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ドキドキ指数
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松涼介、16歳。大人の階段を上りました。
「………。」
クッソ緊張した。ワカメは早漏かもしれないことが判明した。まだドキドキ言ってる。ワカメの家族はだれも帰ってきてない。俺はこのワカメ様のご意向でワカメ様の家に泊まることになった。風呂から出るとワカメはゲームに夢中、そういえばオタクだったなと思う。長い髪、一つに結んで真剣な顔、そんな邪魔なら髪切ればいいのに。……やっぱだめ。
「なぁ、それ楽しいの。」
がしがし、タオルで頭を拭きながらそう問いかけると「うん。」と小さな声で頷かれる。ワカメはこっちを見ない、視線はゲームの画面に釘付け。なんか面白くねぇなぁ。
「……その女の子がすきなの?」
「ちげーよ、コレはリンゴちゃん。うちのクラスの矢島いるだろ、あいつが好きなキャラ」
「へー、矢島意外だな、ビジュアル系なのかと思ってた。ちょっとよく見せて」
「っ、近づいてくるんじゃねぇよ!」
「あ?なんで?!」
「お前……俺と同んなじ匂い、するんだもん」
だもん、じゃねぇーよバーーーーカ!!!!
そ、んなの、さぁ…!俺だって、思ってたっつーの。脱衣所に綺麗に置かれた着替え、ワカメのスエットと未使用のパンツ。同じ洗剤使ってるはずなのに、なんか違う。ウチの匂いとちょっとちがうソレに、どきどきした。くんっ、とスエットに鼻を埋めて、匂いをかいでみた…なんてことは絶対に秘密。
「つーか、…スエットでかいね」
手の甲を口元に持っていって、まるで照れを隠すようなしぐさ。チラリ と視線をこちらに向けられる。でも目は合わない。
「スエット、ズリ下がる。」
「チビは大変だなぁ…」
「俺標準だって何回言わせるんだよクソワカメ!」
「俺にとってはお前クソチビにしか見えねぇから。ちょっとこっちおいで」
手招きをされた。さっき近づいてくんなって言ったくせにとんだ矛盾男だ。なんでも自分の都合に合わせて行動しやがって畜生が。チッ、と一度舌打ちをする。細やかな反抗、そして俺も俺だよなぁ。おいでって言われて、素直にワカメの元まで向かうなんて。
部屋の座椅子に腰掛けていたワカメの隣に立つと「座れ」といわれた。その場所に座り込もうとしたら、首を振りはじめるワカメ。意味わかんない、日本語ちゃんと喋って。
「ここ、座れっていってんの」
目を疑った。こいつ深海生活が長すぎて頭が狂ったのかもしれない。ここ、と言われて指差したのは、ワカメの足の間。
「は、どういう風の吹き回しなの」
「いちいちうっせーなお前ほんと。いいからはやく、す、わ、れ。」
ぽんぽんと。PSPを持ってない方の手で、足の間の座椅子を叩くワカメ。意味わかんない、それめちゃくちゃ恥ずかしい、に、決まってる。ぎゅ。唇を噛む。ほらまただ、また変な汗でてきそう、どきどきと心臓がうるさく鳴りだす。
ワカメの脚の間、ワカメに背を向けて座ると、長い腕ががっしり俺を抱きしめてくる。や、や、や、やばい、やばいって、もう、顔、見られたら死ぬ。俺、今絶対赤い。
「ほら見ろ、すっぽり収まる。お前は一般的にチビじゃなくてもなぁ、俺にとってはチビ……って、おい、何耳赤くしてんの」
あっ。耳、そうだ、俺の髪型、耳が隠れないんだった。耳が赤いと指摘されたらますます恥ずかしくなってきて、勢い良く両手で耳を隠す。あーーーもう!腕の中、あったかい。さっきまでエロいことしてたから?すげぇドキドキ言ってるんだけど、もうやだ助けて。
「ゥひ…っ!ぎゃあぁぁぁぁ何してんのお前!!」
ちゅ、と。うなじに唇が降ってきた。こいつやっぱり頭がどうかしてる。そうじゃなかったらこんな恥ずかしいこと、出来るわけがない……!
「お前から俺の家の匂いがすんのって、なんか変」
「おおおお前が変なことすんな!いうな!」
「いってぇな!暴れんなバカ!そのまま動くな、画面が見えないだろーが!」
「このままゲームやるつもりなの?!暑苦しいわ!!」
ワカメの両手は俺の腹の前でPSPを握っている。必然的に俺はワカメにもたれかかってる体勢、ワカメは前のめりになる体勢。俺の左耳に、ワカメの息がかかる。気を紛らわすようにPSPの画面を覗き見ると。えらくファンシーな女の子の部屋が映った。そして登場した赤い髪の女の子が『デート、楽しかったね。』と言っている。それを素早く流しつつ、選択肢を選んで話を進めていくワカメの手慣れた感じに震えそう。プロかよ。
「これ、可愛いか?」
「あー、リンゴはフルーツラブシリーズでも人気あるほうだぜ。」
「ふぅん、他の子どんなの?」
「いっぱいシリーズ出てるから、このゲームで攻略できんのはリンゴ、ミカン、ユズ、モモ、ナシコの五人。」
画面がパッと切り替わって、そこに映るのはオタクがすきそうな女の子達。えーっと、モモ…モモってこの子か。
「モモもかわいいけど、俺はユズって子のが好きかも。まっ見た目だけじゃなんとも言えねーけど」
「………。」
「なんだよ」
「お前そこそこ、見る目あんな。俺もモモちゃんの次はユズがすき。つーか、いいのかよ」
「なにが」
「嫌じゃねーの、オタクの彼氏」
こいつは今更なにを言ってるんだろう。今、俺、すげー目ぇ死んだ気がする。ワカメの部屋を見渡す。積み上げられたゲームにアニメ雑誌、漫画、付けっ放しのパソコン、モモちゃんのフィギュア、ポスター、エトセトラ。完璧にオタクの部屋、ここで俺、お前とエロいことできちゃうぐらいには気にしてないんだけど?
