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アキラ(龍之介side)にしおりをはさみました!
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アキラ(龍之介side)
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真っ先に視線を吸い寄せられたのが、やや長めの艶やかな黒髪の男だった。
美形ばかりがやたら周りにいるせいで、すっかり麻痺した美意識のアンテナにも、鮮やかに突き刺さる。
身に纏う空気や視線に、重力にも似た圧力を感じた。
目鼻立ちうんぬんでは語り尽くせない、選び抜かれた美貌、鮮烈な眼差し。
「そのおっそろしいくらいの美形が、チームリーダーのアキラな」
ソファに腰掛けたまま、視線だけをこちらに寄越す。
立ち上がることはおろか、挨拶一つしない。
それが許されてしまう、帝王のごとき空気感。
値踏みされているのは一体どちら側なのかと、おかしくなった。
「……何を笑う?」
凛と響く声。
「……別に」
面白くなりそうだから、笑った。
ただそれだけのことだ。
「……神経質なオトコは、嫌われるぜ?」
甘く低くささやけば、ほんのわずかだが、アキラの瞳に驚きの色が浮かぶ。
悔しさが後を追い、最後には圧倒的に美しい無表情がすべててを覆い隠した。
平然とした顔をされると乱したくなるのは、もはや男の本能だ。
「……呼吸が乱れてンな。オレの声にカンジたか?」
「先にオレの顔に見惚れたのは誰だ?」
「……カンジたのは、認めンだな?」
「見惚れたのも、認めるわけだ」
「……言ってくれる」
「おーい、そこの2人、マウンティングなら後でやってくれ。残りのメンバーの紹介がまだだっての」
「人を犬みてェに言うな。……ったく、さっさとしろ」
「はいはい。まず、アキラの隣の綺麗どころが、カレンな」
「レンだっつーの!」
さきほど、こちらの声に感じてしまった反動からか怒り狂っている金髪碧眼が、拳を握りしめながら低くうなる。
「何回言やわかるんだ、こんのクソオヤジがっ」
「この通り、口の悪さじゃ一番だが、あやしてやると、けっこうカワイイ声で啼く」
「テッメェ、マジにブッ殺す!!」
ゆらりと立ち上がったカレンを、
「カレン」
アキラが一言のもとに制した。
悔しげな表情を顔一杯に浮かべながらも、カレンは結局、乱暴にソファに沈み込んだ。
リーダーのもと、一応の統制は取れているようだ。
「で、アキラに纏わりついてる、そのちっこいのが、ハヤトな」
「ブッ殺す!」
小柄だが、負けん気の強そうな男……というよりは少年といった年齢の子供が、キッとユーリを睨みつけた。
こっちは黒髪黒眼、長めの黒髪に至るまで、まんまアキラのミニチュア版だ。
年の頃は14、5だろうか。
「ハヤト、おまえも黙れ」
よっぽど慕っているのだろう、アキラの言葉一つで、ほとんど泣き出しそうな表情になる。
「んで、そこのデカイ銀髪がドルフだ」
よっ、と唯一片手を上げ、挨拶らしいものを返してきた男は、こちらの声に驚いた反応をした後も、何やら楽しげに己の無精髭を撫でていた。
下手に友好的な態度は、 その奥の感情が読み切れない分、敵意よりもよほど厄介だ。
楽しければ後はどうだってかまわない。
どこか自分に通じる空気感を持つ男だと、危機感が募る。
こういう男は成り行き次第で、どうとでも転ぶ。
要注意の烙印を押しながら眉を上げて、返事を返した。
片や、
「おまえ、そのむっさいヒゲ、いい加減剃れっつってんだろ。せっかくの男前が台無しだろーが」
ユーリが恨めしげに、ため息をつく。
「めんどくせぇ。どーせすぐ生えてくんのに、剃る意味がわかんねぇ」
「……おまえの顔、超好みなのになぁ。マジ残念すぎんだけど」
おまえの好みなど知るかと、背後から力任せに蹴りつけてやる。
「これ以上フザけンなら、帰るぜ?」
ユーリが蹴られた腰を撫でながら、苦笑した。
「悪かったって。オオトリが、その端っこで無邪気にニコニコ笑ってるリトだ。難産のせいで少々オツムは弱いが、メチャクチャかわいい!」
「オレ、かわいい?」
ニコッと笑ったリトが、ダッシュしてユーリの腕の中に飛び込んだ。
受け止めたユーリが、幼い子供にするように脇を抱え上げ、高い高いする。
年の頃は10歳そこそこに見えたが、幼く見えるだけで、実際はもう少しいっているのかもしれなかった。
ニコニコ笑い合う様は、まるで仲のいい親子のようだ。
微笑ましい光景ではあるが、だからどうしたのだと、目が据わる。
わざわざ、こんなセキュリティーレベルの高い場所に呼び出しておいて、自己紹介で終わりもないだろう。
「……用が済んだなら、帰らせてもらうぜ」
大げさにため息をつきながら言うと、ユーリが思い出したようにリトを着地させて、振り返った。
「こいつらはキリヒトが独自に作った、直属の隠密部隊だ。キリがいなくなった今、抜ける道もあるってのに、こいつらここに残りてーんだと」
「組織自体に未練はないが、ここのデータベースにアクセスできる権限は貴重だ」
アキラが言った。
「対価は?」
「そっちが欲しがっている情報を渡す」
あくまで自分達に上下関係はなく、イーブンだと言いたいのだろう。
「具体的な仕事内容は?」
「要人の取り込みと、売春組織の洗い出しが主だ」
「……つまりは、色で落とすってワケだ」
上から下まで舐めるように見つめたところで、アキラはビクともしない。
品定めされるのには、日常的に慣れているのだろう。
180はある長身に、組織が支給している密着度と伸縮性の高い、黒の練習着兼アンダーウェアがよく似合う。
切れ長の目元はスッと綺麗に切れ上がり、化粧を施したら、さぞや映えるに違いない。
意思の強そうな口元に、冷たく通った鼻筋。
鍛え上げられた身体のラインは、あくまで強靭でしなやかだ。
なるほど、この男を抱けるのなら金に糸目はつけない金持ちは多いだろう。
誰にもなびかない、頑なで強い瞳が、なおのこと征服欲をかき立てる。
「……おまえみてェな男を組み敷いて、屈服させることに快感を覚える。……そういう種類の人間は多いだろうな」
グイッと胸ぐらをつかんで、引き寄せた。
唇が触れそうで触れないギリギリの場所で、にらみ合う。
殺気を露わにしても、視線をそらすどころか微動だにしない。
背後でカレンとハヤトが小犬のようにキャンキャン吠えたが、即座にドルフに羽交い締めにされ、身動きを封じられていた。
目的のためなら、すべてを犠牲にできる。
プライドはおろか、自らの命さえ。
覚悟を秘めた瞳が無言でそう語っていた。
気高く硬質な空気感は、身を切るような思いで置いて来た恋人を否応なしに連想させ、目眩がするほどの愛しさを吐息と共にゆるゆると吐き出した。
「……おまえ、今夜オレの部屋に来い」
胸ぐらをつかんでいた手を離して、言った。
「いろいろ聞きてェことがある」
「……っ、おまえ、アキラに何するつもりだよ!?」
「ざけんなっ、テメー、何様のつもりだ、コラァ!」
ハヤトとカレンが色めき立ち、同時に吠えた。
「……さっきからキャンキャン、うっせェなァ」
今後のためにも少し黙らせておくか。
ずい、と身を乗り出し、まずはコイツからだとハヤトを見下ろした。
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