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蜂の死骸と不死身の言葉。にしおりをはさみました!
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蜂の死骸と不死身の言葉。
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そんなこんなで二人でフラフラとゆっくり細い路地に入ったりひょっこりと現れたお寺に寄ったりをしていた。
次第にあんなに明るかった空も太陽が傾き始め、体を包む空気もだんだんと冷え始める。
………なんだか時間がまったりと、ゆっくりと、……それから無意識に過ぎていたせいか時間の経過を全く気にしていなかった、。
夏だから周りはまだ暗くはならないで済んだが、ふと上を見上げると ポツン、ポツン…と街灯の灯りがちょうど列をなすようにオレンジ色に一斉に灯ったので、夜の到来を感じざる負えなくなった。
「…………そろそろ帰るか、」
その微妙な暗さの空に光る街灯をカメラに収めてから俺はそういって都の方を見ると、都は路地のすみでしゃがみこみながらこっちを一瞬振り返った。
その姿はなんか子供が道路で珍しい虫を見つけたときみたいで、
「…なんだ、?なんか面白いもんでもあったか?」
と俺も都の隣へいってそこにしゃがみ込んだ。
都はまた地面の何かを見る。
俺もその都の目線を追って路地脇の地面と塀のへりに目を向けた。
………………、うわ、…
しかし、……思いも寄らずそこにいたのは、仰向けに足をジタバタしてもがく死にかけの蜂だったのだ。
その蜂は長い足を持った大きな山吹色の虎斑の蜂で、よく見ると左側の羽根がボロボロに千切れて片方の足がなかった。
そのせいか起き上がる事も飛び去ることも出来ずに、ただ仰向けになったまま時折グルグルと不規則な円を描いて地面を這い回る。
そしてあの機械音のような羽音が空気を掻き分けて俺たちの耳を掠め、意思とは関係なく生理的に不快感を感じさせる。
自然とその必死にもがく姿を見て顔がしかまる。
この前のクレマチスも死にかけだったが、……この蜂は、……死にかけというよりも"必死に生きている"という印象を俺に与えた。
それが………とても恐ろしかった、。
どこかの小説で目にしたが、 動物たちは自殺を知らない。
……人間だったらこんなに苦しまずにポックリ…、、、、…いや、そうでもねぇか、
人間だって死に直面したらきっと延命しようとする、
何万、何十万もかけて身体を切り刻んで…よくわからないような名前のクスリを飲んで、…
よくよく考えたらもがき苦しむ目の前の蜂と本質はなんら変わらない、。
これが生き物の必死に生きる姿だ、。
目の前の、そんな蜂の死から逃げまどう姿を見て俺はたった数秒の間にそんな事をぐるぐる考えた。
でもそんな俺の考えも、都の次の行動で一瞬にして吹き飛ぶことになる。
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