「べつに良くね。俺もアニメ見るし、漫画読むし。こういうゲームはしたことねーけど。」
「……。」
「でも、俺といるときはゲームばっか夢中になんなよ。面白くねーもん」
「…涼介の趣味は?」
「あ?え?趣味?……趣味?」
言われてみれば、こいつほど没頭できるものはない。趣味はなんだと聞かれたら、毎回すげー困るんだよな。
「特にないんだよなー」
「クッソつまんねー人生してんなお前」
「うっせーよ!あ!あったあった!」
「何、言ってみ」
別にのめり込むほど漫画がすきなわけでも、音楽がすきなわけでも、運動がすきなわけでもない。でも、あるじゃん、趣味。自分でも悪趣味だとおもうけど、これほど楽しいことはないし。今、一番ハマってる。
「お前」
身をよじって振り向くと、ワカメはぽかんとした顔をした。そしてそれはみるみるうちに赤くなっていく。ほーら、すげぇ楽しくね?こんなに面白い事は他にはない。思わずニヤニヤしちゃうんだもん。腹に巻きついてた腕の力が、さっきよりつよくなる。ちょっと痛い。けど、照れてんの?
「死ね!!」
「いだだだ!加減を知らねーのかこのワカメ!肋折れる!!」
「初めて記念にちゅうしろとかクソあざといこと言った次はそれか!もういい加減にしろよ、心臓もたねぇだろ!」
「お前こそいい加減にしろよ!すぐキスするしすぐ抱きしめてくるし!なんなんだよ!こっちこそ心臓痛いんだからな!」
「…………」
「…………」
「「もう寝る!!」」
「…………」
「…………」
「「ハモんなよ!!」」
やっぱむかつく!けど好きになっちまったもんどうしようもないだろ!あーむかつく、あーーーむかつく!ワカメの腕の力が緩くなった隙に、するりとそこから離れる。ワカメもゲームの電源を落として、さっさとベッドの中に入っていってしまった。そしてやっぱりスエットズレるし、デカイ服はもごもごする。困ったな、と立ち尽くしていると、俺に背中をむけて布団に潜り込んでいたはずのワカメがくるり、とこちらを向くように寝返りをうつ。
「早く入ってこいよ!寒いんだよバカ!」
その顔は赤い。
ま、まっ、待ってください柳さん。一緒のベッドで寝るんスか。
俺、完全に床だと思ってたんだけど……!そうだよ、一緒のベッドで寝るの、初めてじゃねぇじゃん。ベッドに招かれるってこんな気持ちなのか、そうか。そりゃ、ちょっと前の俺、お前に悪いことしたかも。
ぎゅ。ズレたスエットをあげるフリをして、手のひらを握る。いっぽ、いっぽ、ベッドに近づいて腰掛けた。
「お、じゃまします」
「ん。」
「ん……?腕どけろよ寝れないだろ」
「バカかお前、何のためにお前をベッドに招き入れてると思ってんの?暖をとるためだろ!大人しく腕に頭おけよ!」
「はっ?!なんだよその理由!抱きしめて寝たいって言えよ!」
「ちっげーよアホか!自惚れんな!早くしろって、布団を極力めくるな、外気に肌を晒すな、寒い」
「クッッッソワガママだな?!」
布団に入り込んで、ワカメの太い腕に頭を置く。すぐに抱きしめられる。すんすん、とワカメが俺の頭が に鼻を寄せて、何故か匂いを嗅いでくる。ちょっともうこのワカメなんとかしてほしいんですけど…!
「鳥の巣みたい。ふかふかしてる。おやすみ」
「ケンカ売ってんのか!おやすみ!」
なにがおやすみ、だよ馬鹿、こんなん寝れるわけねーじゃん。ドキドキ、ドキドキ、さっきも言ったよなぁ?お前のせいで心臓痛いんだって!こんな、密着して、寝れるわけ、……もう!
ぎゅう、と目を瞑って、ワカメに抱きついた。腕を背中に回すように。密着、密着、ほんと、ゼロセンチ。あ、なんだよ。ワカメの心臓もばくばくうるさいじゃねぇかよ、二人して明日寝不足とか、勘弁してくれよ。
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