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想いにしおりをはさみました!
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想い
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…授業をサボってしまった。
フジは付き合うって言ってくれたけど、今は誰とも一緒に居たくないんだ。
「………ごめん。少し一人になりたい」
上手く笑えない顔で、精一杯笑みを作る。
ぎこちない、へんてこな笑顔。
「…放課後には戻って来いよ。後でLINEするから」
フジは俺の頭をポンポンと撫ぜ、ボソッと呟くと席へ戻っていった。
…フジは何も聞かない。
それが、とても有難い。
俺はそっと席を立ち、ある場所へと向かった。
*
「……良かった、空いてる」
図書室のドアを静かに開ける。
誰も居ないことを確認し、そっと入る。
あったけ。暖房も効いてるし、暫くは此処に居られそう。
奥の死角になっている席に腰を下ろす。
此処なら入口から見えないよな。
…落ち着く。
本がずらっと並び、囲まれた場所。
静かで、あったかくて、誰も居ない。
(……なにも、考えたくない)
テーブルの上に顔を伏せる。
目蓋をそっと綴じると、初めて尚兄ちゃんに出会った時のことを思い出して居た。
なにも、考えたくなんてないのに。
…俺、尚兄の事ばっかだ。
初めて出会ったのは、4歳の頃。
隣に越して来た尚兄の家族。
人見知りの俺に、優しく笑いかけてくれたんだ。それから俺は尚兄ちゃんが大好きになって、尚兄ちゃんも俺ときっと同じ気持ちなンだって思ってた。
尚兄ちゃんの気を引きたくって、ワガママ言ったり、甘えたりした。沢山迷惑かけて、沢山困らせた。それでも尚兄は笑ってくれたんだよ。
だけど、如何して?
俺の事、煩わしくなった?
ワガママ一杯言ったから?
尚兄の本、破っちゃったから?
…初めから、キライだったから?
「…………おれ、やっぱりなんかしたかなぁ…」
震える声はなんて頼りない。
尚兄に嫌われる程、俺きっとなんかやらかしたのかもしれない。
…知ってるんだ。
尚兄はとっても優しいから。
理由がないのに、嫌いになるわけないんだ。
余程のことを、俺はやってしまったんだ。
目頭がじんじんと熱を帯びる。
熱くて熱くて。熱い泪が流れ落ちた。
大切な人だったんだ。
ほんとうに、ほんとうに。
家族のように、兄のように思ってたんだ。
…大好きなんだ。
友達なんていなかった、独りぼっちの俺と一緒に居てくれたんだ。
俺、なんかしたなら謝るよ。
許して貰えないかもしれないけど、努力して償うから。もう、迷惑なんて掛けないよ。困らせる事なんてしないし、大人になるから。…だから。
「….キライに、ならないで…」
願うように想うように。
どうか。
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