがないですよ」
「お互い様でしたね」
「ですね、あ!今日仕事終わったら空いてます?」
「え?あ、はい」
「一杯、いきません?」
「いいですね!是非」
「では、また放課後!」
満面の笑みで別れを告げられ、戸惑いながらも苦笑いで返す
「先生…」
「な!?西園寺…いつの間に」
「今来ました、クラス分のアンケートの集計……」
「あー、すまない」
「いえ、こんなの苦じゃありませんよ」
「そうか、」
「……先生、阿久津先生と親しんですか?」
「なんだ、聞こえたのか…仲がいいというか歳が近い分話せるだけだ…だがお前には関係ないだろ、さっさとクラスに戻れ」
「阿久津先生とは、関わらないで下さい」
「は?何言ってんだ」
椅子にすわる心咲を伏し目がちに見つめる類は大人びてみえ、女子生徒が騒ぎ立てる気持ちも分からなくはない、そう心の片隅に思う
「あの先生は、危ないです」
「人の好き嫌いはあるかも知れんが心の中にとどめておけよ」
「……、ホント分かってないんだから」
「は?」
「いえ、何も…じゃあ戻ります」
「あ?あぁ」
突然会話を終わったせいで何となく拍子抜けする
てっきり何かしら言ってくるのだとばかり…
不思議な気持ちを他の職員の声で現実に戻される
────────────…
PM.7:43
「ホント最近のガキは!」
ビールのジョッキを思いっきりテーブルに置くと日頃のイライラをぶちまける
「まぁ、確かにうちの生徒に限らず高校生という自覚なくいますよね」
「阿久津先生はよくわかってますね、まだ若いのに」
「何言ってるんです?日向先生のイッコ下に」
ふざけたつもりは毛頭にないがそれをふざけと取った阿久津はクスクスと笑う
「それにあの不良、えっと……緒方啓にもちゃんと対象して」
「え、あぁ緒方は特別ですから」
「そうですね…」
「日向先生……」
「ん?」
「酔ってます?」
二人が座るテーブルには、つまみと呼べるものは殆どなく代わりといって焼酎瓶が世話しなく倒れている
その殆どが心咲が呑んだものだ
「酔ってなんかない」
そういい立ち上がるが直ぐ様崩れる
「日向先生って……お酒弱かったんですね」
「だから酔ってねぇ!」
「完全に酔っ払ったオヤジの発言ですね、俺に捕まって下さい」
「っ、すまん」
「いえいえ」
意識の朦朧とするなか阿久津先生が会計を済ませていた
払う、と言ったのだが今度奢って貰いますとやんわり断られ店を後にする
「阿久津先生モテるでしょう?」
「え?モテませんよ…残念ですが」
「生徒たちからも人気だし、羨ましい」
「そんなことないです。俺は日向先生のほうが憧れますよ」
「俺に?」
「えぇ、頭もよくて女子生徒に人気ですよ?」
「そんなことない」
ポワンとする頭で阿久津の言葉を整理して応える心咲は今にも倒れそうだ
「日向先生大丈夫ですか!?」
「大丈夫……心配いりませ、ん」
「うわっ、と…大丈夫じゃないじゃないですか!」
心咲はフラッとその場に膝をつくと、その反動で阿久津も一緒に倒れる
人目の蔓延る場所であったため周りの視線がチラチラと集まる
「え?阿久津先生?」
声のする方を向くと阿久津は驚愕する
「緒方と……西園寺?」
「何してるんですか?」
「いや、日向先生が酔っ払って倒れて……」
「え?」
「というかお前らなんでここに…西園寺もその格好」
偶然通り掛かった緒方啓と西園寺類は学校でも普段からよく一緒に見かける二人だ
そして今目の前には学校では真面目な生徒会長の西園寺類がいかにもチャラついた格好をしているため阿久津は衝撃を隠せない
「阿久津先生、無駄な捜索はやめて下さい」
「っ…」
眼孔の鋭い眼差しで阿久津を見る類は今まで見たことがなかった
その口調や表情は誰もが憧れるそれとはまったく別だった
「る、類」
沈黙に耐えられなく折れたのは類の後ろに隠れている緒方で、その様子はよそよそしい
「ん?あぁ…阿久津先生」
「?」
「日向先生のことは任せてくれませんか?」
「は?なぜ、そもそも高校生が彷徨くような場所じゃないはずだ、さっさと…」
「先生、身代わりにコイツ置いて行きます」
「は?何」
返答より先に類は心咲を抱えあげる
「おい、類?!人質はなしだろ!?」
「では、阿久津先生…宜しくお願いします」
涼しい笑顔を向けると類は足早に遠ざかる
あまりに突然だったためポカンとしている阿久津の前から立ち去ろうとする緒方は不意に肩を掴まれる
「お前は逃がさんぞ?緒方」
「っっー!」
──────────…
被害者1名 緒方啓
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